ミュージカル「ナディーヌについて」

三澤洋史 
2015.10.12 

1.ミュージカルを手がけた理由
 仕事の基本はクラシックだが、80年代後半にミュージカルの仕事をしていたこともあり、ミュージカルを手がけた。オペラが失ったものがミュージカルにはあるので、ミュージカルの中にすごく可能性を見出していた。スカラ座に行くと、歌は素晴らしいがコーラスは全く動けない。演出者がこうしたいと思っても、みんな動けないので、合唱は壁の花となり助演が動くことに落ち着く。本来は歌ってお芝居をして踊ってというものが、踊りはバレリーナ、合唱は合唱でテレテレ動くだけになってしまっており、オペラはこれを何とかしないと顧客を引き付けない。
 オペラはユニゾンで歌う所が多く、歌自体の価値が低い。私が書いたミュージカルはもう少し音楽的に難しい。今の日本だと、合唱の人は歌はかっちりやるが、動きはつけない。一方、芝居の畑の人はユニゾンでは歌えるかもしれないが、歌との両立は難しい部分がある。

2.ナディーヌ制作のきっかけ
 昔、バイロイトで仕事をしていたことがあり、そのころ娘がパリに留学していたので、パリによってバイロイトに行こうとしていた。6月20日から始まるので、6月19日にパリから飛行機に乗るつもりが、フランスのストライキで飛ばなくなり、仕方なく市内に宿をとったのがモンマルトルだった。
 バイロイトの仕事の初日から遅刻することでブルーだったが、折角なので夕暮れ時のモンマルトルの丘に上がった。昼間はお上りさんが多くて治安が悪いが、寄るになると雰囲気が代わり恋人たちがそぞろ歩きする。日が暮れると、眼下でパリの灯りがだんだんついていく。その時、「ナディーヌ」の構想が浮かんで、モンマルトルの丘で別れる男女の物語を書きたいと思った。

3.自作ミュージカルにおけるナディーヌの位置づけ
 ミュージカルは「おにころ」から書き始めた。ミュージカルの4作目であり最新作でもある「ナディーヌ」は、音楽的には「おにころ」よりもう一歩掘り下げている一方で、ドラマ的には「おにころ」は団体で動くが、「ナディーヌ」は一人一人がせりふを与えられて個性手な動きがある。一般最初につくった「おにころ」よりはずいぶん進歩していて、難しい部分がある半面、上演した時のインパクトはあると思う。
 自作のミュージカルは一貫して「愛」を追求している。「おにころ」が自己犠牲のもと自分の生き方に目覚めていくのに対して、「ナディーヌ」は人間のかけがいのないものとして書かれるものはどういうものなのかがテーマになっている。「おにころ」が愛全体だったのに対して、「ナディーヌ」ではテーマが絞られている。愛の究極の形で人間が人間としてどこまでかかわりあえるかということである。この作品は全体の流れが結構よく出来ていて、今回の上演に当り見直しているが、前の台本を読んでいるとうるうる来てしまう作品であり、絶対に参加して後悔しないと思う。後でもって、たくさんの人をさそっておけばよかったと思うのではないかと思う。

4.あらすじ
 中年にさしかかった(35歳)男性と妖精ナディーヌの愛の物語である。妖精は紹鴎にならなければならないが、その前に人間界を見て来ることにした。人間界において「かけがえのない出会い」をすることが出来たら、妖精界で最高位を得ることが出来る。ナディーヌには、オリーとIQ500の大博士(ドクタータンタン・見かけはミニチュアダックスフント)が同行する。ナデイーヌは、人間界でピエールと出あい、二人は恋に落ちる。

 妖精の国で、グノーム族のニングルマーチが反乱を起こすが、住民の反対でうまくいかず、人間界にまぎれてくる。
 ナディーヌはしおれた花をみごとに咲かせるが、現代のパリですばらしい奇跡が起きたことを放送しようとして、放送局に連れてこられる。ここに、ピエール、オリー、ドクタータンタンが駆け付ける。ニングルマーチはナディーヌが好きで結婚しようとするが、ナディーヌはピエールを選ぶ。
 妖精界のきまりとして、人間界にこれだけ妖精のことが知られるとまずいので、これまで妖精の記憶は消してきた。ピエールとナディーヌの心はすごく結びついているが、今夜12時すべての記憶は消して、ナディーヌは妖精の国に帰って行く。


2016年公演チラシから

5.出演者の役について
 「ナディーヌ」は、ナディーヌ、ピエール、オリー、ドクタータンタン、ニングルマーチの5名がメインキャストだが、これ以外にも妖精、アナウンサー、ディレクター、オールドミス、街の人等いろいろな役がある。参加者の中から、役にふさわしい人を選んでいきたいと考えている。
 最初はセリフの読み合わせの中で選ぶが、振付、立ち稽古と進んでいく中で、動いてみると最初に決めた通りの人でいくのがよいとは限らないので、歌、踊り、演技それぞれの適性を見て決めていく。いろいろと試しながらやっていくので、4月くらいまでは流動的であるので、是非積極的に参加してもらいたい。
(2016年公演資料から)

ミュージカル「ナディーヌ」2016公演のHPへ

2016年8月27日・28日の公演詳細について


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