7月7日(水)

 今日も朝から本舞台。「ローエングリン」第一幕の立ち稽古。丘のように後ろに行くにしたがって盛り上がった舞台の中央には、本物の水を張った池がある。ローエングリンの登場の場面では、その池の底から透明な白鳥が現れてきたり、第一幕のラスト・シーンでは、エルザが歓びのあまり水の中にズブズブと入っていくのだ。斬新というかよくわからないというか・・・・
 合唱は動きが多いので合唱練習室で歌っていたようにはなかなか合わない。バラッチがよく飛んで来て、団員がペンライトをちゃんと見ているかチェックする。僕は上手の塔の上からフォローしている。場面によっては、ほとんど全員がぼくのペンライトだけを頼りに歌うこともある。バラッチが下から僕に叫ぶ。
 「責任重大だからな。しっかりやれよ!」
 「OK!」
 それにしても驚くのは、合唱団員の演技ののみこみの早さだ。ワーナーの立ち稽古の手際よさも手伝ってどんどん面白いように演技が決まってゆく。みんなそれぞれ自分の所属する劇場で日常茶飯事にやっているからなんだろうけれど、日本じゃ絶対に考えられない。演出家の意図をいち早くくみとり、全身で表現してゆく。合唱はマスで動く為自分勝手に動く事は許されない。かといって、言われた事だけやっていたのでは面白くない。こうした舞台上のマナーをマスターするのには、なんといっても長い間の経験がものをいう。経験が感性を養い、様々なケースに対応してゆくカンを磨くのだ。

 夜は久し振りにバラッチのもとでピアノを弾いた。「さまよえるオランダ人」第二幕、糸紡ぎの女声合唱だ。一度ピアノを弾きそこなって変な音を出してしまった。女性達が大きな声で笑い出した。しまった!どうしよう、と思ったらバラッチも一緒になってハハハハと笑っている。それからますます雰囲気が和やかになって、それでいてとても集中した良い練習が出来た。少し早く終わって、バラッチはBasta!Basta!(もう充分!もう充分!)とイタリア語で言いながら僕に握手を求めてきた。

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