オフ会無事終了

 オフ会では、有志で集まって事前に練習をして、何かアトラクションをやりたいと思っていた。その為に同じ国立市内に練習所を17時から取っていた。それとは別に、僕は次女の杏奈にクラリネットを演奏させて、披露しようと思っていた。
 ところが、その日は朝10時から13時、都内で合唱の練習をひとつ入れていた。新宿でイレブン・イマサのカレーを飲み込むように食べ、急いで家に帰って杏奈と合わせ、その他印刷物の準備などをしていたら17時が近づいてきたので、あわてて練習所に行った。ふうっ、忙しかったよ。

 アトラクションの演目は、僕の独断と偏見によって、イギリス・マドリガルからトーマス・モーリーの「時は花祭りの五月」、ジョン・ダウランドの「もう泣かないで」「帰っておいで」に決めた。練習所となった立川カトリック教会の国立集会所は、まるで修道院の中のようによく響く。ハーモニーが決まったときは夢のように美しい。
 テノールがいなかったので、本当はバリトンのCafe MDRのコンシェルジュに無理矢理テノールを歌わせ、僕自身がバスを歌った。
 最近は大合唱を前に偉そうに指揮者しているけど、本当はこういう風に「少人数で自分も歌って」というのが原点のような気がするなあ。なんか仕事を離れて楽しいなあ。たまに何人かで集まってこんなアンサンブルをやろうかなあ。
 まだ内声に時々危ない人がいたけど、その響きにごまかされて「まあ、大丈夫でしょう!」という感じで国立集会所を後にした。

 オフ会の会場であるソーセージ屋さんのノイ・フランクは、国立駅南口から旭通りに入り、最初の曲がり角を左に折れてすぐ。アスレチック・クラブの向かい 側だ。ここは本来レストランではなくてソーセージ、ハムを売っているお店だったのだが、最近改装して奥にレストランを作ったのだ。
 今、この店では、ドイツのオクトーバー・フェストに合わせて、日本では手に入りにくい様々な珍しいビールが置いてある。みんながいろいろなビールを注文 し過ぎて予算オーバーしそうになったら、店主がそっと耳打ちして、打ち止めにするか追加料金を払うか相談するという事だったが、あんなに高いビールをバンバン注文したのに、結局追加料金は払わないで済んだ。これは店主の好意に違いない。
 オフ会に訪れた皆さん!これからもソーセージ買いに行ったり、レストランに食べに行ったりして恩返ししてくださいね。

 前菜のハムの盛り合わせから、もうドイツの臭いがプンプンしていた。僕は、まずフランチェスカナー・ヘフ・ヴァイス(多分フランシスコ会修道院で作っていると思われる小麦ビール)を注文した。うまい!やっぱり小麦ビールだね。それからケストリッツァー黒ビール。
 みんな、いろいろなビールを注文していた。トラピスト修道院の香り豊かなビールや、「禁断の果実」「ギロチン」など恐ろしい名前のベルギー・ビールなど、回し飲みして印象を語り合うだけで、どんどん時間が過ぎていった。

 メインの焼きソーセージを頬張ったあたりで、どこからともなく、
「そろそろアトラクションを・・・・。」
という声が聞こえてきたので、
「ようし!」
と立ち上がったら、なんかふらふらしている。ヤベエ、かなり酔いが回っているぜ。
「大丈夫ですかあ?」
と周りがはやし立てる中、僕は杏奈のクラリネットの伴奏を始めた。

 弾いていてだんだん気持ちよくなってきて、つい譜面から目を離す。おっとっとっと、どこやってるんだっけ。うー、危ねー危ねー、なんて。酔っぱらいはヤ だね。それにしても杏奈も前から比べるとだいぶクラリネットらしい音になってきたね。なんて感心していたら、後奏の左手のオクターブを派手にはずしてみんなに大笑いされてしまった。

