更新の遅延(8月2日)

三澤洋史 

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更新の遅延(8月2日)
 ミュージカル「ナディーヌ」世界初演を果たした。沢山の人が感動してくれた。泣いてくれ た。僕も振りながら泣いた。自分が作った話なのに、純粋な二人がかわいそうでたまらなかった。
更新は日曜日なのに、昨晩は打ち上げで酔っぱらってそのまま寝てしまった。更新を待っていたみなさんごめんなさい!

 いやあ、本当に大変だった。自分がまだ元気でいるのが不思議なくらいだ。でも、ここ一週間くらいの自分は何かに憑かれているようだった。毎日くたくたになってベッドに転がり込むとそのまま寝入ってしまい、また次の朝が来る。でも朝になると前の日の疲れは消えている。頭は冴え、インスピレーションが次々と降りてくる。
合唱団の歌や動き、パネル操作などが思うようにいかなくてイライラする。そんな時、頭の中に声が響く。
 「今怒ってはいけない。」
あるいは逆に、
 「ここで言わなければならない。」
みんなの気持ちはいつも紙一重だ。僕の一言でどちらの方向にも動く。盛り上がったり、逆にやる気を失ったりする。叱咤する時。激励する時。全てにタイミングがある。みんなの持てる力を最大に発揮させる為には、自分の感情や音楽的な才能だけで持っていこうと思ってもダメだ。

 インスピレーションが降りてくる時、僕は自分が、あるいは自分 のやっている事が天上界から祝福されているのを感じる。同時に僕は思う。「ナディーヌ」のテーマは、僕が「作り出した」ものではない。これは天上界の意志 であり、僕はそれを作品という形でこの世にもたらしただけだ。
 だからこれを作った僕自身も、この作品から沢山の事を教えられ、この作品によって清められ高められた。今でもこの作品は近寄りがたい気品をたたえて僕の前にたたずんでいる。

ピエール どこまでも澄み切った大気
木や花たちも空も微笑んでいる

ナディーヌ それは今この街が愛の息吹に包まれているから

ピエール 僕達の愛も
もっと大きな愛に包まれていたのか

ナディーヌ 魂は孤独なんかじゃないんだわ
全ての命は愛の中でつながっているのね

ピエール どうして今まで気がつかなかったんだろう
どうして敵と味方があるとか
奪い合おうとか人は思うのだろう

二人 愛とは無限に溢れ出てくるもの
この愛の中で初めて
生きとし生ける全ての命の尊さを知る

 こんな歌詞、僕の貧弱な頭が考え出せるはずないじゃないか!
 とにかくまだ「ナディーヌ」が心の中に響き回っている。でも今日はもう新国立 劇場に行って「ジークフリートの冒険」のオーケストラ練習をしてきたよ。もうまるで「ナディーヌ」公演なんかなかったかのように世の中が動いている。
「時には忘却こそ救い」というわけでもないだろうに・・・・。



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