「若き日のバッハ」演奏会、無事終了

 ヴィオローネに乗って二本のヴィオラ・ダ・ガンバがメロディーを奏でる。少ししてリコーダーが入ってくる。聴衆のとまどいが指揮している背中から感じられた。通常聞き慣れている音と全然違うサウンド。どこかなつかしい、ひなびた響き。
 合唱が入ってくる。これも抑制された声。恐らく、カンタータ第106番「神の時は最上の時」が始まった時、聴衆は、
「自分たちは一体どこに連れて行かれるんだろう。」
と思ったに違いない。

 東京バロック・スコラーズの演奏会は、このようにして始まった。リコーダーの高橋明日香さん。ガンバの櫻井茂さん。みんな自分の持ち味を最大限に出して、僕の大好きなこの曲を彩ってくれた。掲示板でも書いたけれど、僕はこの曲のことを、自分の葬儀に使いたいほど大好き。だから今日は、またこの曲が出来て幸せだった。

 カンタータ第4番では、ぐっと若返った弦楽器奏者達が、練習の時からどんどんコツをつかんできて自由になり、柔らかくてそれでいてパワフルな素晴らしいサウンドを作ってくれた。どうだいこの響き!一番の心配事だったオーケストラが、いよいよ始動し始めたぞ。

 一方、今回の合唱に課したテーマは、オケとの融合だ。自分たちの内部でサウンド作りをするだけではなく、オケの音を良く聞き、なるべくオケと同じような音を出そうと努力する。同時に、オケに対しても、自分たちだけでアンサンブルを作らないで、自分が弾いているのと同じパッセージを歌っている合唱パートを常にマークしながら演奏する事を要求する。
 このようなことを通して、合唱がとか、オケがとかではなくて、合唱とオケは、渾然一体となって、ひとつのユニットとして聴衆に届く。それが出来たら素敵だなと思っていたが、それは今日、かなり実現できたように思う。

 手前味噌になるが、今回の合唱団のなによりの成長は、オケに影響されて、合唱の響きがまろやかになってきたこと。まさにその点が、今までのTBSに一番欠けていた要素だからね。
 打ち上げで誰かが言っていたけれど、
「押すだけではなくて、引くことが出来るようになってきた。」
ということだ。要するにオ・ト・ナの音楽が出来るようになってきたということだ。
 バッハの音楽は細かいパッセージが多く、幾何学的に音符が並んでいるけれど、演奏に際しては、とげとげしくなったり、冷たくなったりしたら駄目なんだ。常に人間を信頼している者の温かさが漂っていなければ。そのためには、何といっても響きの柔らかさを獲得しておかねばならない。

 カンタータ第131番は、二人の管楽器奏者、すなわちオーボエの小林裕(こばやし ゆう)さんと、ファゴットの鈴木一志(すずき ひとし)さんが、美しい音で揺るぎないプレーをしてくれた。この二人はもはや当団にはなくてはならない人物だ。

 ソプラノ合唱のコラールをバックにバスのソロが歌う曲で、僕はオブリガートのオーボエ・ソロを支える通奏低音に、通常のチェロではなく、ファゴットをあてがい、櫻井茂さんのコントラバスと一緒に鈴木さんに演奏してもらった。すると、オーボエとファゴットという同じ二枚リードの楽器同士、音が完全に溶け合って、何とも心地良いサウンドが生まれた。小林さんと鈴木さんの、音楽を通しての友情の勝利だ。

 ソリストに関しては、バッハ歌いのベテラン、大島博さんは別にして、必ずしもバッハ歌手ではない人材を選んでみた。ソプラノの飯田みち代さん、アルトの佐々木昌子さん、バスの大森一英さん達だ。みんな普段はオペラをバリバリ歌っている人達なので、少なくとも、バッハという作曲家に日常的になじんではいない。でも、声は基本的にはバッハに向いているんだ。
 ところが、モーツァルトくらいまでだったら、そのままでも歌えるのだが、バッハの場合、声の使い方、フレージング、装飾法などが特殊で、別に古楽唱法でなくても、バッハを正しく歌えるようになるまでには、多少なりとも勉強しなければならない。それを教え込むのだ。手間がかかるが、発掘する楽しさもある。
 
 僕は、プロ、アマを問わず、これぞと思った人達に目をつけ、バッハの道に引きずり込む悪い癖がある。つまりバッハ・ナンパ。それで本番だが、まあ、彼等は、まだバッハ歌いのような匂いはないんだが、それでも立派につとめたじゃないか。僕はますます人材発掘、調教の喜びに目覚めてしまったよ。

