早くじいじになりたいな

三澤洋史   

パソコンが壊れた!
 ある日、いつものようにパソコンをつけようとしたがウンともスンとも言わない。いろいろ調べたら、どうやら電源が壊れたらしい。以前妻のために自作して今は使っていないマシーンから電源だけ取り出して取り替えてみた。今度は通電はしているのだが、パワー不足で立ち上がらない。困った。
 この原稿はノートパソコンで書いている。壊れたパソコンでメモのように書いていた断片的な記事がひろえないので、最初から書いている。なので今週は短いです。とにかくこの「今日この頃」を仕上げてから、壊れたパソコンの復旧作業を落ち着いてしなければ。 でもなあ・・・新しい電源を買ってきても、今となっては石器時代のように感じられるWINDOWS XPだし、マザーボードから始まって何もかも古くなっているし・・・今ここで中途半端にお金を使うよりも、とりあえず妻の古いパソコンに僕のハードディスクを加えて動かす方が無難かな。OSとは別のハードディスクに様々なファイルは保管してあるから、今の僕のマシーンがいよいよ修復不可能になったとしても壊滅的な損害はまぬがれるのだ。今後の身の振り方はまたゆっくり考えよう。

機械って壊れるから嫌だな。

早くじいじになりたいな
 本当は、今週の「今日この頃」の巻頭を孫の写真で飾りたかったねえ。
もしかしたら、みなさんがこの記事を読む頃には生まれているのかも知れないが、この原稿をコンシエルジュに送った現在、長女の志保はまだ大きなお腹をかかえている。予定日は11月21日。もう随分経っている。

 仕事場に行く度にみんなの視線を感じる。
「まだか?」
と無言で言っている。
「すみません、まだです。もう骨盤の中にすっぽりはまっていて、いつ生まれてもおかしくないんですがね。あはははは・・・・」
別に悪いことをしたわけでもないのに、みんなにあやまっている。

 初産(ういざん)は遅れることが多いという。1週間以上遅れることもざらではないと聞く。これまではそう聞いても何とも思わなかったが、そうかあ、その間近親者達はこんな風に待ちくたびれていたのか、と初めて理解する。人間って本当に他人の立場に立ってものを考えられないものだな。自分が同じ思いをして初めて気づくわけだ。

頑張れ!Piccolina(ちびっこ)!おじいちゃんが待ってますよう!

早くもスキーの話題
 「ホフマン物語」の立ち稽古が急に休みになった。そこで僕は、かねてから興味があった所に行った。それは・・・軽井沢プリンス・スキー場である。突然の休日なのでスキー板を宅配便で送る暇もない。靴と板と着替えとを持って武蔵野線や埼京線に乗り込んだ。朝の通勤ラッシュ時間。
「何やってんの、このおっさん?こんな時期に浮かれてスキーなんか担いで」
と冷たい視線が無言で語っている。
 大宮から新幹線に乗るが指定席はすでに満員。自由席も一杯でデッキにスキー板を持って立つ。高崎駅に新幹線が滑り込んでいく手前、山というよりはどう見ても丘にしかすぎない観音山の頂上にそびえるなつかしい白衣観音が現れてきた。あのふもとに僕の母校である高崎高校がある。ふと気づくと、その隣に浅間山の姿が見える。おおっ!あのふもとにこれから行くのだ。お空は快晴!


白衣観音と浅間山  (クリックで拡大)


 でも、読者のみなさんの声が聞こえる。
「軽井沢って、雪なんか降っているの?」
降ってないさ。トンネルを抜けると・・・相変わらず紅葉の美しい晩秋の景色が広がっている。気温は東京よりは寒いけれど、今日はウエアーの下にフリースはいらないなと思った。
 電車を降りて、プリンスホテル方面に歩く。山肌に突然、不自然にくぎられた白い一角が現れる。プリンス・スキー場のゲレンデの内、2つだけ11月1日から営業しているのだ。雪は、降雪機を使った人工雪である。

 滑り初めてみた。うーん、まあ、かき氷の上を滑っていると思っていただければいい。それに、ゲレンデは小さく、しかも初心者コースなので物足りない。それにしてはスキー客が多く、30秒で滑り降りるとリフトの所でごちゃごちゃ待っている。でも、なんだねえ。最近の若者達は我慢がいいねえ。
「10分待ってるね。これでもディズニーランドよりはマシだな」
なんてリフト待ちしながら話してる。あたりめーだい!こんなところで90分待ちなんてなったら怒って帰るぜ!


リフト10分待ち


 滑っている内にあることに気がついた。結構上手な人が多いのである。周りの人達の話を聞くと、どうやら指導員レベルの人達がグループで来ているようだ。もうひとつ気がついた。なんと、ゲレンデに“内傾”で滑っている人がひとりもいない!
 内傾とは、僕のスキーの記事にもしばしば出てくる言葉で、ハイブリッド・スキーイングとも二軸とも呼ばれる滑り方のことである。ここ数年、全日本スキー連盟SAJは内傾を中心とした指導体系を作り上げていたのに、春の技術選で突然これまでの方向性を一新して、従来通りの外向外傾に戻った。
 一時は、
「自転車と同じで体を傾けるだけでターンが出来て、簡単に滑れます」
と言って、検定試験の2級までは内傾だけで合格出来るようにしていたのである。恐らくじり貧のスキー業界をそれで救おうとした経済優先の愚かな決定であったと思われる。
 でも、自転車と違うのは、スキーにはブレーキがないのだ。スピード・コントロールをするには、スキー板をズラすことだが、内傾ではズラすことを教えない。つまりブレーキのない自転車に乗せているような状態になり、ゲレンデで初心者の追突事故など様々な問題を引き起こしていたのである。

こんな風にここ数年間、素人の僕から見ても迷走としか思えないような状態に日本のスキー界は陥っていた。それが突然再び変わったのだ。

 家に帰ってから、スキー場から内傾がきれいに消えたことを親友の角皆君にメールで送った。すると彼が言うには、急に指導体系が変わったので、インストラクター達の中に混乱が起こっていて、今までのどこをどのように改めなければならないのか具体的に勉強するために軽井沢に集結しているとのこと。スキー・シーズンが始まってしまう前に練習できるところは限られているから、人工雪の軽井沢なんだね。
 しかし・・・こんな風にきれいに内傾が姿を消してしまうのだったら・・・それで何も困ることがないんだったら・・・これまでの数年間は一体何だったのかねえ。百害あって一利なしだねえ。こういうのは何も責任問題にはならないんだね。とにかく、今シーズンのゲレンデは見物(みもの)ですね。

 思いがけなく、スキー界の内情に踏み込む場面に遭遇してしまった。ゲレンデ自体はつまらなかったけれど、リフトを降りたてっぺんから眺めた浅間山は美しかった。雄大で、自然の脅威を感じさせ、崇高な姿は、富士山と一緒だが、群馬に生まれて子供の頃から浅間山を見て育った僕にとっては、この山こそ“僕の富士山”なのだ!


ああ浅間山  (クリックで拡大)


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