キャンプ続報

三澤洋史

キャンプ続報
すみません。今週はスキーの話題ばっかりです。興味のない方は、どうぞ来週まで待って下さい。

 「マエストロ、私をスキーに連れてって2019」キャンプのBキャンプ、すなわち3月2日土曜日及び3日日曜日のキャンプでは、宿泊を推奨しているペンション・カーザビアンカはもう満室となったので、今後の申込者には、近くのペンションを斡旋させていただくことになります。このBキャンプだけ、土日ということもあって、異常に参加者が多いわけです。

 その一方で、2月のAキャンプでは、プロ音楽家の人達が結集しつつあるけれど、僕が「プロ音楽家たちよ」と呼びかけたものだから、アマチュアの人達が逆に気後れしてしまって、
「2月に申し込もうと思っていたのですが、そんな凄い人達ばっかりでどうしようかなと思っています」
なんて声が聞こえてきた。
 あの、別にプロ限定とするつもりは毛頭ないからね。僕もプロの音楽家とだけキャンプをやりたいわけではない。ただプロの人達が来易いように呼びかけただけ。そこで音楽の競い合いをするわけでもないし、そもそも楽器を持ってくるわけでもない。
 それよりも、現在参加を決めているプロの人達はみんな気さくで、気むずかしい人はひとりもいません。なので、アマチュアの方達も躊躇しないでどうぞ遠慮なく申し込んで下さい。Aキャンプは、まだカーサビアンカも余裕があります。

ひとつだけ、これは言おうかどうしようか迷っていたのだけれど・・・・実は、Bキャンプの懇親会が3月2日なので、僕の誕生日である3月3日の誕生パーティーになるだろうということで、キャンプ自体には参加しないけれど、講演会や懇親会には是非参加したい、と言っている人がいます。
そのこと自体は、もともと自由です。また「その日になって来られたから飛び入りで参加」というのもアリです。ただ、講演会及び懇親会の会場となっているカーサビアンカの都合もあるので、そういう方でも、出来ればあらかじめ申し込んでくれるとありがたいと思います。
 キャンプ自体に参加しない方の講演会参加費は1000円。懇親会は3000円で簡単なツマミと飲み放題ドリンクです。会場は、カーサビアンカ地下の呑み処おおので、そこには、飲み放題食べ放題メニュー以外のいろいろな銘酒や各種ツマミがあるので、その場でキャッシュと交換で直接受け取ります。
 講演会及び懇親会だけの参加の方は、キャンプ申し込みの入力フォームを使用しないで、直接「マエストロ、私をスキーに連れてって2019」キャンプのメールアドレスに、お名前、性別年齢職業や、参加理由などを書いて送ってくれますか?キャンセルも自由です。
アドレスは以下の通り。
maestro.takemeskiing2019@gmail.com

 「マエストロ、私をスキーに連れてって2019」キャンプは、生まれて初めてスキー板を履くという方から、上級者でコブでもどこでもどんどん行くという方まで、どなたでもOK。プロアマを問わず音楽に携わる人を対象にしたキャンプで、レッスンだけではなく、講演会及び懇親会と一体となってこそ効果のある企画であること。
 しかも、どのレベルでも、一度もう少し基礎的なレベルに戻って、体幹や重心移動などを徹底的に追求してから、本来のレベルでのエクササイズをやるので、構造的及び本質的な技術の向上が望まれること。

さあ、今からでも、みなさん申し込んで下さい。決して後悔はさせません。

都心からの穴場・川場スキー場
 1月3日に家族で石打丸山スキー場に行ったきり、新国立劇場の練習が始まると、ずっと忙しくてスキーに行く日など捻出しようもなかった。しかし、「タンホイザー」の稽古場での立ち稽古が16日水曜日までで終わると、歌手達が喉を休めるために17日は一日オフになる。そして18日から舞台稽古が始まる。
 そのオフの17日に、新国立劇場合唱団バリトン団員の秋本健さん(アキケン)と一緒に滑りに行く約束をしていた。彼は、先シーズン白馬で一緒に滑ったら、すっかりスキーに病みつきになった。
 そこで僕は、今使っていないミウラ・クラシックという板(三浦雄一郎がK2と共に開発した中高年に優しい安定した板)を彼に貸してやり、気に入ったらそれをあげるつもりでいる。彼は彼で、靴やヘルメットやゴーグル、手袋などを自分で買って、冬に備えていた。おまけに車も新しくして、今やスタットレス・タイヤに四輪駆動だ。

