札幌での日々

三澤洋史 

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「マエストロ、私をスキーに連れてって2021」キャンプ申し込み開始
 お待たせしました!この記事の下に掲げるメール・アドレスの発表をもって、マエストロ、私をスキーに連れてって2021」のキャンプの正式受付開始とします。日程は2021年2月27日土曜日と28日日曜日。それと、2月26日金曜日のプレ・キャンプも含みます。具体的な事柄は、キャンプ募集要項をご覧下さい。
 講演会会場となるペンション・カーサビアンカに宿泊希望の方は、今回に限り、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、定員20名に絞りますので、満室になる前に、なるべく早くお申し込み下さい。別の宿泊施設にご希望の方は、急がなくて結構ですが、講師派遣などの準備の都合があるので、遅くともキャンプ半月前まではお申し込み下さい。

 申し込み方法は、募集要項に書いてある通り、お名前、連絡先などをお書きの上、メールのみで受け付けます。
では、メールアドレスを発表します。

maestro.takemeskiing.special@gmail.com

真生会館「音楽と祈り」12月は「この素晴らしき世界」
 真生会館の講座は、実際に講座に出席してもらった人が一番楽しく味わえるのはもちろんだけれど、内容に関しては、毎回、かなりこの「今日この頃」で事前にネタバレしているので、講座に出なくてもいいくらいです。今週の講座もしっかりネタバレします。

 12月講座のタイトルは「この素晴らしき世界」。最初に名トランペッターのサッチモことルイ・アームストロングの歌うWhat a wunderful worldを聴かせる。
「このコロナ禍の中で、なにが素晴らしき世界だ」
と皆さんが思うのを承知で、あえてこのタイトルを掲げた。
 というのは、この曲の作詞作曲をした音楽プロデューサーのボブ・シールは、ベトナム戦争を嘆き、平和な世界を夢見てこの曲を書いたといういきさつがあるからだ。
またサッチモは、亡くなる1年前の1970年にこの曲を新しく録音し直しているのだが、その際に、イントロの中で自分の言葉でスピーチを述べている。
それはこういう内容である。

最近若いやつがよく言ってくるんだ。
「この素晴らしき世界って、どういう意味なんですか?
世界中で戦争が行われてますよね。それも素晴らしいっていうんですか?
飢餓や環境汚染の問題もありますよね。
全然素晴らしくなんかないですよね」
落ち着いて、じいさんの言うことを聞いてくれ。
俺には世界がそんなに悪いって思えない。人間が世界にしていることが悪いんだ。
俺が言いたいのは、世界にもう少しチャンスを与えれば、みんなその素晴らしさが分かるってことさ。
愛だよ、愛。それが秘訣なんだよ。
もし、もっとみんなが、お互い愛し合ったら、沢山の問題なんて解決される。
そして世界は、とびきり面白くなる。
だから、このおいぼれは、言い続けるのさ
 分かりますか?だから僕は、あえてこの曲を、コロナ禍におけるクリスマスが近づいているからこそ取り上げるのである。

 それから、カトリックの講座ではあるけれど、「引き寄せの法則」について語ってみる。一例をあげると、何かを神様に願う時に、「不足を感じながら願わない方がいい」という話をする。何故なら、そうすると、あなたは常に「わたしは不足を感じて不満だ」という波動を自ら出し続けることになるので、「その不足の状態」そのものをあなたは永遠に引き寄せてしまうから。
 その意味でも、今こうした世界の中だからこそ、What a wonderful worldのような歌が必要なのだ。あなたはまず無条件に、今の境遇。たとえば自分の配偶者や子供や親や、仕事場や、その他、自分を取り巻く様々な環境、そして大自然に対して感謝するべきだ。何故なら、それらは、全てあなたが自分が選び、引き寄せたシチュエーションだから。それに感謝するだけ、それだけで、まずあなたの人生は好転することを、僕は約束しよう。
 それからあなたが、その中で、人からの評価を気にしているという理由で行っているものを、少しふるいにかけてみるといい・・・という風に、順番に分かりやすく説明しようと思っている。
 断っておくが、これは、決してイエスの教えとは矛盾しない。それどころか、イエスが言っていた、「右の頬を打たれたら、左の頬を・・・」ということこそ、「引き寄せの法則」そのものなのである。
 たとえどんな否定的な状況の中においても、あなたは肯定的な想いを持ち、肯定的な行動をするべきなのだ。その与えっきりの生き方こそがあなたをしあわせにするのである。そのためには、イエスの究極的な「お人好し人生」そのものを手本にすべきなのだ。
イエスは、決して、
「私のように十字架に架かって不幸になりなさい」
などとは言っていない。むしろ彼は、最終的には、すべての人間が、人間である当然のしあわせを手に入れるための方法を説いているのである。

