Bayreuth 1999

三澤洋史 

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7月5日(月)
 朝の練習は、合唱練習場にパパーノとソリスト達が来て「ローエングリン」の音楽稽古だった。合唱練習場はよく響くので、第一幕の終わりのソリスト全員とコーラスによるコンチェルタンテなどでは音だらけになる。なんてみんなでかい声なんだ!
 エルザを歌うメラニー・ディーナーは、まっすぐに通る美しいリリック・ソプラノだ。若いので歌に味わいがあるとかいうのではないけれど、清潔感があってとても好印象。ローエングリンのヴァーゲンフューラーは、昨年は「さまよえるオランダ人」でエーリックを歌っていた。大抜擢だ。よく歌っているのだがちょっと頑張りすぎかなあ。この大役をささえるにはある種の余裕が必要と思われる。なんてったって聖杯の騎士だからね。オルトルートを歌っているのは、かつて日生劇場でイゾルデを歌ったガブリエル・シュナウトだ。僕の事も覚えていてくれた。昔よりもずっとドラマチックな声になって凄まじい歌唱を繰り広げている。乱暴とかいう意味ではない。圧倒的なオルトルートだ。フリードリヒ・フォン・テルラムントのラフォンはフランス人だ。声は大きいけれど、歌唱がやや散漫。それに言葉がはっきりしない。キャラクターとしてはぴったりだけどね。ハインリヒ王のトムリンソンはピッとしまったいい声だ。パワーもあって王様っぽい。
 全体としてとてもまとまったいいチームだと思う。少なくても音楽的には公演は大成功だろう。パパーノも若いのによく頑張っている。決して無理強いはしないが、それでも音楽は彼のペースできちんと流れている。
 今日はその後一日中「ローエングリン」の立ち稽古だった。



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