真生会館5月講座は「ロマン派の二つの潮流」
タイトルは「神に向かう?人間を観る?~ロマン派の二つの潮流」ではあるが、ロマン派というものについて総括的に語りたいわけではない。そんなことし始めたら、いくら時間があっても足りないので、何ヶ月ものシリーズとなってしまうだろう。どこかから依頼されたら、そういう講演をやってもいいのだけれど、「音楽と祈り」講座では、本来の目的を離れてしまう。
この講座では、その時々に自分が関心を持っていること、経験したこと、魂に深く刻まれたことなどをリアルタイムで受講者のみなさんと分かち合おうと思っている。それで、最近体験した2つのこと、すなわちひとつは、5月4日、マーラー作曲交響曲第3番の終楽章を指揮していた時の僕の精神状態について語りたいと思っているし、もうひとつは、現在新国立劇場で公演中の、ヴェルディ作曲歌劇「ドン・カルロ」に触れながら感じていることを中心に語ってみたいのである。
この2つの作品には、シンフォニーとオペラという分野の違いの他に、際だった違いがある。共に、いわゆる後期ロマン派の時代に属していながら、歌劇場指揮者としてワーグナーの楽劇などを指揮していたマーラーは、いわゆるドイツ・ロマン派の作風を色濃く持っており、片やイタリア人のヴェルディは、ラテン的気質を持ちながら自らの芸を深めていった。
ロマン派は、ロマン主義Romanticismとも言われ、文学が先行する形で、1700年代後半から起こった芸術における潮流。
「真実は、必ずしも理性だけで理解できるとは限らない。感情、感覚、直感などで捉えられるものには否定し難い真実が宿っている」
というモットーのもとに、均衡、秩序、理性を重んじた古典派に対し、個人的な感情の表現(喜怒哀楽、不安、動揺、恐怖など)が重んじられ、恋愛賛美、エキゾチシズム、神秘主義などの題材が好んで取り上げられた。
しかしながら、ドイツ・ロマン派と、ラテン諸国で見られるロマン派のあり方には随分違いがあるように思われる。その違いは、美術の世界でより際立っているので、前半は絵画で簡単に辿ってみる。
Friedrich 海辺の月の出
Goya 我が子を食らうサトゥルヌス
「オーディション課題曲の歌い方」Youtube
僕が音楽監督をしている「バッハの音楽を中心に活動している合唱団」である東京バロック・スコラーズ(TBS)で、新たに団員になるためには、必ずオーディションを受けなければならない。
オーディションの課題曲は2曲。パレストリーナ作曲Missa BrevisのKyrieと、バッハ作曲モテット第1番Singet dem Herrn ein neues Lied BWV225の第1曲目。前者は、声楽の基本的要素であるレガート唱法を審査し、後者では具体的にバッハの歌唱法を見る。
しかしながら、オーディションの際に残念だなと思うことが時々ある。それは、かなり声も出て実力のある人でも、TBSが目指しているバロック唱法からあまりにはずれていると、合格させるわけにはいかない、ということだ。
でも、そんなこと言ったら、みんな一体どうやって、僕が目指しているバロック音楽の美学や、発声の方法論をも知るのか?ということだよね。いずれにしても、合格して、すでにその方法論を目指して活動中の団員に混じって歌えば、否が応でも分かってくることだけれど、外部の人はそれを知る手立てもないのだ。
そこで僕は決心した。オーディションへの「傾向と対策」講座を行おう、と。
5月22日土曜日15時。Zoomを使ったオンラインで「オーディションのための手引き」として、僕は約1時間、東京バロック・スコラーズの音楽的方向性と、合格するための具体的な方法論を示してみた。配信はリアルタイムで行われたが、録画もその直後にYoutubeから配信された。
これで、オーディション受験者には、
「このビデオを事前に観ておいてくださいね」
と薦めることができるので、
「実力があるけれどTBSの目指している方向と正反対に歌って落とされる」
という可能性は激減すると思う。
今となっては、何故これまでこういうことを行わなかったのか?と思えて悔やまれるほどだが、昨年の緊急事態宣言までは、「Zoomでのオンライン講座」だの「Youtubeで配信」だのは、僕自身全く関係のないことだと思っていたからね。
不思議だね。だからコロナは、悪いことばかりもたらしたわけではないんだよね。
それにしても、手前味噌だけれど、TBSの今の合唱団員の中には、こうした僕の行動を完全にサポートしてくれる人材がいて、本当に頼もしい限りである。共同ホストになって、入室を許可してくれたり録画を撮ってくれたり質問を受け付けたりしてくれたKさんや、撮った録画の編集をその日の内に行ってくれたNさん、参加者の申し込みを管理してくれたTさんなどをはじめとして、日々、実質的にも精神的にも陰になり日なたになり支えてくれる有能かつ意欲に満ちた団員達に囲まれて、このコロナ禍の中でも、毎回ワクワクしながら活動を続けていられる僕は、本当にしあわせである。あらためて、みんなに感謝したい。
「おにころ」今年はやりまっせ!
高崎においては、おにころ合唱団の稽古は、なんと昨年の9月から途切れること無く行われていて、途中に佐藤ひろみさんのダンス講座や、演出家の澤田康子さんの演技講座などをはさみ、現在では毎週、欠席者がわずか1名とか2名とかの高出席率で、熱の入った練習が行われている。すでに立ち稽古も振り付け稽古もどんどん進んでいて、5月21日には、いよいよチケット発売となった。
一方、東京では、先週の5月19日と21日、国立市のスタジオで、主人公おにころの初役である町英和(まち ひでかず)さんのコレペティ稽古とセリフの読み合わせが始まった。途中から、桃花役の前川依子さんとうめ役の黒澤明子さんも加わり、重唱や様々な場面の合わせをした。
そしていよいよ、今日24日月曜日は、ソリスト立ち稽古初回。夜の時間帯で、先のキャストにプラスして、庄屋役の大森いちえいさん、伝平役の初谷敬史さん、群馬からきすけ役の田中誠さんも加わり、澤田康子さんの演技指導と佐藤ひろみさんの振り付けによる熱い立ち稽古になりそう。
おにころチラシ
全て、この世に生まれてくる者には、理由があり、役割があるのです。
人間の知らないところで、それは決まっているのです
この世に偶然なんてないのです
天が、あなたを見ています
あなたは、暗闇の中に光りをかざし
その事によって
人々は
天の心を知るのです