夏休み省エネモードに突入

三澤洋史 

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夏休み省エネモードに突入
 まことに勝手ながら、今週号からこの「今日この頃」は、しばらく「夏休み省エネモード」に入ります。といっても書くのを止めるのではなく、いつもよりも短くなるという意味です。常日頃より、
「まったく長げーな。読む気しねえじゃねえか」
と思っている読者の方々には朗報というわけです。

 理由は、新国立劇場の今シーズンのオペラ公演が、今週始まる高校生の為のオペラ鑑賞教室「愛の妙薬」を最後に終了し、10月3日に、来シーズンの新制作「リゴレット」初日の幕が開くまで何もないので、その間に、普段出来ないまとまった書き物や仕事をしたいからだ。
 7月後半は、もしかしたらバイロイトに行こうかなとか考えていて、コンサートの仕事などを断ってまるまる空けておいた。本当はこんな時こそ山にこもって、「パルジファル」のスコアに集中して取り組んだり、何か創作出来れば言うことないんだけど、日本に居るとなると、なかなかそうもいきませんなあ。貧乏性ですなあ。気が付いたら週末にちょこちょこ仕事が入ってしまっている・・・・。
 さらに、いろいろこまごました仕事に追われている。たとえば、四国地方の民謡を混声合唱用にアレンジしたものを、7月中に5曲仕上げなければならなかったり、原稿の締め切りが二つほど近づいていたり、8月の名古屋ワーグナー協会例会の講演の内容を考えたり、9月の京都ヴェルディ協会の「ワーグナーとヴェルディ」講演の内容を考えはじめたり・・・・おおっ、バカンスどころではないやんけ!

 そんな風だから、まごまごしていると普段と変わらないまま毎日がなんとなく過ぎてしまう。海外に行こうにも週末に仕事が入っているんじゃ、充分な滞在日数が確保出来ない。そこで、いろいろ可能性を探っていた。トレッキング、テントを張ってキャンプ、自転車ツアーetc...。あとね、妻に却下されたいくつかのクレイジーなアイデアもあった。たとえば、乗馬を覚えること、サーフィンを覚えること、ヨットやウインド・サーフィンや・・・みんな、お金ばっかりかかって、こんな初老のおっさんがいきなり初心者から始めても仕方がないものばかり。うーん・・・なにかこう、これだ!ってものないかな?
 そしたら、先日、元バイロイト大学教授ディーター・クラインに逢った時、彼が力説していた。
「一生に一度は体験しておくべきもの。それは石垣島の海に潜って魚たちを見ることだ」
それで、僕達夫婦は石垣島に行く事に決めた。考えて見ると、僕はまだ沖縄本土にも行ったことない。鹿児島がこれまでで行った最南端。

 さいわい、石垣島には知り合いがいる。東京バロック・スコラーズの団員であったHさんは、3.11の震災の後、放射能の汚染を避けて石垣島に移り住んだ。特許申請の仕事をしている彼は、沖縄本土を含むその地域で仕事の需要があることが分かり、現在に至るまでそこに住んでいるのだ。よく食えているよね。
 Hさんは、先日のモテットの演奏会には、わざわざ石垣島から駆けつけて激励してくださり、さらにモテット録音の時には、なんと沢山のパイナップルを差し入れとして送ってくれたのだ。
 そのHさんと、今メールのやりとりをしている。この時期の石垣島の紫外線はハンパじゃないそうで、ほとんど「よりによってこんな時期に来るなんて馬鹿じゃね?」的な感じだ。やさしいHさんはけっしてそんな言い方はしませんが。
 妻は潜ることにはほとんど関心を示さないが、ディーターの忠告には興味を持ったようで、シュノーケル体験ツアーにだけは参加する予定。現地ではレンタカーを借りるので、僕はダイビングを体験し、彼女は車で島巡りとなるのだろう。

 まあ、僕としては、今年の夏は、クロールがうまくなって「パルジファル」が成功したらもう満足だ。それに、出来れば、この「今日この頃省エネモード」の間に何かが生まれたらいいな。石垣島が僕にインスピレーションを与えてくれたらなお良い!



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