 もしみなさんが道で僕に、
「ヘーイ!そこのカノジョ!僕と一緒にバッハを歌わないかーイ?」
と声を掛けられたら、どうか逃げないで僕にバッハ・ナンパされて下さいね。

 この演奏会の成功で、東京バロック・スコラーズは、ますます夢の実現に近づいてきたよ。来年から、いろいろ始まるんだ。そのためにも合唱団そのものの実力を、みんなの模範になるようにしておかなければならない。

歩みはまだ始まったばかりだ。だが着実に前に進んでいる。

上岡さんの椿姫
 新国立劇場では、「椿姫」の立ち稽古が始まった。といっても新制作ではないので、稽古期間は長くはない。今回の指揮者は、ドイツの劇場で長年活躍している上岡敏之さんだ。上岡さんのことは、ベルリン国立歌劇場合唱指揮者でバイロイト祝祭合唱団の合唱指揮者でもあるエバハルト・フリードリヒからよく聞いていた。エバハルトとは、ヴィースバーデン歌劇場で一緒だったそうで、彼が以前からめちゃめちゃ褒めていたのだが、残念ながら僕は今日まで面識がなかった。
 上岡さんは、小柄な体にエネルギーを秘めていて、良い公演になりそうな予感が早くもしている。歌手達が来たばかりというのは、みんなマルキーレンと言って声を抜いて、むしろ演技を覚えることに集中しているから、上岡さんもまだ本気で振っていない。これが劇場に入って舞台稽古となると、ある時突然歌手が本気になってフルヴォイスで歌い出し、あたりに急に緊張感が走ったりするのがたまらない。またいろいろ分かったら報告するね。

SP3とフリー・ソフト
 Windows XPをお持ちのみなさん!サービスパック3(SP3)はもうインストールしたかい?僕は、かなり前からお試し版を入れてエラーを出したりして、楽しみにしていたけど、入れてみると確かに動作が速くなったのが分かるよ。みんな入れた方がいいよ。

 でもひとつ気をつけないといけないことがある。対ウィルス・ソフトを少なくともオフにしてから入れた方がいい。僕の場合、愛機Wish君にはカスペルスキーを使っていたけど、ヴァージョン・アップしないとSP3には未対応で、お試し版の時ほど強烈ではないけど、やはりインストール時にエラーが出た。オフにしても同じだったので、一度削除して再インストールした。

 妻のパソコンは、マザーボードから取り替えた時に、応急的にAVGというフリー・ソフトの対ウィルス・ソフトを入れて、後で何か買えばいいやと思っていたのだが、このAVGという奴ね、無料の割に意外と優れものなんだ。
「なんだ、このままでいいや。」
と、そのまま使っている。妻のパソコンも、用心してAVGを一度削除してからSP3を入れたら、すんなり入った。もしかしたらそのままでもよかったかも知れない。

 そのついでに、僕のWish君に入っているカスペルスキーの有効期限が迫っていたので、思い切ってこっちもAVGに乗り換えてしまった。

 フリー・ソフトで済むなら、対ウィルス・ソフトなんてものにお金かけるの馬鹿馬鹿しい。パソコンのソフトの売り上げ上位を占めるのは、みんな対ウィルス・ソフトなんだから、一体何のためにパソコン買ったのか分からないや。
「どうだい、いいパソコンだろう。」
「ソフトは何が入っているの?」
「最高のウィルス・ソフトさ。一万円以上した。」
「それで何するの?」
「ひたすらウィルスが来るのを待っているんだ。早く来ないかな。退治してやるのに。」ウィルスが来るのを待つためにパソコンを起動する生活なんて、笑い話にもなりゃしない。

 そんなわけで、フリー・ソフトのAVGはお薦めです。でも不安な人がいたら、僕がしばらく使ってみて、何か問題が発生したら報告してあげる。僕も、何かあったらすぐにまた新ヴァージョンのカスペルスキーを買おうと思っているのだ。無料のものに過度な期待は出来ないから。
 カスペルスキーはね、高いけどやっぱり優秀。ここだけの話、不正コピーしたソフトをインストールしようとすると、ギャー!と凄い音がして、
「悪いことしようとしているよー!」
と表示が出た。
「キャイーン!ごめんなさーい。」
ね、きちんと値段分の仕事はしているわけだ。

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