 そんなアキケンは、17日にやっと今シーズンのスキー・デビューをした。彼は東百合ヶ丘の自宅を超早朝に出発。僕の家に午前6時に迎えに来た。行き先だが、行き慣れたガーラ湯沢や石打丸山スキー場も候補に挙げたけれど、せっかく車で行くので、JRの駅からは遠くても、車で近いところないかなと探していたら、とんでもない穴場があった。
 以前、新国立劇場のメンバー数人で行った川場スキー場が、沼田インターからわずか30分で設備も整っているという。
「ホントかな?」
と思ってホームページを開けたら、
「首都圏からわずか2時間で絶好パウダー。」
と歌っている。そこで、試しに行ってみることにした。


 おじさん二人のドライブ。国立インターから八王子ジャンクションを抜けて圏央道を通り、鶴ヶ島ジャンクションを抜けて関越自動車道に入って、沼田インターをめざす。途中で上里サービスエリアでトイレ休憩。スターバックスで朝食を買い込み、車中で食べながら行く。
 沼田インターで降りた時は、まだあたりに雪があまりなく、
「大丈夫かな?」
と思ったが、それからズンズンと山道を登っていく。極端な急勾配ではないが、なかなかの標高だ。登るにつれて、あたりの雪の量も多くなってきた。気が付くと、坂の上の方に川場スキー場の巨大な立体駐車場が見えてきた。案内の人が僕たちの車を2階の駐車場に誘導した。
 ここの立体駐車場にはびっくりした。坂道に沿って1階から6階まで作られていて、車を1000台収容可能だという。ゲレンデは坂のてっぺんで最上階の7階及び8階にある。屋根があるので、僕たちはその場で靴を履いたらもう準備完了。
 駐車場を含む巨大ビルのカワバシティには更衣室があるので、普段着で来てまるごと着替えることも出来る。雪道を歩かなくていいので普段靴でもOK。7階にリフト券売り場がある。ここには子どもが遊ぶスペースもあり、7階から8階にかけてレストランや各種ショップが並んでいる。
時計を見たらまだ8時30分。なんと2時間半でドアツードアか!
素晴らしい!

 さて、肝心のゲレンデだが、宣伝に違(たが)わず雪質はパウダーで抜群。勿論、白馬とか苗場とかのように巨大ではないが、充分な大きさだし、上級コースと中級コースが充実している。しかもとってもすいている。これで儲かるのかなと心配になるくらい。まさに穴場!

写真 川場スキー場の頂上からの眺め
川場頂上


教えつつ学ぶ
 さて、滑り始めて、最初の45分間くらい、僕はアキケンに滑り方を教えてみた。彼はプルーク・ボーゲンで滑っている初級者であるが、とても勘が良い。そんな彼に僕は、昨年末、親友の角皆優人君のレッスンの内容をパクって、彼に伝えてみた。すると、わずか45分あまりの間に、見違えるように上達した。もう、パッと見、パラレルだ。切り替えの時にちょっとだけ三角になるだけ。その理由は後で説明する。

 プルーク・ボーゲンは“全制御”とも訳される通り、真っ直ぐ下に滑ってもスピード・コントロール出来るため、滑りに特にリズムは必要ない。しかし、これをパラレル・スタンスにつなげるためには、そのままではいけない。
 スキーはターンに始まりターンに終わる。その楽しみも難しさもターンの中にある。だからプルークで滑る彼が必要性を感じなくても、ターンを滑走に取り入れ、しだいに連続的なS字ターンに導き、そこに片方ずつの板に乗り換える重心移動と、抜重のための上下動、さらには板を走らせたりコントロールするための前後動(つま先加重とかかと加重)などを加えていかなければならない。