 続いて本日のメイン・イベント、イギリス・マドリガル!ところがみんな酔っぱらっているし、ノイ・フランクは国立集会所のように響くわけではない。最初の「時は花祭りの五月」は、よくわからないけど、どうやらぐちゃぐちゃだったらしい。あはははは。でも、二曲目、三曲目と続く内にしだいに乗ってきて良く なってきた。それで、最後に名誉挽回でもう一度「時は花祭りの五月」をやった。今度はさっきよりも決まったらしい。「らしい」というのは、この時点で僕はもうほとんどへべれけの境地に突入していたからである。
 その後、みんなで歌おうと思って用意していた「ジークフリートの冒険」の「愛こそすべて」は、作曲者泥酔の為、忘却の彼方に追いやられてしまった。

 妻は、ドイツの民族衣装を着ていた。これはバイロイトで妻の誕生日プレゼントとして無理矢理買わされたものである。安くなかったんだよ。本当は靴まで揃っているのだが、あいにくの雨だったので靴は遠慮した。民族衣装はみんなに受けていて、ドイツの雰囲気を醸し出していた。
 料理もたんまり、ビールもたんまり。アット・ホームな集まりでとても楽しい晩でした。

 

ギャグ満載「セヴィリアの理髪師」
 第一幕フィナーレ。客席後方の監督室で赤ペンライトを持って振っている僕の横で、
「お客さん、笑ってくれない。」
と演出家ヨーゼフ・E・ケップリンガーが落胆している。僕は、
「いやいや、お客は喜んでいるよ。初日の客は固いからね。でもほら、忍び笑いが聞こえるじゃない。」
 忍び笑いは、合唱団員である木幡雅志君扮する隊長がロジーナにけっ飛ばされる瞬間、ドッとした大笑いに変わった。

 休憩時間。娘の杏奈が、
「めちゃめちゃ面白いね。これ。」
と言って楽屋に飛び込んできた。
「お客さん、笑ってくれないといって、演出家が悲しそうな顔していた。」
と言うと、妻が、
「ドッと笑うような単純なギャグじゃないけど、本当に丁寧に作ってあるわ。」
と言う。
 杏奈が、
「ニングルマーチの古川(和彦)さんが、家の中に住み着いている変な人を演じていて可笑しい。」
と言うので、僕は答えた。
「いや、演出家から、合唱団員の中で一番妙な人物を選んでくれという注文がきたんだ。そうなるとフルフル以外いないと思ったからね。ニングルマーチに選んだのも同じ基準。」
「あはははは。」

 休憩中にお客さん達はお互い話をする。すると第二幕は最初から雰囲気が柔らかくなっているんだ。今度は最初から受け始めた。ケップリンガーもホッとしたようだった。こんな時、ヨーロッパの聴衆だったら、きっと最初から笑うんだろうなあ。

 舞台は1960年代後半のフランコ政権下のスペインに置き換えられている。最初の楽士達は、失業者達。楽器を演奏するかわりに、ラジオを使うなまけものぶり。そのくせお金の取り合いはもの凄い。上手には売春宿があり、この売春婦達がこのオペラ中大活躍する。道行く修道士が人目をはばかって急いで売春宿に入っていったり、いろいろ細かい芝居が作られている。
 なんといっても傑作なのは、第二幕後半の嵐のシーン。これは口ではうまく説明できないが、こうやって嵐を表現するのは初めてだ。
「おっ、雨だな。」
と、帰り道を急ぐ人達に始まり、助演の演技で嵐を表現するのだ。なんで嵐の最中にこんなに人がいるのさ、と思うが、さかさになった傘を持って風にあおられる人や、舞い散る新聞紙など、実に見事にいろいろなアイテムを使って嵐が表現されている。
 それはちょうど、
「今、私は室戸岬に立ってます。凄い風です。飛ばされそうです。」
とわざとリポーターを風にさらして臨場感を出そうとする発想と一緒である。
 歌手達は大スターがいるわけではないのだが、稽古を綿密に積んであるので、チームワークは抜群。ロジーナ役のリナート・シャハムは美人だなあ。彼女はイスラエル生まれ、典型的なユダヤ系美人。
 オペラを見て笑いたい人にはお勧め。必ず笑えます。この公演を見て一度も笑わなかった人にはお金を返します(うっそピョーン!)。

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