誰に似た?

 次女の杏奈が勢いよくブログを始めた。写真も豊富に入ってセンスも良く、
「おっ、やるじゃん。」
と思ったが、あまり頻繁に更新するので、
「おいおい、最初からあまり飛ばしすぎると長続きしないよ。」
と言ったが聞かない。そういう奴なんだ、杏奈というのは。ひとつのものに恐いくらいに突進する。なんだか僕によく似ていて恥ずかしい。
 ところが世の中うまく出来ているもので、やはりそうは問屋が卸さない。ある時パソコンの上にジュースをこぼしてしまって、キーボードが使えなくなってしまったという。それで、あの洪水のようなブログは突然ピタッと止まった。なんというドジ。一体誰に似たんだ!

 杏奈って本当にそうなんだ。物凄く頑張りやなんだけど、なんかいつも大事なところでドジぶっこく。先日もあるオーケストラのオーディションを受けたが、オケ・パートのパッセージを無伴奏で吹くオーディションで、とてもアガッていたそうだ。でも与えられた譜面を吹き始めたら結構ゴキゲンで演奏出来たという。晴れ晴れとした気持ちで吹き終わって、後で気がついてみたら、inAで書いてある譜面をB管で吹いてしまっていたそうだ。
「やっぱ、駄目かなあ?パパ?」
「駄目に決まってらあ。たまにオケ練で管を間違えてトンでもない音を出して他の楽員に笑われる人がいるけれど、そういうことをしそうな奴だと分かったら最初から誰が採るかい。オケマンに求められるのは第一に冷静さだからな。ところで、どうしてそうなったんだい?」
「課題になっている曲にinBとinAとがあったので、管をとっかえひっかえウォーミング・アップをしている内にどっちがどっちだか分からなくなった。」
「あちゃー!あり得ねー!その、どっちがどっちだか分からなくなったってところが、そもそもクラリネット奏者としては致命的だねえ。」

ところで壊れたパソコンの件だが、後日ママを通して杏奈に言ってもらった。
「4月にお姉ちゃんがちょっとだけフランスに行くから、その時にパパが最近まで使っていたVAIOを持って行かせるよ。それまでインターネット・カフェでも行ってブログを更新するならしてなさい。壊れたパソコンはお姉ちゃんが逆に持って帰って修理に出すから。」

このVAIO君、捨てないでとっておいてよかった!

マティアスの「魔弾の射手」
 なんだか忙しいなあ。「アイーダ」の本番が始まったと思ったら、その間を縫って「魔弾の射手」の立ち稽古が始まった。演出は、子供オペラ「ジークフリートの冒険」や、本公演「さまよえるオランダ人」でお馴染みのマティアス・フォン・シュテークマンだ。
 また、このプロダクションの指揮者であるダン・エッティンガーは、「魔弾の射手」の他に東フィルの演奏会をいくつか引き受けていて、立ち稽古が始まる前に来日しており、その合間に「アイーダ」の舞台稽古を見に来ていた。彼はそこで僕とフリッツァとのペンライト攻防の話もいろいろ聞いていた。

 マティアスの演出は、予想していたように動きの多いものだった。合唱団は、横向いて歌い始めたり、歌っている最中後ろ向いたりぐるぐる回ったりはざらだ。舞台裏のオーケストラはバンダと呼ばれるが、そのバンダが演奏し始める時は、舞台上の合唱団員の一人がバンダの方を向いて指揮をする。僕はすかさずダンに言う。
「今回の指揮者はフリッツァでなくてよかったね。」
ダンが笑いながら言う。
「フリッツァだったら舞台上で自分以外の誰かが指揮するなんて絶対に許さないだろうからね。」
「横を向いて歌い始めることもね。」

 そのフリッツァったら、「アイーダ」の幕間に、プロンプターにも毎回、
「指揮しちゃ駄目だ。」
と注意しているという。彼からは絶対に見えないのに・・・・。
プロンプターは、
「振ってないのに・・・・。ただ、きっかけを出すのにテンポに乗れないといけないので、自分だけのために左手で軽く振っているけど、どうして分かるんだろう?誰にも見えていないはずなんだけどな。」
とこぼしている。本当に変わった指揮者だな。フリッツァって。まあ、全部自分で引き受けようとする態度は、男らしいといえばいえないこともないな。