 アキケンに斜滑降をやらせると、山足がどうしても内エッジになってしまう。つまり斜滑降してもボーゲンの形を抜けられないので、両スキーが平行にならずにハの字になってしまう。きっとそういう人って沢山いるんだろうな。
 これを外エッジにするために、急斜面で彼を横向きにし、「カニさん歩き」で斜面を登らせた。そうすると嫌でも山足が外エッジになる。それから緩斜面に移動して、
「怖いかも知れないけれど我慢して山側の外エッジを維持して、両方の板の平行も維持してね」
と斜滑降の練習をさせた。

 さて、その後であるが、いろいろ考えたあげく、試しにシュテム・ターンをやらせてみた。
「山足の外エッジを保ちながら斜滑降して、ターンしようと思ったら、その山足を開いて、そこに重心を移してボーゲンで回る。空いてる足には重心が乗っていないのでブラブラするでしょ。それでその足をゆっくり寄せて平行になったら、しばらく斜滑降してごらん。それからまた、山足を開いて重心を移してボーゲン・・・・」
 実は、僕自身は、シュテム・ターンを経ないでパラレルまで行っちゃった人間なので、自分も決して上手ではない。なので、自分の練習も兼ねてアキケンと一緒にシュテム・ターンを試してみた。するとね・・・・これって、いいわ!
 シュテムって、パラレルという機械をドライバーを使って分解して内部を観察しているようなものだ。しかもターンする瞬間はプルーク・ボーゲンなので、恐怖感も少ない。考えてみると、パラレルって、たまたま両スキーがパラレル(平行)なボーゲンということが言える。なぞるラインはボーゲンの外足だからね。

 それから、これも昨年末の角皆君のレッスンの受け売りだけれど、前後動を教えた。角皆君とはちょっと言葉を変えて、「イケイケモード」と「守りモード」と言った。ターンの初めは板を走らせるために重心をより前にかける。足のスネは靴のベロに圧がかかっている。つまり「つま先加重」。アキケンの上半身が垂直に立っているので、もっと前傾するように言った。
 それからターンの終わりくらいになると、板はフォールラインに対して横向きになってくるし、谷足で体重をグーッと受けとめるようになる。その時には、角皆君がControl Faceと言っていたように制御中心の「かかと加重」となる。この前後動を少しオーバーにやってリズムをつける。
「グーッと体重を受けとめて足を曲げて上体を低くしてから、次のターンを始める時に、体を谷の方に放り出しながら立ち上がるんだ。その時に、年寄りが、よっこいしょっ!て言うタイミングでストックを突く」

 教えながら気が付いた。スキーが結構上手でも、ストック・ワークが下手な人が多いのだが、音楽家はまずこれから教えるべきだ。重心移動、前後移動、そして加重抜重に伴う上下移動、これらをリズミックに行うための舵取り(指揮者)として、ストック・ワークがある。
 これをいちはやく習得すれば、音楽家の場合、そこからの進歩が早いと思う。それは、「ターンにリズムをつける」ということであり、言葉を変えると「ターンを音楽的にする」ということでもあるからだ。その「音楽的にする」要素としての重力と遠心力のエネルギーの関わり合いを体で感じられれば、きっと音楽とスキーとの関係は運命的なものになるに違いない。同時に、それらの音楽家の音楽そのものも変わってくるであろう。
 いやあ、アキケンから教えてもらうことの多さにびっくりした。「マエストロ、私をスキーに連れてって」キャンプをはじめとした僕とスキーとの関係にも、なにか向こうの方に輝く世界が見えてきた。

写真 リフトに乗る秋本健さんが空を飛んでるようだ
空飛ぶニングルマーチ


バックカントリーとコブ
 さて、アキケンに教えた後は、お互い集合時間を決めて勝手に滑ることにした。川場スキー場には、コブ斜面が3つもあるが、僕は、それを睨みつつ、まず中上級コースの途中の林の中に入っていった。
 ここの一番の長所はね、コース外滑走の取り締まりがゆるく、林の中や新雪の中が自由に滑れることにある。ニセコなどの北海道のスキー場では、結構自由なのだが、本州のスキー場では結構厳しくてね、なかなかこういうスキー場は少ないのだ。

