6月30日(水)

 ここのところ「マイスタージンガー」のピアノは当然の事のようにフリードリヒが弾いていた。朝、行ってみると彼が居ない。事務局のハイトブリンクに聞くと、バラッチと舞台の方で何か打ち合わせをしているという。時間になったのでとりあえずマリーが指揮をし、僕がピアノを弾いて始めていた。場所は勿論昼からやる「喧嘩の合唱」だ。間もなくバラッチとフリードリヒの二人が登場。しかしピアノはそのまま僕が弾き続ける。最近毎回フリードリヒが得意になって弾いていたこの難曲。今日は彼の前で僕の腕前をたっぷりと見せつけてあげた。ショックを受けているな。ざまあみろ!なんてこんな風に思っている自分も実に子供っぽいよ。

 11時半からは本舞台。「マイスタージンガー」第二幕、二度目の録画。徒弟達は冒頭の場面があるのでスタンバイ。他の団員達は合図があるまで楽屋かカンティーネで待機だ。この劇場ではしょっちゅう全館に聞こえるようにベルが鳴っている。このベルはそれぞれのセクションの本舞台へのスタンバイを促す合図だ。他のセクションはどうなっているか知らないが、合唱団の舞台へのスタンバイは、リーン・リーン・リーンと三回のベルが二度鳴ることになっている。
フリードリヒと僕は、セットの床下をネズミのようにくぐり、ほとんど垂直の梯子に辿り着く。それを上るとザックスの家の内側に出る。出番が近づくと、フリードリヒは指を折りながら、かなり大きな声で「1、2、3、」と小節数を数える。12小節目の2拍目の裏に徒弟達のアインザッツがある。徒弟達は遅れやすいので、フリードリヒはモニターに写っているバレンボイムの拍よりもちょっとだけ早く振っている。ところが、そのすぐ四小節後のところからは、反対に徒弟以外の合唱団員達は前に走りやすい。フリードリヒはちゃんと心得ていて、そこではテンポを抑え気味に振る。さすがだと思う。フリードリヒは、見かけとは裏腹に意外と尊敬できるところを持っている。

 明日の7月1日はなんと劇場が休日の日だそうだ。バンザーイ!ずっと忙しかったから一息入れられるぞ。まずは買い物をしなければならないものがたまっている。靴べらや、バター入れや、鉛筆削りなどを買いに中心街に出て、と。あ!映画を見に行ってもいいな。練習も楽しいけどやっぱり休日はいいよ。夜は岡本君と井垣さんが遊びに来る事になっている。飲み物は僕が用意して、井垣さんは、材料持込みでテンプラを作ってくれるそうだ。楽しみだな。

 「喧嘩の合唱」の二度目の録音がやっと終わった。最後に一度だけ奇跡的に良く出来たテイクがあって、もうこれ以上やっても絶対これを超えるテイクはあり得ないということで、もう止めましょう、止めときましょうと無理やり採用になった。ああこれで一安心。

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