イタリア紀行文 食事編

三澤洋史 

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太ったあ!
 やばい、やばい!本当にやばいのである。ここだけの話、イタリアへ行って帰ってきたら一挙に1.5kgも太ってしまったのである。たったの6日間くらいの間にだよ。
 今では娘達二人ともしっかりお酒も飲むので、昼間からワインを一本ずつ空けて、前菜から頼んだりするから、カロリー過多にならないわけがないのである。それを消費するためにいろんなところを見学してかなり歩いたが、期待したほど役に立たなかった。
 オリーブオイルは善玉コレステロールだとか、赤ワインのポリフェノールは体を活性化するとかいうが、こんなに摂取したらどう考えても体に良いわけない。やばい!どうしよう!誰か助けて!

モッツァレッラ
 ローマの空港からレオナルド・エクスプレスに乗ってテルミニ駅に着いた。お腹が空いたので駅の二階にあるセルフサービスのレストランで食事した。これがイタリアで最初の食事だったが、はっきり言って高いばかりでかなりまずかった。
 でもひとつだけ驚いたことがあった。サラダに入っていたモッツァレッラ・チーズがとろけるようにおいしかったのだ。モッツァレッラなんて、あまりキャラクターもないし、どうしてこんなものをみんな好んで食べるかよく分からなかったけれど、これで納得した。 牛乳の味が豊かに香っていて、モサモサしていなくてとってもクリーミー。これがイタリア最初の味の体験だった。

トリュフとルッコラ
 アッシジのあたりはウンブリア地方と呼ばれているが、ここはトリュフの産地。いろんな料理にトリュフが入っている。日本でもフランス料理などにトリュフが使われているけど、すでにいろんな味の中に混ざり合っているので、トリュフの本当の味というのがよく分からなかった。トリュフはキノコの一種で、かなり強烈な味がする。そのため使い方を気をつけないと、材料がトリュフの味に負けてしまう。
 アッシジでは、このトリュフをよくルッコラと混ぜて使っていた。たとえばお皿に焼いたパンを置き、その上にトリュフを塗る。そしてステーキを置き、それからルッコラをたっぷり置いて、さらにパルメザン・チーズのスライスをかける。これだけ。あとはほとんど味付けらしい味付けはない。でもこれが結構うまい。
 ピザでもスパゲティでも同じトリュフとルッコラ、あるいはパルメザンのコンビネーションが見られた。

ワイン
 イタリア旅行中、ワインはよく飲んだ。何故かイタリアで飲むと、お酒を飲んだという気があまりしないので、昼間から平気で飲んでいた。ウンブリアのワインはハーフ・ボディくらいで、あまりキャラクターは強くないのでどんどんいける。ハウス・ワインが二分の一リットルや四分の一リットルというデキャンタで頼めてめちゃめちゃ安いが、ボトルを取った方がうまい。日本ではボトルを頼むととても贅沢した気がする。でもこちらでは安いので日常的なんだよね。
 
赤ワインに飽きると白ワインを飲んだ。イタリアの白ワインは、全体的に味がシンプルでさっぱりしている。何処に行ってもその土地のお奨めワインを店員に聞いて頼むのが良い。ソレントのワインは、アッシジよりもストロングで濃厚な味がした。

01アッシジのピザとパスタ ピザ
 レストランやトラットリアではピザがないところが多いし、逆にピッツェリアでは、ピザ以外の料理にあまり気合いが入っていないので、四人もいると何を食べようか焦点を定めないといけない。ピザは、アッシジでもおいしかったが、なんといってもローマから南が素晴らしい。
 どうも日本のピザというのは、ありゃ全然違うね。いろいろトッピングしないと成立しないというんじゃピザではないよ。こちらでは、何も入っていないマルゲリータでも充実しているもの。
 一番違うのはチーズ。モッツァレッラをそのまま使っているので、チーズが溶けた跡が真っ白なんだ。それとトマトソースの味も違う。さらにピザ生地のおいしさといったら、これはもう口では説明できないね。
 驚くのは、ローマのテルミニ駅や空港などのファーストフードの店でさえ、生地は自分たちの店で作っているから、おざなりの味にはなっていないんだ。イタリアはピザの味には命賭けているのがひしひしと伝わってくるよ。02僕の食べたピザ

スープ
 スープは、高級そうなレストランではポタージュなどもあるが、一般的にはみんなミネストローネのような味。でも、どうも野菜スープとミネストローネの区別がつかない。ある店で両方頼んでみたら、ミネストローネの方にはパスタが入っていた。
「ああ、パスタが入っているのをミネストローネって言うんだ。」
と納得したが、他の店では入っていない。妻は、ミネストローネでは生野菜を使い、野菜スープでは乾燥野菜を使うと言っているが、それも定かではない。

