「創造主への賛歌」絶賛作曲中

三澤洋史 

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「創造主への賛歌」絶賛作曲中
 ただ今、アッシジの聖フランシスコの祈りCantico delle creature「創造主への賛歌」(俗に《太陽の賛歌》)絶賛作曲中。そう、風が吹いてきたのだ。それから協力者も現れてきて、これから夏にかけて、じっくり、作曲も、それから新しい合唱団の立ち上げも進めていこうと思っている。

 先日は、「本当に行けるかどうか分からない」みたいに書いたけれど、それは嘘で、心の中では行けると思っていた。ただ、まだ作曲についても何も風が吹いてなかった状態で、行くことに執着して無理をするのはいずれにしても良くないと思っていたからね。

“成るものは成る。成らないものは成らない”

 バシャールは言う。
「今一番ワクワクすることを躊躇なく情熱を持って全力で行う」
「その時に、結果に対しては執着しないこと」
「そして何らかの結果が現れたら、またその時点で最もワクワクすることを行う」

 要は、自分がまずアクションを起こさないと何も始まらないと思ったのだ。それで、僕が真っ先に起こしたアクションが「今日この頃」に書くこと。すると、予想した通り、ある時、楽想が浮かんできて、作曲が始まった。今ちょうど真ん中を過ぎたあたり。

 また、同時に演奏予定の「イタリア語の三つの祈り」には原曲があって(それは、新町歌劇団のコンサートのために、ソプラノの中村恵理さんをソリストにした「アッシジの風」という組曲なのだが)、その第1曲目は、日本語の歌詞の上に作曲された「プレリュード」という曲だ。
 これをイタリア語に直して、再び組み直そうと思っていた。そこで、毎週通っているイタリア語の先生のところに持って行った。すると(イタリア人の)先生が、とても素敵なイタリア語に訳してくれた。それは以下の通り。
 彼女は、自分自身が詩を書くのが大好きだというので、いくつか意訳をした。たとえば「聖フランシスコのふるさと」という言い回しに関しては、tua Assisi(直訳すると「君のアッシジ」)とすることで、ふるさとの街という意味になるという。

聖フランシスコのふるさと San Francesco,
アッシジの街角を吹き抜ける nella tua Assisi
風のさわやかさよ il vento soffia fresco

鳥たちは梢から Gli uccelli dalla cima degli alberi
城壁 そして 塔へと volano con gioia
嬉々として 渡って行く sulle mura e sulla torre

ウンブリア平野の のどかさの中で I fiori di luce
いっぱいの光を浴びた 花たちが cantano la fericità
この世に生まれたしあわせを di essere nati
謳歌している nella serena pianura Umbria

ここでは 全てのものの上に Qui,su tutto brilla e dimora
神の輝きが 宿っている la luce di Dio

 こうしてイタリア語の歌詞ができたので、あとは同じ伴奏の上に、イタリア語のシラブルに合ったメロディーを書いていけば良いので、そんなに時間は掛からない。もしかしたら、思い切って原曲とは全然別のメロディーになるかも知れない。いずれにしても、その時に一番ワクワクするような事をやっていけばいいのだ。僕が僕自身である限り、決して悪い結果にはならないと信じている。

 ということで、話がどんどん進んでいます。みなさん、興味のある方はこの合唱団に入って下さい。僕の洗礼名でもある、アッシジのフランシスコ聖堂でのコンサートを前提とした合唱団を立ち上げ、練習してアッシジに行こうと思っているけれど、行かない人も、どこかで発表会はやるつもりなので、入団自体は誰でもOKです。

また報告します。
僕と一緒にアッシジに行くと、絶対良いことが起こるよ!僕には神様がついているからね。  

コブと戯れた一日
 3月16日木曜日、かぐらスキー場、快晴。前の週末に雪の予報が出ていたので、新雪を期待していたが、ホームページを見たら「かぐら新雪3cm」と出ていたので、ガックリした。3cmかあ、新雪の内に入んねえ・・・。
 さらに週末過ぎたら、気温が上がって東京も暑くなり、やれ桜の開花が記録的に早いだの、テレビで盛り上がっている。ヤベエ、雪が解けそうで気が気でない。

 どうも今年の雪の降り方は面白くない。年末にドカンと降って喜ばせておきながら、その後全然降らなかったり、一月半ばに寒波襲来ということで、またまた期待させておいて、その後全然降雪なしのまんまだったりする。適当に降雪がないとね、ゲレンデがつるんとなったり、あるいはただただグサグサになったりして、ホント困りますよ。
 とか何とか言っちゃって、まあ、ホントは滑れるだけでもしあわせなんだよね。かぐらスキー場は、いつもシーズンの終わりに来る。何故なら、たいていのスキー場は、長くてもゴールデン・ウィークまでの営業なのに、ここはたっぷり雪が残っているので、5月20日過ぎまで営業しているからだ。