 さて、その後で、ジョン・レノンのImagineを聴く。今月は、ハッピー・ソングのダメ押しである。Imagineという曲は、未だに、ビートルズの全ての曲の中で人気ナンバー・ワンという地位を明け渡していない。本当のことをいえばビートルズではないんだけどね。ジョン・レノン単体です。でも、この曲がずっと愛されていること自体が、「人類も捨てたもんじゃないな」と思って、僕は嬉しくなるね。

 講座の後半は、名曲で読み解くイエスの降誕の物語。ヘンデル作曲「メサイア」と、バッハ作曲「クリスマス・オラトリオ」を聴きながら、ルカによる福音書第2章と、マタイによる福音書第2章を味わう。

「メサイア」の降誕の場面は短くて簡素だが、心にスーッと入ってくるのは、さすがヘンデルだ。

 その一方で、バッハの「クリスマス・オラトリオ」は、そもそもクリスマスにだけ焦点を絞って、第6部に渡って書かれた大作だから、福音書のレシタティーヴォだけでなく、各所にコラールや美しい重唱やアリアなどを散りばめている。それのどれも聴かせるわけにはいかないが、福音史家が語る場面と直結したコラールなどの部分は一緒に聴こうと思っている。

 いずれにしても、今回の講座では、みなさんにしあわせな気持ちで帰っていただきたい。だって、せっかくのクリスマスだもの!  


札幌での日々
 喜歌劇「こうもり」の札幌公演の第1日目が終わった。毎回言うけど、東京でも札幌でも、コロナ感染最多人数更新というニュースが連日のように飛び交っている中、稽古から始まり、東京公演も札幌公演も全員元気で迎えられたって、なんとも奇蹟のような出来事ではないですか。

 その背景では、劇場側の努力と僕たちの用心も勿論ある。劇場からは、毎日の昼食と夕食がお弁当で配られている。そして、
「なるべく外出は自粛してください」
というお達しが出されている。
 しかし・・・毎食お弁当だぜ・・・とはいえ、それを断って外に食べに行くとお金がかかるだろう。劇場も考えたね。僕も、サッポロ・クラシックを何缶も、それからウィスキーとソーダを買い込んで、すっかり部屋飲み生活だ。これは、確かに感染防止には最適だね。