 ナポリのサンタルチアでよく分からないまま頼んだものは変わっていた。スープはイタリア語でズッパzuppaというが、頼んだものはzuppina frutti di mare(海の幸のズッピーナ)というもの。これはあさりの酒蒸しとブイヤベースを足して二で割ったようなもの。中にはあさりとムール貝などの貝が入っていて、その底に少量のスープがある。これはスプーンで飲むほどではないが、パンを浸して食べるとなんともいえない味がするのだ。

 スープは、店によってそれぞれ味が全然違う。とても素朴な味からかなり手の込んだものまである。でもどれも例外なくおいしかった。


ハムの盛り合わせ前菜
 アッシジにいた時は、よくウンブリア風前菜と言われるものをとった。これは要するに生ハムや自家製サラミの組み合わせだ。イタリアの生ハムはおいしいね。
店の人はよく、
「四人いるんじゃ一人前では少ないから、二人前頼んで真ん中に置いたらどうですか?」
と聞いてきたけど、どうしてどうして、一人前で四人で充分。胃が小さい人なんかは、この前菜をパンと一緒に食べて、さらにグリーンサラダでも頼めばもう充分だよ。でも食い意地が張っている僕達は、この先にそれぞれ主菜を食べたんだ。やばいわけだよ。

03ナポリの前菜 ⇔ 04うーん、満足

海の幸盛り合わせ前菜
 この前菜が、ナポリ、ソレントに行くと海の幸前菜に変わった。これもかなりいける。ドイツ人などが絶対に食べないイカ、タコ、エビのマリネを中心に、フライにした白身の魚などがたっぷり乗っている。これも四人で一人前で充分。それにしても、これを一人で食べてからスープやパスタに進み、さらに主菜を食べてデザートまで取るイタリア人って、一体どんな胃袋しているんだ!
 タコはどこで食べても、日本のよりやや臭い。最初の店で、ここは新鮮じゃないからかなと思ったが、どこでも同じような味。種類が違うのかな?

お魚には醤油?
 前菜は冷たい料理だが、これが温かい料理になると値段がぐっと上がる。ソレントで食べた焼き魚盛り合わせ、日本円にして三千円くらい。日本の魚のように焦げ目は入っていないので、蒸し焼きのようにしたのだろう。その上にオリーブ油がかかっているのだ。このオリーブ油、邪魔なんだけどな。
 鮫かカジキのような魚がおいしかった。あと太刀魚がおいしかったのだが、白身の部分をひらいてしまたら中身の味が薄い。醤油を持ってくればよかったと後悔した。やっぱり魚は醤油さ!あれっ?

パスタ
 パスタは勿論どこもおいしかったが、最近は日本でも結構おいしいものが食べられるので、とりわけ特別な感じはしなかった。でも生麺を使った太麺のものは、やはりここでしか食べられないモチモチ感がある。05ローマのフェットチーネ
 スパゲティ・ボンゴレは日本とほとんど同じ。でもローマで食べたカルボナーラは全然違った。日本では生卵をあえてスパゲティの熱で半生の状態で食べるが、こちらのはチーズの味が主流でそれに薫製したベーコンの香りが混じり合っている。もしかしたら、たまたまここだけかもしれないが・・・・。
 ペンネやマカロニのようなものは、超アルデンテ、ってゆーか、時々芯が残っている。

リゾット
 イタ飯にうんざりした時、日本人の口に合って便利なのはリゾットだ。でも、これも種類を選ばないとチーズ味が濃かったり、クリーム味がエグかったりする。店員がかけてしまうまえに、要りませんとすばやく言わないと、パルメザンを死ぬほどかけられてしまったりもするので要注意。

ジェラート
 イタリアのジェラートは本当においしい。特にその店で作っている自家製のジェラートの味は、どこも絶品。いつでも食べたいイタリアン・ジェラート!

三澤家のベスト・チョイス
長女、志保
ミネストローネ

次女、杏奈
ルッコラと生ハムのピザ

妻、千春
トリュフとルッコラのステーキ

そして僕、洋史
ローマ、スペイン階段近くのジェラート、ココナッツ味

 食べ物の写真があまりないのは、食べ物が来た途端に、
「うわあー!」
と驚いてそのまま食べてしまい、いつも写真を撮るのを忘れてしまうからだ。後でハッと気がついてあわてて撮るのだが、すでに食べ終わり寸前。魚料理などは悲惨なもので、骨や殻の残骸が山のように残っているのみ。とてもここに掲載できる状態ではない。

 それほど三澤家の住民は食い意地が張っている。僕だけでなく、全員ズボンやスカートがきつくなって青くなっている。




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