 大人気のメインゲレンデには、沢山のコブができているが、結構ピッチが短く深くて難しそうだし、上手な人たちがいっぱい列を作って、順番に滑っているため、気後れしてしまって、とてもみんなが見ている前でうまく滑れる自信がないし、コケたりなんかしたら笑われそうで嫌だ。
 それで、もっと人がいないで落ち着いて滑れるところがないかな、と探したら、あった、あった!ジャイアントコースに行ったら、まるで僕のためにしつらえたような、コブが、途中途中切れながらも下まで続いていた。人もあまり来ない。

写真 かぐらスキーリゾート・ジャイアントコースのこぶ
ジャイアント・コースのコブ

僕は決めた。
「今日は一日、ジャイアントコースでコブだけ滑って、特訓をします!」

 一体何度、かぐら第一高速リフトに乗っては、ジャイアントコースに入って、コブを滑ったのだろう。同じコブでも、いろんな滑り方を試すことができた。

A「ピポット動作」: 
コブの出口で、ストックをしっかり突いてクルッと(感じとしては180度)飛ぶような勢いで回って、上半身を谷の方にひねりながら、スキー板は横滑りのようにテールを落としながら、コブの深いところにズルズルとゆっくり入っていく。次の出口では、またストックを突いて、クルリンと逆方向。
これだと、スピードを完全にコントロールできて、落ち着いて滑れる。
 
B「バンクターン」: 
そんなに深くないコブや、半径の大きいコブでは、ターンの時にそこまで回り込まないで、コブのS字に沿うような形で滑る。
その際、丁寧にスピードコントロールをすること。
新しいコブに入ったら、手前のU字の壁でズラしてもいいし、コブの形状によっては、向こう側の壁でズラすことも可。
 
C「トップを当てる」:
余裕があったら、思い切ってコブの深いところに突っ込んで行っちゃおう。
溝に向かって板の先端を突き刺すくらいの勢いで当てていく。
といっても突き刺さりはしないからね。
むしろ溝に突っ込んで板そのものがしなることで減速する。
さらに溝の深いところでは足を意図的に真っ直ぐに伸ばし、コブの出口で極端に腿を胸に近づけてかがむ。
このやり方で、以外としっかり減速できるんだよ。
ただね、この体の上下動は「ウサギ跳び」しているくらいの体力を使うのでヤバイ!
ハアハア言ってしまうし汗をかく。
コブを越えたら、また思い切って板のテール側をお尻に近づけて、トップを落とし込む。
気を付けなければいけない事A
「ストックを突くタイミング」:
コブによっては「出口越えたら即深い溝」というのも少なくないので、まごまごしているとターンしたらもう溝の底という恐れからか、どうしてもコブの頂上に達する前にストックを突いてターンを始めてしまいがちだ。
上から見ていると頂点に見えても、実際にはまだ手前のことが多い。
本当の頂上では、板の真ん中だけが接雪してトップもテールも浮いているので、ターンはとてもし易いが、手前だと、テールが引っ掛かったりして上手くいかない。
何度か失敗すると、だんだん、
「ああ、ここが頂上か」
と分かってくる。
分かってくるんだけどねえ・・・ちょっとでも遅れたら、いきなりコブの溝に無防備に入っちゃうじゃない。
そしたらもう転ぶしかないじゃない。
正しい頂上は一瞬なんだ。
勇気を持って待て! 
気を付けなければいけない事B
「上体のひねりをバネのように使うこと」:
今年のBキャンプでは、参加者みんなでサンバ・ステップをやったのが結構好評だった。
コブでは“極端な外向傾”を使う。
板が真横を向いても、腰から上は常に前を向いておくこと。
谷底にいる“スキーの神様”を拝むのだ。
ギュッとひねる感じになるが、そのひねりをわざと極限まで強くしておくと、次のターンの時に、ストックを突くやいなやバネが戻るように板が勢いよくターンしてくれる。
そして上体は、今度はそのまま反対側にギュッとひねって、次のバネを戻す準備をする。 

 お昼は、いつものように和田小屋に行って、モツ煮定食を食べ、ごろんと寝転んで少し昼寝をする。これができるので和田小屋での昼食ははずせないんだ。

写真 和田小屋のもつ煮定食
和田小屋のモツ煮定食

 そしてまた午後は、コブ、コブ、コブ!!!滑っている内に、僕が「マエストロ、私をスキーに連れてって」キャンプを始めたきっかけとなった、「バロックはコブだ!」というスローガンを、あらためて実感した。
 あの頃は、勿論今よりもずっと下手で、コブというより、単なるデコボコの不整地で精一杯だったにも関わらず、盛り上がった雪の塊を超えた時の浮遊感や、不規則なリズムで荒雪に対処する時の三次元的な運動性に、バロック音楽の音符が作り出す運動性との共通性を見出し、それを演奏に導入していったのだ。
 それによってバッハやヘンデルの音楽に、驚くべきバイタリティが宿っているのを発見し、音楽をやる人みんなに、それを体感してもらいたいなあと思ったわけだ。