 僕は、「アイーダ」の物量作戦もオペラの楽しみの一つだと認めるけれど、個人的には、マティアスの「魔弾の射手」のように、実際に人が激しく動いて、エネルギーを撒き散らして、合唱団がその演技力を充分に発揮出来るような舞台が好きだな。
 「アイーダ」は、合唱団にとっては、登場したら止まって歌うだけなので、実際にはかなり楽なのだ。舞台上で動いてくれるのは、むしろ行進する助演達とか、馬とかで、あとはなんといってもあの豪奢な舞台美術と衣裳が彼等を彩ってくれているのだけど、それって合唱団の演技力とはあまり関係ないからな。合唱団は勿論「アイーダ」でも全力で演技しているけれど、そもそも彼等の演技力を全力で出し切れるような作品ではないのだ。
 勿論ヴェルディの場合は、きちんと歌うことがとてつもなく難しいので、それだけで価値がある。合唱も含めて、歌手達が良い時のヴェルディというのは格別だからね。音楽が良いと舞台セットも急に輝きを増すというものだ。

 ただね、「アイーダ」はいいのだけれど、ヴェルディ風オペラをこのように豪華に上演することが、オペラという分野に“未来に向かう新しい風を吹き込む”とはとうてい思えないのだ。何千人ものエキストラを動員する「ベンハー」のような大スペクタクル映画が、今もうあまり流行らないのと同じだ。
 豪華さをウリにするオペラは、劇場にひとつくらいあっても良いが、「アイーダ」ナンバーツーやナンバースリーをお客に期待されても困る。助演だけで150人、合唱やバレエを合わせて約300人舞台上に登場するオペラが、予算的にもいつでも作れるわけないし、そういう方向でなくても充分楽しめるオペラだって世の中にはある。たとえばこの「魔弾の射手」のように。

 マティアスの「魔弾射手」は、あらゆる意味でゼッフィレッリ「アイーダ」の対極にある。気が利いてクリエイティブでハジけている。まだ始まったばかりだけれど、かなり楽しいものになりそうな予感。平行してやっていると頭切り替えるの大変なんだけどな。

Core2 Quadは・・・まあまあ
 自作パソコンは駄目だねえ。ちょうど保証期間が終わったくらいから部品の調子がおかしくなったりする。保証期間の間はなんでもないのに。まあ、仮に保証期間内に故障して、同じ部品と取り替えてもらってもあまり嬉しくない。何故かというと、パソコン部品の性能は短い間にどんどん進歩して、半年くらい経つと同じ値段で倍くらいの性能になっているのだ。いっそのこと、買った時の値段相当の最新製品と交換してくれればいいのに・・・・。無理だろうな・・・。

 自作マニアになるのは、経済的な理由もあるのだが、それよりも、性能の良い新製品が出ると、それを使ってみたくて我慢が出来ない子供みたいな輩がほとんどなのだ。だから、ひとつの部品に不具合が出ると、
「しめた!」
と思ってしまう。そしてそれを理由に、気がついてみると、あれもこれも取り替えてしまったりするのだ。だから、とどのつまり、ちっとも経済的ではない。

もう寿命?ハードディスク
 僕の場合もそう。事の発端は、パソコンの起動が極端に遅くなってきたことにあった。いろいろ調べた結果、どうやらハード・ディスクが寿命に近づいているらしいことが分かった。一昨年の暮れ、Wishという名前をつけた新型自作機を作った時に新調した250GB(ギガバイト)のハード・ディスクだ。もう壊れるのかよ。
 よくパソコン雑誌なんかで、
「ハードディスクがある日突然昇天しました。」
などという話を聞いていたのだが、人事だと思っていた。まあ、僕の場合、特に音声や画像、映像を使って普通の人とは比べものにならないほど酷使しているけど、それでも寿命が来るのが早すぎるよ。

 そこでお馴染みの新宿西口SOFMAPに行って新しいのを買ってきた。今は、かつての250GBの値段で、倍の500GBの製品が買えるんだよ。けけけ。

 僕のパソコンの中には、実はもう一つ500BGのハード・ディスクが入っている。テレビのキャプチャーを買った時に一緒に買ったのだ。それでNHK「カルメン」の放映や、先日のドレスデン国立歌劇場の「薔薇の騎士」など、良さそうな番組をバンバン撮りまくってはパソコンの中に保存している。
 それで・・・それでね・・・・この新しい製品と合わせると、なんと僕のパソコンのハードディスクは1000GB、つまり・・・夢の1テラバイト・パソコンとなるのだ。どうだ、みんな、まいったか!

