2004年6月3日(木)

 いつもだったら今頃は必死で仕事の合間を縫ってピアノを練習し、緊張しながら日本を離れる日を指折り数えているのに、今年はそれがない。 5年間毎夏働いたバイロイト音楽祭に今年は行かないのだ。祝祭劇場の周りのひんやりとした木立も、小高い丘から一面に見渡せるフランケン地方の丘陵地帯ののどかな田園風景も今年は見られない。練習初日の頃は閑散としたただの田舎町が、初日近くになると急に多言語の飛び交う国際都市に変貌する様も今年は味わうことは出来ない。なんと寂しいことか!

 でも今年の夏は僕の人生にとって大切な年だ。クリエイティブな公演が二つも僕を待っている。

 ひとつは新国立劇場の子供オペラ。4日間に渡るワーグナーの超大作「ニーベルングの指輪」をなんと一時間にまとめ、「ジークフリートの冒険」というタイトルで子供向けのオペラに仕立て上げた。演出はマティアス・フォン・シュテークマン。バイロイト音楽祭ではピカイチの演出助手で、頭脳明晰アイデア豊富の素晴らしい奴だ。彼と二人でわいわいやりながら昨年のバイロイト音楽祭開催中にストーリーを練り上げ、時には口論のようになったり、互いに肩を叩き合ったりしながら音楽を組み替え、バラバラにしてから再構成した。まさにワーグナーを手玉にとって遊びまくったという感じだけれど、その根底には二人ともワーグナーに対する強い愛がある。

 昨日、芸術監督のノボラツスキーが僕のところに興奮しながらやってきた。
「おい!子供オペラの衣装と舞台美術は素晴らしいぞ!特にドラゴンにはド肝を抜かれた。これは絶対ヒットするからな。」
と言っている。今マティアスが再び来日して舞台美術などをつめている。僕は新しくアレンジした終曲のスコアを作成中だ。終曲だけはリングにハッピーエンドの曲がないので僕がちょっとポップス・タッチで編曲している。これが自分で言うのもなんだけど、かなりイカしているのさ。

 さて、もうひとつはもっとクリエイティブ。なんてったって自作。物語から曲まで全部自作のミュージカルをこの夏上演する。指揮だけじゃなくて演出もする。この年になってパリを舞台にしたラブストーリーなんてかなり恥ずかしいんだけどね。しかも中年の独身サラリーマンと妖精の恋の物語なんだよ。うひひひひ。でも馬鹿にしないでください。この作品は泣けます。もうきっとワンワン泣いてもらいます。人間と人間のかけがえのない出逢いがテーマなんだ。この作品についてはまた機会を見て述べたいと思う。

 こうした譜面を書くのに今はパソコンを使っている。FINALEというソフトで書いているけど、スコアを作るとワンタッチでパート譜が出来るし、まるで自分の作品でないみたいにきれいに出来る。パソコンで音楽することをDTMというけれど、DTMをガシガシやるために僕はとうとう最近パソコンを自作してしまった。Pentium4の 2.80 C GHzだい。もうメチャメチャ速いぞう。どうだまいったか!今はこのパソコンが可愛くて家に帰るのが楽しみ。ドクターと呼んで愛用しています。ではまたいろいろ書きますね。

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