 12月10日木曜日。15時発のANAで羽田を飛び立ち、その日は予定なし。それなので、19時に配られたお弁当はとっておいて、近くの中央区公的温水プールに徒歩で行く。仕事がなかった夏の間は毎日泳いでいたので、最近は体がなまってきているのではないかと心配。やっぱりプールは気持ち良い。帰ってきてから、お弁当を食べ、サッポロ・クラシックを飲み、ウイスキーのソーダ割りを飲む。
 12月11日金曜日。合唱団は感染防止のため、13時からのオケ合わせには参加しないことになった。札幌文化芸術劇場Hitaruの舞台上で行う場当たり稽古は16時開始。それなので、僕は午前中、テイネ・スキー場にひとりで行った・板はあらかじめ送ってあり、ブーツなどはスーツケースで運んだ。
 札幌は、この時期にしては予想に反して暖かく、道路も凍結していない。数年前に文化庁のスクール・コンサートで同じ時期に来た時には、札幌駅からサッポロ・ビール園までの道のりがツルツル滑って、何度も転びそうになったというのに・・・。
 札幌駅から手稲駅まではJRで約20分。そこからバスに乗って、やっぱり約20分でテイネ・ハイランドに着いた。下部のオリンピアは、雪不足のため、まだクローズしていて、上部のハイランドのみの営業。しかもリフトで上がった山頂付近の、シティビュークルーズとシティビューパノラマという二つのコースのみ滑走可。
 ちぇっ、つまんねえな、と思ったけれど、滑り出したら、今シーズンの初スキーを北海道で行えたことを神様に感謝したね。雪の量は少ないが、さすが北海道。雪質は最高!雪が降らないだけで、お山の気温は充分寒いのだ。それに限定された最上部だけとはいえ、コースの長さは充分ある。
 シティビューパノラマは、途中で「札幌オリンピック女子大回転コース」とつながっていて、急なコブ斜面がある。ここは楽しいのだが、積雪がないためブッシュ(柴)が出放題。そのブッシュに板が引っ掛かって2度ほど転んだ。でも構わず滑っていたら、板がだいぶ傷みました。とほほ・・・・。

 12月12日土曜日。午前中、プールに行こうか迷ったけれど、結局、映画を見に行った。通常だとこの時期はひとつくらいクリスマス用の映画がかかっているものだけれど、「鬼滅の刃」ばっかり宣伝していて、観たいものがない。
 結局、何の予備知識もなく、「パリのどこかで、あなたと」というフランス映画を観た。



ひとつは、パリという街が大好きなので、パリの街を映像で観たかったことと、もうひとつは、耳に心地良いフランス語を聴きたかったから。
 ということで、内容は全然期待していなかったけれど、予想に反してかなり感動した。ただ、フランス映画というのは、大通りを敷かないで、狭い路地だけで映画を作る感じで、日常生活にありがちな細かいディテールを積み重ねて、映画を作り上げていく。たとえば、パリの至る所にあるエスニック食料品店の親父が、とっても親切で、あるものを買おうとすると、
「あ、それなら、こっちの方がおいしいよ」
と、いらぬアドバイスをくれたり・・・そんなことが結構「ああ、ありがち!」と共感を呼んだりする。
 ストーリー的には、つまりは大人の愛の物語。癌の免疫治療の研究者として働くキャリアウーマンのメラニーは、元恋人との別離の痛みを引きずりながら過眠症となる。また、倉庫で働くレミーは、同僚が解雇され自分だけ昇進した罪悪感にさいなまされ不眠症となる。ふたりはそれぞれセラピーに通い始める。
 ユニークなのは、このふたり、至る所でニアミスを繰り返しているのに、なかなか巡り会わないんだ。観ている方がじれったくなるくらい。で、最後にやっと出遭ったなと思ったら、もうエンディング・テーマが流れているんだ。

 つまり、物語はそこで終わりなんだけど、観客の想像力をもの凄く膨らませるという意味でこの作品はユニークなんだ。たとえば、レミーが飼い始めた子猫が逃げて、それをたまたまメラニーが拾っていたりしている。つまり、今後もしレミーがメラニーのところに行ったら、そこに子猫を発見して、
「えっ?なんだ、この子、君のところにいたの?」
という風に、実は至るところで、シンクロニシティの罠が仕掛けられていたことに気づき、二人はますます運命的なものを感じて、出遭うべくして出遭ったことを感じ、愛を深めて行くに違いないと思わせるのだ。つまりワクワクが映画を見終わった後にいつまでも余韻を引いている。
 「人生に偶然はない」という真実を、こんなところでまたもや感じさせられたよ。僕は、恐らくこの映画を観るべくして観たんだ。まったく、バシャールに出遭ってからというもの、至る所で、シンクロニシティが僕を追いかけてくるようだ。

