高松に行ってきました

ドイツ・レクィエムCDチャリティ販売
■妻は震災後、カトリック立川教会で被災者を応援する会を立ち上げ、僕がイタリアにいる間に、石巻の被災地まで車で救援物資を運びながら行ってきた。その時に、彼女が強く感じたことがあったという。それは被災地の人達の心の変化だ。
■恐らく当初は、命さえあればもう何もいらないという心境だっただろう。でも、時が経ってくると、人間として生きるために“何かを始めたい”という欲求が芽生えてくるものだ。妻は、特に女性達に注目していた。すると彼女達の想いが理解出来た。女性達は、何でもよかったが、何かをしたがっていた。何か人の役に立ちたいと思っていた。勿論、それでお金が稼げて、自分たちで自活できるようになれば言うことないが、最初はとてもそんなこと言える身分ではないと思っていた。

■それを聞いて僕は思った。人間って本当に社会的な生き物なんだな・・・と。ここが動物と決定的に違うところなのだ。被災地で三度の食事が配給されて食うに困らないのは、動物だったらこのままずっと続いてもいい状態だろうが、人間というのはそんな簡単ではないのだ。人間は、社会を形成し、その中で人の役に立つ事を行うことによって、はじめて生き甲斐や幸福感を感じる存在なのだから、このままでは閉塞感は永久になくならないのである。

■妻は、南浜町に住んでいて家が流されてしまったひとりの女性と接触した。彼女はヘルパーだったが、面倒見ていたお年寄りはみんな亡くなり、事業所の職員達も亡くなって職を完全に失ってしまった。
■彼女はヘルパーの仕事の合間に和紙でいろんな小物を作っていて、何か機会があるとその小物を商品として出していた。彼女は訴えていた。ヘルパーが出来ないならば、とりあえずこうした小物でも作れれば・・・・そして、それを人の手に渡るようにしてもらって喜んでもらえたら・・・と。
■妻は彼女から製品を見せてもらったが、これを教会のバザーに出したり、知り合いのお店に置いてもらうことは出来るなと考えた。

■ただひとつだけ問題がある。被災地には材料となる物は何もないから、彼女の思いを遂げるためには、こちらから材料を送らなければならないのだ。実際、被災地には、こうした気持ちを持っている人達は沢山いて、彼女は、道筋が出来たなら仲間を増やしてグループにすることはいくらでも出来ると言っているが、こちらサイドでは、現在のところ販売の可能性もまだ手探りだから、うっかり手を広げるわけにはいかない。まずは彼女ひとりの商品を扱うことから慎重に始めなければ。でも、とにかく第一歩は踏み出さないといけない。

■さて、やっと本題です。僕もたいしたことは出来ないのだが、手元に2005年に東京交響楽団と東響コーラスとで行った「ドイツ・レクィエム」のCDがまだ沢山ある。これをチャリティで販売して、とりあえず材料費として使ってもらおうと思うのだ。ブラームス作曲の「ドイツ・レクィエム」は、亡くなった者を弔う曲ではなく、残された者の心を慰める曲なので、内容的にもふさわしい。
■これまで定価2500円に送料を乗せて販売していたけれど、送料込みで2500円で売ることにしました。この利益分で材料を仕入れて石巻に送ります。すでに僕のCDを持っている人でも、また何枚でも買ってみんなにあげていただけませんか?この時だからこそ、一人でも多くの人に癒し系である「ドイツ・レクィエム」を聴いて欲しいという想いもあります。

高松に行ってきました!
■今年の新国立劇場のこどもオペラ「パルジファルとふしぎな聖杯」は、新国立劇場で公演した後、7月31日にサンポートホール高松、8月6日に兵庫県立芸術文化センターで公演をする。これまで、こどもオペラでは旅公演の話が出ては消えていたが、初めて実現するので嬉しくて仕方がない。
■これらの旅公演が当初から決まっていたので、演出家の三浦安浩(みうら やすひろ)さんをはじめとして舞台美術家の鈴木俊朗(すずき としろう)さん達は、どの劇場にも持って行けることを想定して舞台を設計した。これで日本全国どこででも公演が出来るのです。
■高松のサンポートホールはとても意欲的で、子供達へのPRも兼ねてワークショップを実施したいという意向を示していた。そこで僕たちは、7月3日日曜日に高松サンポートホールを訪れた。朝、羽田空港を発って現地入りをし、リハーサルをしてから14:00と16:00の2回にわたって約1時間のワークショップを行い、その日のうちにまた飛行機で帰ってくる。同行したのは僕の他にクリングゾール役の峰茂樹(みね しげき)さん、マグダレーナ役の國光ともこさん、演出家の三浦安浩(みうら やすひろ)さん、そしてピアニストとして娘の志保、それからマネージャーが2人。