 ということで、僕はバックカントリーの気分で木々の間に体を踊らせて入っていった。昔は、こんなこと怖くて出来なかったが、ニセコで伊藤俊介さんに教わってから、むしろ楽しくなった。
「木を見ちゃうと、木の方に行っちゃうから、木に関係なく自分でラインを決めて、そこだけを見てなぞるように行くのです」
 特に誰も通ったことのない処女雪に、
「うおおおおお!」
と征服欲をもって踏み込んでいき、後に出来たオレのシュプールを眺めるのさ。あ、なんかヤらしい・・・。

 それからいよいよコブ斜面に入っていった。実は、今シーズンは、しっかりしたコブに入るのは初めて。年末まで雪がなかったからね。整地でさえブッシュが顔を出していたくらいだもの、それを削り取って作るコブなんてどこにもなかった。
 コブ斜面の上に立って見下ろす。怖い。何でだ?先シーズンの最後には、モーグル・コースを普通に下まで降りれたのに、なんだか、一体どこからどうやって滑ればいいんだか、分からなくなっている。

写真 川場スキー場のこぶ斜面
川場のコブ斜面


 恐る恐るコブに入る。腰が引けている。だめだ。こんなことでは・・・・。もしかして、整地ばかり滑っていたので、転ぶことを恐れている自分がいない?こんなことを自問自答していた末に、
「ええい、面倒くさい!ようし、転ぼうと思ってコブに入るぞ!どうだ、ざまあみろ!」
と体をくねらせながらコブに突入。一度目は見事にハジかれて転倒。しかし、転んでからは恐怖心が消えた。今までカッコきってた自分が恥ずかしい。捨て身になったら自由になった。二度目は転ばなかったが、外向傾が足らずに、次のコブに行けずに飛び出した。三度目は外向傾が出来たが、吸収動作が足りずに、やはり飛び出した。

 四度目にコブの出口で吸収動作をやったら、何の苦もなく次のコブに飛び込んで行けた。外向傾をきつくしていると、切り替えでバネが戻るみたいになるので、楽に次のターンに入っていける。コブの低いところで足を伸ばす。出口で体をお団子のようにかがめる。それの繰り返し。なあんだ、なんてことないじゃないか。
 このままずっと下まで行けば行けるんだけど、フウフウ・・・久し振りのコブはやっぱ疲れるなあ。それに夏にもっと外向傾のための横の屈伸運動をしておけばよかった。腸がねじれるよう!

 今日持ってきた板は、モーグル専用の244。この板で整地のスピード値を上げてみる。以前、角皆君のところで試乗した時には、あんまりスピードの出ない板だなあと思ったものだったが、要はテクニックだね。カーヴィングがない分だけ、両板をそろえて縦長のSで滑ったら、結構スピード出るじゃないか。しかも安定感もある。
 みんな経済効果をねらってカーヴィング、カーヴィングって言っているけれど、こういうフラットな板で、ニャロウ・スタンスで、円周も自分で決めながら滑るテクニックを見つめる事って必要じゃないか。特にコブとか不整地を滑る人はね。

 お昼はインド料理屋でカレーとタンドリーチキンとナン。それから3時半くらいまで滑って、アキケンの車で帰途につく。実に楽しく有意義な一日でした。

キャンプの内容を試行錯誤する
 あれからずっと、キャンプのメニューについて考えている。もともとは、東京バロック・スコラーズのメンバーに、練習の時に、
「バッハはコブだ!」
と言っていたのが、キャンプの始まりなのだが、実際にキャンプをやってみると、コブまで行ける人はごくわずか。だから、コブを目当てに来た人は、
「話が違うじゃないか」
と、言われそうだったが、さいわい角皆君をはじめとするインストラクターがみんな優秀だったので、そういう苦情は来なかった。

 だが、その一方で、「音楽に携わる人のためのキャンプ」と歌っているからには、どのレベルの参加者にも、「音楽的アプローチ」をするための、主催者側からの知恵というのは、今後このキャンプを続けていくためには必要だ。音楽家が、
「自分の音楽のために、このキャンプに参加したのは有意義でした!」
と、もっともっと思って欲しいから。
 そのひとつの方法論として、先ほど言ったように、ストックワークなどによってターンに「音楽的リズム」をつけるドリルを通して、音楽とフレージングとを結びつけていくことは、いずれにしても取り入れた方がいいな。

これからキャンプに向かって、角皆君たちといろいろ相談していこう。




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© HIROFUMI MISAWA