「マエストロ・キャンプ」までの道のり
後で語るが、Aキャンプに引き続き、Bキャンプも無事終了した。だが、そこに辿り着くまでには、ちょっと辛い道のりがあった。まず、残念だったのは、とっても来て欲しい音楽家の人が、濃厚接触者になってしまって前日キャンセルになってしまったこと。
実は僕も、関係しているある団体でコロナ陽性者が出て、濃厚接触者になるギリギリのところでの参加だった。さいわい前日2月25日金曜日の午後に、新国立劇場で「椿姫」公演のためのPCR検査があったため、これで陰性が証明されれば心置きなくキャンプができると思った。
その日は、検査の後「椿姫」最後の音楽稽古。それが終わってから中央本線で白馬に向かった。途中の電車でふと心配になった。
「もしも・・・もしもだよ・・・僕が陽性になったとしたら、明日からのキャンプは当然水の泡だよな。いや、宿泊先のカーサビアンカに泊まるのだって迷惑だ。そうなったら一体どうなるのだろう?今更今日中に家に帰るのは無理だし・・・」
電車が安曇野を走っている頃、パソコン・メルアドにbiglobeのホームページからログインしてみた。劇場からメールが来ている。開けるのが恐い。ドキドキしてきた。
「本日検査受けた方は全員陰性でした」
ふぅーっ!
もうここのところ、そんな思いばかりしている。
先日も団員に陽性者が出た。その団員は車で劇場に来ていて、発症前の練習後、仲間を何人か同乗させたという。その仲間達が濃厚接触者となるのは分かる。ところが、その濃厚接触者のひとりは、その後「愛の妙薬」の本番に乗っていたというので、楽屋でその人の化粧前のエリアにいた数人も自宅待機になってしまった。
「そんなの納得出来ない!」
と僕は反発したが聞いてもらえなかった。
濃厚接触者の濃厚接触者なんて広げていったら、一億総濃厚接触者になっちゃうじゃないか。一億総自宅待機。社会が止まってしまう!
現に、次の日の「椿姫」の練習では、ソプラノ団員がわずか4人しかいなかった。これでは練習にならない。ま、劇場としては、「ここまでやってます」というところを見せたいのは分かる。
バレエ部門でも陽性者が複数出て、大事な「吉田都セレクション」公演が中止に追い込まれてしまった。僕たちの「音楽スタッフ・ルーム」の向かい側はバレエの練習場で、吉田都さんが芸術監督になってから、バレエ部門の人たちの熱気がもの凄い。僕たちもコロナ禍でドアを開け放しているので、よけいそれが伝わってくるのだ。丹念に練習を積み重ねて、それが公演直前で突然中止になってしまった無念さは、僕たちも味わっているので良ーく分かる。本当にお気の毒!
しかし不思議だと思うのは、オミクロン株が世間に出回ると、今までのデルタ株などは、そのことで駆逐されてしまって、もうオミクロン株だけになってしまうんだね。この地球上の生物を見たら、象さんもいればキリンさんもいて、人間だって白人も黒人も黄色人種も共存しているじゃない。ウイルスの世界には共存がないなんて、どうも理解が出来ない。いや、オミクロン株になって重症化が少なくなるのはありがたいので、デルタ株が消えてくれるのは、それでいいんだけど、自然界って不思議なことがいっぱいある。
まあ、そんな中で、マエストロ・キャンプをやること自体、問題を感じる方もいらっしゃるだろう。
「そんなことしていていいんですか?感染者が増えることにつながりませんか?」
という風にね。しかし、僕はどんな状況下においても、自分からアクティブに生きることはやめない。
人生は何のためにある?ただ長く生き延びるため?僕はいろんなことを経験し、いろんなものを学び、時にちょっと悩んだり苦しんだりもしながら、いろんなものをエンジョイし、人生の最後に、
「ああ面白かった!」
と言って死にたいのだ。
僕の一番嫌いな言葉は、
「そんなことして、どーすんの?」
だ。
そうじゃないんだ。無駄に見えるものにこそ、価値がある。本人がそれに真剣に打ち込むのであれば・・・。そして、そこから歓びを得られるのであれば、それでいいじゃない!
「マエストロ、私をスキーに連れてって2022」Bキャンプ無事終了
そんな環境下で迎えた「マエストロ、私をスキーに連れてって2022」Bキャンプであったが、参加者はみんな意欲満々で、今年もキャンプをやって本当に良かったと思いながら帰途につくことができた。
一日目2月26日土曜日は超快晴。真っ青な空からお日様が燦々を降り注いで、白銀が眩しかった。みんなでアルプス平の展望台で写真を撮ったが、ここから見る白馬連峰は、いつ見ても息を呑むようだなあ。
超快晴のアルプス平展望台
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角皆君の講演
僕の講演
講演後の集合写真