 さて、それから札幌文化芸術劇場に向かい、オケ付き舞台稽古。何度も本番をこなしているので、問題ないと思っていたけれど、オケが札幌交響楽団に変わったので、ちょっとしたニュアンスが違う。指揮者のクリストファー・フランクリンはいらだっているし、合唱団も微妙にズレて、みんなとまどっていたので、僕は、合唱団員達に言った。
「ま、今日はゲーム感覚でいきましょう」
 でも、札幌交響楽団は、序曲とかチャルダッシュ、ポルカなどの器楽曲は、とっても上手。ひとりひとりのプレイヤーのクォリティが高いし、アンサンブル能力はある。ただオペラに慣れていないだけ。だから、そんなに責めないでもいい。

 12月13日日曜日。午前中は、赤レンガ庁舎近くの島村楽器のスタジオで、指揮のレッスンをしていた。Zoomレッスンの受講者のひとりは札幌在住。そこで、せっかく僕も札幌に滞在しているから、Zoomではなく対面式レッスンをしようか、ということになって、ピアニストを伴ってのレッスン。
 これまでZoomレッスンでも結構イケるじゃん、と思っていたけれど、やっぱりリアル・レッスンを体験しちゃうと、全然違うね。
 対面レッスンでは、
「じゃあ、僕が振ってみるね」
と、同じピアニストを使って見本を示すことができるのだ。これがZoomでは絶対にできない。時差が生まれてしまうからね。ほぼ2時間たっぷりレッスンをした後、僕は彼らと別れ、劇場に向かった。

 この項目の最初で語った通り、14時から初日の本番。座席はソーシャルディスタンスで半分しか売っていない。でも、お客さんがとても喜んでくれているのは肌で感じられる。
その観客の中に、北海道における合唱界の重鎮である、合唱指揮者の長内勲(おさない いさお)さんもいた。
 長内さんとは、お互い朝日新聞主催の合唱コンクール全国大会の審査員として何度かお会いしているが、一番印象深いのは、六本木男声合唱団の北海道公演を指揮した時に、出来たばかりのススキーノという、やっぱり六本木合唱団と同じように政界財界の人たちで組織された(怪しい)合唱団が共演して、その指導を長内さんがされていたのだ。
 その長内さんと「こうもり」公演後お会いした。本来ならば、一緒に飲みに繰り出すところだが、今回は僕も劇場から自粛するように言われていて、7時に夕食のお弁当を配る時に行かなければならないので、お茶だけという感じでお店に入ったら、そこにビールが置いてあったため、ふたりでビールを飲みながらくつろいで楽しい語らいをした。だからお弁当を受け取った時には、すでに結構酔っ払っていた。

 12月14日月曜日。今日はオフ。朝から札幌国際スキー場に行く。大通り停車場からバスで一本。約1時間半でスキー場に着く。ここはまさにパラダイス。零下10度くらいなので、極上のパウダー・スノウ。ただし、ネック・ウォーマーやインナーの手袋が必須だ。中途半端なウエアーで行くと、とんでもない目に遭うぜ。
 なんといってもゲレンデが長い。変化に富んでいるという点では、テイネ・スキー場の方が上かもしれないが、それは北カベのようなゲレンデがオープンしたらの話なので、現時点での札幌近辺で、国際を超えるスキー場はない。

写真 札幌国際ダウンヒルコース
札幌国際ダウンヒルコース

 写真は、上級のダウンヒル・コース。コブが出来ている上に新雪が降り積もって、ちょっと難しいのだが、ここを何度も滑って堪能した。このスキー場は、初心者用、中級者用、上級者用と、コンセプトがはっきりしていて、一応全てのコースを滑ってみたが、それぞれのレベル毎にまとまっていてコースとしてブレないのがいい。それぞれのレベルの人が落ち着いて練習し、レベルアップが出来るという親切なスキー場です。
 帰ってきてからの晩は、最終日なので、この日ばかりはお弁当を断ってジンギスカンを食べに行った。たぶんこれを書いている今頃は、僕の体から羊の匂いが全開で発散されているに違いない。

 いやあ、北海道、ありがとう!
明日は、二回目の公演をしてから、夜の便で東京に帰ります。

写真 札幌大通りの夜景
札幌大通りの風景




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