聖金曜日の奇跡

桜咲く街国立
 この週末にはもう大部分の桜が葉桜になってしまったが、思ったより長く楽しめた。やはり桜は日本の花だな。この季節になるとなんとなく浮かれた気分になる。と、同時に、秋でもないのにハラハラと風に舞い踊りながら散っていく花びらに諸行無常を感じ、いたずらにセンチメンタルな気分になるのもまたよろし。国立の桜2007
 この時期だけは、桜通りを中心として桜の豊富な国立に住んで良かったなと思うんだ。あとは、なんとなしの高級感があるだけで、市民税が高いし、あまり良いことはないんだけどね。明日は都知事選の投票に行くよ。誰に入れるかは内緒だけど、みんな勢いよく出てきた割には頼りないねえ。

聖金曜日の奇跡
 僕は通常、夜ベッドに入るともう3分後には意識がなくなる。隣で寝ている妻は毎回のように驚いている。そして次の瞬間には朝になる。夢もほとんど見ない。見ているのかも知れないが、あまりに熟睡しているので忘れている。
 しかし6日金曜日は、まだ暗い明け方に、珍しいことに突然目が覚めて眠れなくなった。「あれえ、なんだろうな。珍しいな。」
それで一度起きて水飲んでトイレに行ってパソコンを起動し、京都の講演会の原稿などをちょこちょこっと書いたりしていたら、たちまちまた眠くなったので横になった。そうしたら夢を見た。

 奇妙な夢だった。「今日この頃」では書かなかったが、以前、掲示板すなわちCAFE MDR Lounge Barに僕が彼女の件で投稿したことのあるIさんが夢に出てきたのだ。
 Iさんは元東響コーラスのアルトのパート・リーダー。大学に入ったばかりの頃に入団したのだが、若いのにとても優秀で、たちまち年配の団員達を押しのけてパート・リーダーになった。
 東響コーラスでは入団する時だけでなく、出演オーディションというものもあり、これに合格しないと次の演奏会に出演するための資格が得られない。団員は、出演オーディションで合唱部分を暗譜で歌わなければならない。
 ある時、このオーディションにおけるIさんの歌唱があまりに良かったので、僕は特別賞なるものを臨時に設けて彼女の努力を讃えた。これは極めて異例のことで、東響コーラスの歴史始まって以来、この賞を受けたのは彼女だけだった。

 元々音大生だったわけでない彼女は、その後就職した。仕事が忙しかったと見えて、歌唱が以前のようには生彩がなかったので、ある時の出演オーディションの後、僕はとても残念に思い、
「ちょっと声が荒れているね。」
と言った。すると真面目な彼女は、僕の言葉を僕が予想した以上に真剣に受け取り、なんとも言えない辛そうな顔をした。その時の彼女の表情は今でも鮮明に覚えているのだ。

 それからしばらく経って彼女は一念発起し、脱サラをしてなんとウィーンに留学したのだ。数年の後帰国して、東響コーラスにはボイス・トレーナーとしてみんなの指導をしたりしながら、藤原歌劇団の研究生と俗にみんなが呼んでいる日本オペラ振興会マスター・クラスに通っていた。
 彼女は東響コーラスの団員にとっては、かつては自分たちと一緒に頑張り、さらに自分たちのところからプロの音楽家へと羽ばたいていく希望の星だった。

 しかしいつの間にか病魔が彼女を蝕んでいた。彼女は、今年の2月半ば、マスター・クラスの終了試演会のまさにその日、弱冠31歳で逝ってしまったのである。僕達はその前の経過を何も知らされていなかったので、青天の霹靂という感じで彼女の訃報を突然聞いた。僕自身は、昨年12月の第九の時にボイス・トレーナーをしている彼女に会っていたので、どうしても信じられなかった。

 葬儀では、なつかしい東響コーラスの面々が出席していたが、大きな大きな悲しみがその場全体を支配していた。何故この若さで・・・これからなのに・・・と思うとやり切れない想いを抑えることが出来なかった・・・・。

夢の中のIさん
 夢の中のIさんはニコニコしていてとても明るかった。あまりに幸せそうなので、僕が、
「あれ、元気になったの?」
と聞くと、
「ええ、あたしが元気でいることを先生に伝えるために来ました。」
というようなことを言った。
「というようなこと」と言うのは、言語という手段を使わなかったからだ。説明するのは難しいけれど、僕達はテレパシーのようなもので会話していたんだ。

 これを書いている7日土曜日は東京交響楽団のヴェルディ作曲「レクィエム」の演奏会のある日だ。僕は行けなかったけれど、先日CAFE MDRのコンシェルジュから、
「レクィエムはIさんのことを想って歌います。」
というメールが入っていたので、僕も気にしていた。夢を見たのは、そのこともあったからかも知れない。

 亡くなった人のことをこういう欄で書くのは、なにかその人をダシにしているようで僕は躊躇していたが、コンシェルジュと話をしている内に、きっと僕だけにじゃなくて、Iさんは僕を通してみんなにも
「自分は元気だからもう心配しないで。」
と訴えたいのではないかと思うようになった。なので、あえて彼女のことを書かせていただいたのだ。