新たな誘惑
 それだけで済めば良かったのだ。ところがそこに新たな誘惑の手が忍び寄ってきた。
「この際だから、テラバイト・パソコンだけでなく、もっとみんながうらやましがるような最先端のスーパーウルトラ・マシーンにしたらどう?」
と耳元でささやく声が聞こえてきたのだ。
 折も折、週刊アスキーを読んでいたら「Core2 Quadを入れてみる」という記事があった。読んでいる内に胸の内からムラムラと湧き上がってくるものを感じた。Wishを作った時は、CPUはCore2 Duoが最先端だった。今はCore2 Quadが最先端。
「うっ、これを自分のマシーンに入れて速さを味わってみたいなあ。欲しいなあ、Core2 Quad・・・・。」
こうなるともう病気だね。

 パソコンとは元来電子計算機で、CPU(Central Processing Unit)とは、その中でも実際に演算処理を行う部分。つまりパソコンのまさに中枢機関。かつてはPentium4などが最先端だったのだけれど、Core2 Duoが出て、ひとつのCPUの中になんと2つのコア(核)が入って演算処理速度が理論的には倍になって、あっと驚いたのだ。で、当時の僕は飛びついたわけだ。 
 ところが今度は、さらにその倍。つまり4つのコアが入っているんだぜ。しかも、Q6600という製品なんか、当時のCore2 Duoより安い値段で売っている。これはもう買えと神様が僕に命令しているようなものではないか。え?どこの神様?うるせえな、トホホの神様だい。あ、ヤベエ・・・・。

品切れ
 それでまたSOFMAPに行ってみたが、がっかりした。お目当てのQ6600は、人気商品のため品切れになっていて再入荷待ちだって。一方で少しほっとしたことも事実だな。だって今使っているCore2 Duoはどこも悪いところはなく、相変わらずサクサクと動いているのだもの。無駄遣いしなくて済んだ。あははは。めでたし、めでたし。

だが・・・
 だがここ数日前から僕の耳元でささやいていたトホホの神様は、思わぬところから奇襲作戦に出た。3月9日の日曜日は、モーツァルト200合唱団の練習のため名古屋に行った。新幹線で名古屋駅に着き、ちょっと時間が早いので駅構内のSOFMAPにふらりと入った(なんで?)。
 すると、驚くべき事に、新宿SOFMAPでは品切れになっているCore2 Quadが何気なく山積みされているではないか!さすが地方!僕は自分の心臓が高鳴るのを感じた。
「でも、だめだめ!練習に行かなくては。」
で、心を鬼にして練習場に向かった。
 練習は勿論集中してきちんとやったのだけれど、時々Core2 Quadのことが頭にチラチラかすめた。でもその時点では買うつもりはなかったのだ。本当だよ。信じて!

 ところが一体どういうわけだろう。僕は自分で自分が信じられない。練習後、名古屋駅に着くやいなや、僕はどうやら真っ直ぐSOFMAPに向かい、店員に声をかけたらしい。
「このCore2 Quad下さい!」
なんとなく覚えているのだけれど、ほぼ無意識の行動。しかし製品を手にした瞬間、
「うわあ、やっちまった。か、買ってしもうた!」
と我に返って自分の行為に気がついた。もしかして、今日のギャラの大半は、このちっぽけなCore2 Quadに化けてしまったって事かい?モ、モーツァルト200の皆さん・・・ごめんなさい!

世界で一番怖い人
 家に帰ってきたら、妻が、
「あら、何その袋?」
と聞く。さり気なく二階に持って行こうとしたのに、全くなんて目ざとい奴なんだろう。
「ええ・・・これは・・・そのう・・・つまりだね、新しいCPUを買ったのだ。」
「何で?ハードディスクはおかしくなったって聞いたけど、その他は聞いてないわね。」
汗が出てきた。
「これは凄いんだぜ。倍の性能なんだ。コアが4つもあるのだ。新宿のSOFMAPでは品切れだったのに、なんと名古屋駅構内のSOFMAPで売っていたんだ。いやあ偶然だねえ。、思わず買ってしまったよ。あはははは・・・・。」
「ふうん・・・で、いくらしたの?」
来た!どうしよう、本当のことを言わなければ・・・・。見ると妻の目が三角になり出した。ヤベエ、この顔になると緊急事態発生だ!
「一体、いーくらしたのようー!」
「ええと、ニッキュッパ、ははははははは・・・・。」
「ニッキュッパ?ってことは二千九百八十円のわけないから・・・・ええっ、もしかしてにまんきゅーせ・・・・、なんですってえ!」
「キャイーン!ご、ごめんなさい!」
「ちょっとちょっと冗談じゃないわよう!」
こんな時、僕は世界中の誰よりも妻が怖い。
「あなた、一体何しに名古屋に行ったのよう!」

 このやりとりを長女の志保が横で見ていて面白がっている。
「ばっかじゃない?パパ。子供みたいだね。」
あんたに言われたかないね。

で、性能は・・・
 こうして妻の罵倒に耐え、とうとう手に入れたCore2 Quadをパソコンに搭載し、500GBのハードディスクをフォーマットしてWindows XPを入れ直して、スーパーウルトラ・マシーンが出来上がった。これを僕はSuper Wish君と名付けた。えっへん!

