斉藤洋さんからお返事が来ました!

三澤洋史 

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斉藤洋さんからお返事が来ました!
 6月14日火曜日の朝。家のチャイムが鳴った。また宅配便かと思ってインターホンに出たら、郵便局からで速達だという。妻が受け取りに出て行った。その後ろから僕は、
「もしかしたら斉藤洋さんからだったりして・・・」
と言ったが、ま、そんなハズはないな。第一、早すぎるし・・・・ところが、妻がドアのところで彼女には珍しいほど興奮した声で叫んだ。
「ヒロ、本当だった!斉藤洋さんからよ!」
「え?ウッソ!マジ?」
 急いで封筒を受け取り、開封する。中には、斉藤氏の手書きのお手紙、僕宛に便箋二枚と、杏樹宛に小さい便箋一枚が入っていて、さらに驚くべき事に、同封して送った杏樹の蝶の水彩画の横に、何か書いてある。

 ルドルフ・シリーズの物語の内容から想像するに、斉藤氏は、絶対にユーモアに溢れた優しい人に違いないと思っていたが、まさにお手紙は、それを象徴するような内容だった。
 読んでみた。まず彼は、自分が音楽に対しては無知だと謙遜しながら、
「音楽家の方からお手紙をいただき何事かと驚きましたが、ルートヴィヒやリヒャルトのことではなくルドルフの件でしたので、ほっと安堵した次第であります。」
と、ユーモアを交えて書いておられた。
 それから、ルドルフ・シリーズの続編については、6巻目の原稿がルドルフから自分のところへ全然届かないので、今のところ続編の出版計画はないと断りながらも、
「しかし、それでは孫娘のために作家に手紙を書いたジージの顔も立たぬだろうし、私としましても、高名な音楽家を手ぶらでかえすわけにもいかず、せっかくいただいた蝶の絵ではありますが、この蝶に口上を添えて、描き主のもとにお返ししようと。短いお話しをひとつ考えて書き添えたわけでありますので、杏樹様におわたしねがえればと思います」
と書いてある。
そして杏樹宛の手紙には、次のように書いてあった。
「おてがみと ちょうのえを どうもありがとう。
えを みて、おはなしを おもいついたので、
それを かきいれて おかえし します。
これからも 本を たくさん
たのしんで ください。
さいとう ひろし」

これを杏樹に渡したときの喜びようったら、みなさんも想像つくでしょう。


斉藤洋さんのおはなし

 それにしても、こちらから杏樹の文と絵に、僕の感想文を添えて速達で出したのが6月9日木曜日だから、講談社に10日金曜日に着いても、それから斉藤氏のところに転送されるわけだよね。それなのに、斉藤さんのお返事の日付は6月12日日曜日となっていた。つまり、土日に配達しない郵便局頼りでは、このスピードは不可能だ。どのようにしてそれが可能になったのか知らないが、講談社も敏速に対応してくれたんだな。感謝します!
 斉藤氏からのお返事が僕の家に届いたのは14日火曜日の午前中だから、遅くとも13日月曜日には投函していただろう。しかも・・・しかもですよ。郵便は速達となっていたのだ!こちらが、なるべく速く届けたいと思って速達にしたのはむしろ自然の成り行きだとしても、斉藤さんが速達である必要は特にないんだ。別に杏樹のところにはいつ着いても、本当は関係ないなずなのに、あえてそうしてくれたのは・・・ひとえに斉藤さんの優しさ故だ!

 しっかり杏樹の心と向かい合ってくれた斉藤さん!ありがとうございます!杏樹はきっとこのことを一生忘れないのではないかと思います。



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