Bayreuth 2003

7月8日(火)
 今日は朝10時から一時間だけ「ローエングリン」の初心者稽古だった。アイトラーが稽古をつけたいというので僕がピアノを弾いた。
その後本当は夕方の練習まで暇だったんだけど、平行して第7練習場で昨晩の「糸紡ぎの場面」の立ち稽古を11時半までやっているので見に行った。フリードリヒは僕の顔を見ると上機嫌で近づいてきた。見るときれいなワンピースの制服を着た女性団員達が床にころがっている。スカートがめくれて太股があらわになっている。
「こういう演出なの?」
とフリードリヒに聞いたら、彼はニヤニヤ笑って、
「セクシー・ガールズさ、見ててご覧よ。面白いから。」
曲が始まった。彼女たちのワンピースは上から下までの前ボタンで、しかも下のボタンが3つくらいはずれている。ちょっと動くとスカートの前がパカッと開いてフリルのついたスリップが丸見えになる。そこにもってきてくねくねと腰を動かしたり手をバストのところへ持ってきたりというセクシーな踊りがついていて、なんとも目のやり場に困る演出だ。
「糸車は?」
「そんなものないさ。でもいい演出だろう。」
うーん、いい演出かどうか分からないけど、楽しい演出である事は確かだな。海に出ている船乗りの恋人を陸で悶々として待っている女達が良く表現されているとは言えるだろう。
そうか、糸車とは象徴なんだな。何の?それは、見知らぬオランダ人に心を奪われ、静止しているゼンタの心に対して、グルグル回っている我々日常の「動」なんだ。とにかくこの場面でのテーマとは、日常対非日常だ。それが表現させていれば具体的な糸車は必ずしも必要ないということか。
驚いた事に、昨晩僕が一番細かく練習した最後の難しい部分は(おしゃべりコーラスと言われている)、なんと彼女たちは忙しく雑巾がけをしながら歌わされている。
「船が着くぞ。」
と言われて、家を掃除してきれいにしながら待つ女心の表現かも知れない。でもどうだい、音楽的には、昨晩練習したのが効いてピタッと揃っているじゃないか。ほらほらみんな、僕に感謝しなさいよ。

 お昼からの合唱練習場での音楽稽古で、フリードリヒは、
「おしゃべりコーラスは難しいので、オケピットに残りの合唱団を入れて補充する事も考えていたけれど、明日のオケ付き舞台稽古では補充なしで、舞台上のみんなだけでやる事。」と言った。
やったあ!みんな頑張ったからだし、僕だって頑張ったからだよ。僕はちょっと一人だけで勝利に酔った。
それ以外の男声合唱の部分も、僕が稽古をつけたところが皆ピシッと決まって、フリードリヒは大満足だった。今日は僕にとっては良い日だ。こんな日もなくちゃやってられないもんな。
夕方は再び「糸紡ぎの場面」。でもバレー練習場で振り付けの練習。振り付け師のおねえさんはてきぱきと動きを指導し、下手な人にはやさしく、一方上手な人にはワンポイント・アドヴァイスを与えてもう一段上をめざさせるといった素晴らしい指導をしている。僕はオリーと一緒に練習を見ているが、ほとんどが音楽なしでカウントをとりながらの練習なので用がない。でもピアニストはいるが指揮者がいないので、たまに音楽をつける時は僕が振った。
こんな風に朝から彼女たちに付き合っているので、ブーたれていたはずの彼女たちは今日は僕にやけに愛想が良い。

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