 で、肝心の性能は?うーん、速くはなった・・・けど・・・画期的かと言われると・・・まあ・・・そのう・・・・なんというか・・・・なんとも歯切れの悪い返事だね。とどのつまり、今ひとつよく分かんねえや。
 確かに理論的にはコア4つだから4倍の性能のハズだが、物事というのはそう上手く運ばないのだな。これには二つ理由があるのだ。

 ひとつ目の理由を説明する前にこう考えてもらいたい。ここにシングル・コアのPentium4の3GHzがあるが、これを仮に、ひとりで時速3kmの速さで荷物を運んでいる人にたとえる。それからCore2 Quadの2.4GHzは、4人の人が同時に時速2.4kmで荷物を運んでいると考える。
 荷物を運ぶ量を問題にすると、速度が多少遅くても4人がいっぺんに荷物を運ぶ方が圧倒的に勝利するが、どちらが早く目的地に着くかという事を問われると、4人が時速2.4kmでどんなに頑張っても、一人の時速3kmの速さにはかなわないということになる。勿論実際にはもっと仕事の種類は複雑に絡み合っているのだが、要するに、常に4倍の仕事をするとは限らないわけ。
 もうひとつの理由は、これは後で知ったことなのだけれど、Windows XPでは、Core2 Quadの動作をあまりサポートしていないので、その性能を最大限に生かせないとのことだ。そこへいくとWindows VISTAは最大限に生かせるんだとよ。ちぇっ、なんだい!またVISTAかよ。

足もとを見て地道に・・・
げっ!モーツァルト200のみなさんの地道に稼いだお金は、単にへなちょこ自作マニアのしょうもない慰み事に使われてしもうた。まだCore2 Duoは何の傷もなくサクサクと動いているし、Core2 Quadで性能を生かし切れないんじゃ、本当にみなさんに申し訳ない。

思い返すと、子供の頃お袋がよく言っていたのだ。
「お前はチンドン屋を聴いて、あんなことしながらお金が儲かるのならなんていいんだろうと言っているけれど、そんな風に面白おかしく人生を生きようとしてはいけないよ。世の中そんなに甘いものではないし、仕事となれば、そんな楽しいことばかりない。地道に働いて、ひとつひとつ稼ぐのだ。いつも足もとを見ていかないと、あとでしっぺ返しが来るよ。」
ところが僕は、こうして音楽の世界で面白おかしく生きながらお金をもらっている。仕事するのも楽しくて仕方がない。まさに踏んだり蹴ったりの正反対の人生。それだけでもすでにお天道様に対して申し訳ないのに、そうして稼いだお金を、さらに何の役にも立たないものに費やしている。ああ、なんていう罰当たりだ!もうやめよう、こんなことは。もっとお袋の言いつけに従って足もとを見て地道に生きよう・・・・。

と、思っていたところに朗報!!

 Windows VISTAは今月ないしは来月にいよいよサービスパック1を出すそうだ。それに伴ってWindows XPもサービスパック3を出すという。そのSP3では、なんとCore2 Quadの動作サポートに大幅改良が加えられるそうだ。それを導入すると飛躍的に性能が向上するんだって。

 ヤッホー!やったー!モーツァルト200の皆さん!こうして、貴方達が僕に払ったギャラは、僕の元で無駄になることなく、Super Wish君の飛躍的向上に生かされたってわけです。チャン、チャン!
 
 何?全然懲りてないだって?まあ、どっちでもよいではないですか?たった一度の人生、面白おかしく生きましょうや。とにかく僕はメンデルスゾーン作曲オラトリオ「パウロ」をしっかり勉強して、すんばらしい公演にするのですからね。そうすればみなさんもハッピー、僕もハッピーで何が悪いのでしょう?
 ただ決してギャラの使い道を詮索しないでね。もらったらこっちのもん・・・・あ、いやいや・・・・決して無駄遣いなんかいたしません。するわけないではありませんか。あはははははは。
Cafe MDR HOME  


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