 そして今、こうして連続したコブと夢中になって格闘している瞬間、またあらためて思う。
「ああ、なんて楽しいんだ!この世に重力があり、遠心力があり、その相克によって生まれるこの愉悦感はたまらないねえ。できれば、全ての音楽家に、これを味わえるまでの技術を習得してもらい、こうした運動性を音楽の中に表現できるまでになってもらいたい。そうしたら、素晴らしいんだけどな!」

 ジャイアントコースのコブは、メインゲレンデのように人が並ぶことはないが、常時誰かが滑っている。僕がピポットをしてコブの溝を埋めてしまっても、次に来る時には誰かがバンクターンをして掘り起こしてくれるし、反対に、このままいくと、底が深くなりすぎて怖くなるかな、と思っても、別の誰かがスライドして埋めてくれている。
 だから午後まで滑っても、いい感じに、難し過ぎにも簡単過ぎにもならず、常に今の僕にとって理想的な難易度のコブであり続けてくれた。それに断続的なコブが、僕も含めて、みんなで間をつないでコブを作ったらしくて、いつの間にか上から下までほとんどつながったよ。面白いね。見ず知らずの人と共同作業だよ。

写真 かぐらスキーリゾート・ジャイアントコース下からみたこぶ
ジャイアント・コースのコブ(下部から)

 さて、夢中で滑っている内にどんどん時間が経って、最後にかぐら第一高速リフトを降りた時、ちょうど14時だった。
「いっけねえ。バスが出るのは15時4分だ。急がねば・・・・」
みなさんは不思議に思うでしょうね。まだ1時間もあるじゃないの。
「何をそんなに急いでいるの?」
いえいえいえ・・・このスキー場はちょっと特別なんですよ。麓までチョー時間がかかるんですよ。

 僕は少々焦って、メインゲレンデを降り始めた。圧雪してある整地のはずだが、晴天と暖かさで雪はかなりグサグサだ。特にモーグル用の244という板だと、軽いので、トップに進行を妨げる雪の塊が引っ掛かってくるが、スネでブーツのベロを押してつま先加重を強めると、結構蹴散らしてくれる。

パノラマ図 かぐらスキーリゾートのゲレンデマップ 
麓までチョー時間がかかる
(出典:かぐらスキー場)

 メインゲレンデを降りると、かぐらゴンドラに沿って始まる緩やかなゴンドラコースに入る。ここは、緩やかどころか、途中でむしろやや登り坂になったりして、スノーボーダーたちは片足でケンケンしたり板を担いだりして大変そう。

 ゴンドラの出発点にやっと辿り着くと、一度みつまた第2ロマンスリフトに乗って登らないといけない。そして、ファミリーコースを全速で滑り降りる。ああ、やっと下にみつまたロープウェーの駅が見えてきた。もうみんな並んでいる。

 今何時?間もなく14時30分。ロープウェーの出発時刻は?14時30分。ゲッ!これを逃すと次は14時45分だって。それでは間に合わない。麓に着いたらブーツを脱ぎ、着替えて、板も拭いて往復便の復路で送らないといけない。
 焦って板をはずしていると、並んでいる人たちがもうロープウェイに向かって歩き出した。
「おおい、待ってくれ!」
 やっと乗った。ふうーっ!

 待てよ。メインゲレンデを出発したのが14時。ロープウェイに乗ったのが14時30分。ということは、一度リフトに乗ったけど、ずっと滑り続けて、山頂からロープウェーに乗るまで30分間かかったよ。

 さて、コブが少し上達したので、この辺で一度白馬に行って、角皆優人君にレッスンを受けたいなあと思い始めた。ここのところ新国立劇場のスケジュールが詰まっていて、なかなかオフ日がないし、特に2日続けて空いている日なんてほとんどない。でも、スケジュールを見てみたら、4月6日木曜日と7日金曜日が空いている。
「よし、この2日間、白馬に行ってこよう」
と決心して、早速角皆君と連絡を取り、コブのレッスンを取り付けた。その結果4月7日が今シーズン最後のスキーとなることも決まった。

 シーズンが始まったと思ったら、もう終わりか・・・・淋しいな。もう70歳近いんだから、いつまで元気でスキーが出来るか分からないけれど、出来る内に精一杯やっておこう。
 とにかく、スキーは、音楽家の今の僕を様々な面から支えている。精神的にも、スキーは僕に様々なスピリチュアルなメッセージをもたらしてくれている。スキーがない人生は考えられなくなっている。

 で、そう思えば思うほど、高崎高校一年生から3年間同じクラスだった角皆優人君との縁を感じる。勿論クラシック音楽を通じて親友だったのだけれど、こんな歳になって、僕がスキーにハマることで、スキーを通しても色濃く交流を持つなんて、一体誰が想像し得たであろうか?
世の中って不思議なことが沢山あるな。



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© HIROFUMI MISAWA