 僕は、出演オーディションの時に「声が荒れているね。」と言ったひとことが、彼女の人生を左右してしまったのかなとか、彼女は音楽家になる夢を全う出来なかったので無念だったのではないのかなとか、彼女が亡くなってからいろいろなことをぐずぐず考えていた。
 他の人は、
「先生のせいではないですよ。」
と言ってくれるのだが、なんだろうな、しきりに自分を責めたい気持ちになるものなのだ。
 こんな気持ちでいるのはおそらく僕だけでないだろう。彼女をよく知る人達は誰でもそういった悔恨とか同情とか言葉に言い表せない気持ちに耐えきれないでいるのではないか。

 でも僕は確信している。彼女は今しあわせなのだ。満たされているのだ。彼女なりにやることをやり終えて、ふさわしい世界に帰っているのだ。だから、この記事を読んでいるみなさん!もういたずらに彼女のことで悲しんだり悔やむことはやめよう。彼女のことは、忘れようとしたって忘れられないし、忘れる必要もないけれど、僕達がいつまでも喪に服していることを彼女自身は決して望んではいないのだ。

 気がついてみたら、僕が夢を見たのは聖金曜日の朝だった。明日は復活祭。ここ数日の聖週間と呼ばれる時は、何が起きても不思議はない。だってキリストが死から復活したのだから。

 Iさんって本当にいい子だったんだ。僕は大好きだった。いいひとって早く死ぬんだよ。何故なら、いいひとだからこの世における修行が早く済んだわけだよ。神様が、「もういいよ、帰って来なさい。」って言ったわけだよ。

 

「西部の娘」開幕前夜
 ミニーに横恋慕している保安官ランスがミニーに迫る。
「誰も俺を愛さず。俺も誰も愛さなかった。黄金だけは俺を欺かなかった。でも今、俺は君のキス一つのために全ての黄金さえ投げだそうとしているのだ。」
ミニーは言う。
「愛とはそんなものではないわ。昔居酒屋で、母は料理と酒蔵番をしていた。父はトランプをしていて、時々母も一緒にトランプをしたの。あたしがテーブルの下で見ていると、母が足をそっと父に押しつけるのを見たわ。ふたりはとても愛し合っていたのね。ああ、あたしもそういう人を見つけたら。きっとその人を愛するでしょう。」

なんてロマンチックなセリフ!

 第二幕冒頭では、お馴染み三輪陽子さんが、ミニーの家に仕えるインディアン夫婦の奥さんウォークルの役で出ている。ウォークルは、
「もう下がっていなさい!」
というミニーの言葉に従おうとするのだが、これまでになく奥様がおめかししていることをいぶかり、さらにジョンソンがやってきてまたまたビックリ仰天!言いつけにそむいて、一生懸命ミニーとジョンソンのやりとりをのぞき見している。この時の衣裳がとても可愛いのと、興味津々でのぞき見しているその態度が面白くて仕方がない。みなさん!是非、三輪さんに注目!

 終幕。ミニーが根気よくジョンソンの命乞いをすると、最初は反対していたみんなもしだいに、
「もう抵抗出来ないよな。」
と言いながらジョンソンを許し始める。
 保安官のランスだけが恋敵のジョンソンを処刑出来ないことに逆上し、一同の前に躍り出てピストルでジョンソンを撃とうとする。
 と、その瞬間、それまで悪党を追っていた張本人であり、この一帯の金鉱や鉄道などのオーナーであるアシュビーがランスに迫り、彼の手から静かに拳銃を取る。この時、合唱団のテノールは高いシの音を出している。アシュビーを演じているのは長谷川顕さん。
「もう潮時だ。ランス、気持ちは分かるが、お前も男だったらこれ以上見苦しい真似はするもんじゃない。」
と言っているような長谷川さんのパントマイムの仕草がめちゃめちゃカッコいいのだ。ここはきっと聴衆として見ていたら誰しもがウルッとくるところだ。

 ホモキの演出。かつての「フィガロの結婚」のような段ボールに満たされた舞台は、お世辞にもエレガントとは言えない。でも芝居の中身がきちっと作ってあるので、必ずや聴衆の心に響くであろう。とにかく大変な傑作オペラだ。これまで有名なテノールのアリア以外知らなかったのが悔やまれるが、この歳になって新たな傑作との出遭いを体験するのもなかなか良いものだ。

次の4月15日の日曜日にはもう初日の幕が開くからね。みんなもう一息だ!頑張ろう!

SHURIKEN 2007
 メール・ソフトのShuriken 2007は素晴らしい。きちんと迷惑メールを選り分け、迷惑メール・ホルダーに入れてくれる。しかも学習能力が素晴らしく、新たな迷惑メールが来ても、「これを迷惑メールと認定」というところに分類すると、次から自動的に選り分けてくれるんだ。
 よく言われるように、普通のメールを迷惑メールに間違えて迷惑メール・ホルダーに入れてしまうようなことはほとんどない。

 Windows Vistaでは、メーラーは、これまで通りのOutlook expressから互換性のないWindows Mailに移ったらしいね。フン、感じ悪いね。Word 2007の書類は、それまでのWordでは開けられないらしいよ。こういうのもみんなMicrosoftの陰謀。
 
 この際、いっそのことみなさんもJustsystemのファンになって、メーラーもShurikenに乗り換えようよ。

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