会場はサンポートホールのリハーサル室。一度のワークショップの定員が50名ということで申し込みを受け付けていたが、大きなリハーサル室なのでたっぷりスペースがある。入った瞬間、誰ともなく、
「うっ、寒!」
と声を上げる。主催者が驚いて走ってくる。
「さ、寒すぎますか?温度を上げましょうか?」
「い、いや、そういうことではなくて、最近の東京は何処へ行っても節電モードだから、こういう温度設定に慣れていないんですよ。動き始めると暑くなってくるのでそのままでいいです」
峰さんが訊く。
「こちらでは節電とか言われていないですかね?」
「言ってないですね。四国では電気がむしろ余っているんですよ」
「う、うらやましい!」
「東京にあげられればいいんですがね。周波数が違いますからね」
あららら。そうか、そういう問題もあるのだ。そういえば、なんで同じ日本なのに西と東で電気の周波数が違うまま今日まで来てしまったかね。余っている四国の電気。足らない東京の電気。供給できない事情。うーん・・・・・しばし悩んでしまった。

■リハーサルが終わって本番までの間に、同じ建物内にあるうどん屋へみんなで行く。本当は街中にある老舗の店とか、郊外の田園風景の中にぽつんと建つ素朴なうどん屋に行きたいところだが、とてもそんな余裕はない。でも、やはり讃岐うどんの本場だけのことはある。
「うどんはどこもおいしいですよ。まずいと地元民のチェックが厳しいですからね。すぐつぶれます」
とタクシーの運転手が言う通り、一口食べるなり、一同から、
「うーん、このコシ!おいしーい!」
という言葉が出るくらい、本場の味は違う。
 ここの冷房も半袖では寒いくらい。
「東京では、今頃自然にジワーッと汗が出てきてしまうよね」
と誰かが言う。

■さて、時間になって子供達やお母さん達が集まってきた。若いお父さんもいる。クリングゾール役の峰さんは、出てきただけで存在感抜群で、子供達の心を掴んでしまう。それから王家の姫であるマグダレーナ役の國光さんがビロードのようななめらかな声でアリアを歌うと、子供達は夢心地のような表情をした。それからグレイル・ダンス(聖杯踊り)の講習に入って、子供達やお母さん達もみんな立ってダンスをする。
■今回は、振り付け師の伊藤範子(いとう のりこ)さんは同行していないので、ダンス指導はなんと僕が行った。國光さんや峰さんに見本として踊ってもらいながら、
「はい、ここで聖杯の形を作って、はい、ここでは騎士になったつもりでカッコ良く!」
などと適当なことを言いながら指導したら、あららら、子供達はなんと覚えるのが速いんだろう。あっという間に出来るようになっちゃった。僕たち、これを覚えるのに一体何日かかったんだ?

■ワークショップは、やっている我々もとても楽しくて、子供達から沢山エネルギーをもらった。1時間があっという間に過ぎてしまったが、さすがに2回やると終わってから疲れがどっと出ましたな。その後、またタクシーに乗って空港まで来て、その日のうちに帰るのだもの、いやあ、なかなかの強行軍ですわ。
■僕たちは、空港で買った巻き寿司を機内に持ち込み、席が近い僕と志保、峰さんと國光さんの4人で、機内でプチ打ち上げ。峰さんが強く奨めるので、僕たちはANA内で販売している川越名物小江戸ビールなるものを注文し、これで乾杯。
■そしたら、小江戸ビールを4ついっぺんに注文したことにスチュワーデスが驚いて、峰さんに話しかけてきた。
「ちょうど4つしかなくて、あたしたちドキドキしてしまいました」
そのまま峰さんは若くて美人なスチュワーデスと話し込み、すっかり仲良くなってしまった。降りる時も話し込んでいるので、そのまま口説いてしまうのでないかと思われたが、愛妻が空港まで迎えに来てくれているということで、おとなしく帰って行った。
■小江戸ビールは、サツマイモが入っていることでビールのカテゴリーには入れてもらえず、発泡酒に分類されているが、色といい味といい、ドイツのDunkles Bier琥珀色のビールに似ていて、なかなかの美味。全日空ANAが力を入れている商品らしい。ちなみに機内でツマミ付きで500円。

■志保と二人で家に帰ってきて、買ったばかりの「龍馬」という焼酎を飲んでそのままバタン・キュー!すっごく疲れていたので朝までぐっすりと寝ました。でも、次の日にはまたこうして元気になるのだから、まだ老化現象は進んではいないようです。


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