僕ならではの本番
今年の初夏からは、ミュージカル「ナディーヌ」(作曲、演出、指揮、打楽器担当)や、アッシジでの演奏旅行(作曲、指揮、イタリア語スピーチ担当)など、「僕が僕でないと成立しない」イベントが続いていたが、夏が終わるまでに、あと2つだけ走り続けなければならないことがある。
“にも”の本番近し!
そのひとつが、にもオーケストラ・オイリュトミー・プロジェクトの、8月17日土曜日、パルテノン多摩と、8月24日土曜日、愛知県長久手市文化の家「森のホール」の2つの公演だ。
8月4日日曜日の名古屋でのオーケストラ練習の際に、東京からまたまた沢山のオイリュトミスト達がやって来て、オケに合わせて、ドヴォルザーク作曲「新世界交響曲」と、エルガー作曲「エニグマ変奏曲」より「ニムロット」を踊っていったけれど、先日の8月9日金曜日の午後、僕が東久留米の練習場に行って、ピアノに合わせて彼等の踊りを指揮してみたら、それ以前とガラッと変わっていたので、大きな喜びが僕を包んだ。
何処がどう変わったのかというと、オーケストラの響きが彼等の動きから鮮やかに浮かび上がってきたことだ。弦楽器の音と音の間の旋律の線や、音圧の変化や音色感の変化・・・また、それらがどこに発展していくのか、といった方向性などに、彼等の動きがきめ細かく対応してきたのである。
普段の練習の伴奏で使う“ピアノ”という楽器はとても便利だが、やはりピアノは打楽器なのだ。一度叩いたら、次の音が来るまで、ただ減衰していく他はない・・・とはいえ、優れたピアニストであれば、イメージでその根本的欠点をすら補うすべを心得ていて、実際、旋律の持続が聞こえたり、クレッシェンドや音圧の変化も聞こえるが・・・それでもやっぱり、生のオーケストラの表現力にはとうていかなわない。
その日(8月9日)も、通常のようにピアノで練習していたのだけれど、オイリュトミスト達の動きは、もうピアノをなぞってなどいなかった。彼等の頭の中ではもう聞こえているのだ。本番で鳴り響くであろう濃厚な管弦楽のサウンドが・・・・。
「ああ、みんな凄いな!やっぱりタダ者ではないな」
と思った。
彼等は、それぞれがただでさえ、先生と呼ばれるプロのオイリュトミスト達であるのに、とにかくみんなよく練習する。僕から見たらもう完璧でしょ、と思うところでも、総合芸術監督の小林裕子さんは指導の手綱を決して弛めないし、みんなも遠慮しないで自分の意見は言うが、共に高みを目指している点では一致していて、謙虚で真摯な態度を貫いている。
こういう集団って大好き!でも、もうすぐ終わっちゃうんだよね。
Missa pro Paceフル編成
もうひとつ走り続けなければならないのが、名古屋モーツァルト200合唱団のMissa pro Paceだ。これはアッシジ祝祭合唱団でもずっとやっていて、アッシジでの演奏会でも大成功を収めることができたが、いよいよフル編成オーケストラ・バージョンでの演奏会が9月15日日曜日にある。
スコアを書いた僕本人の頭の中では、勿論もうサウンドはイメージできている。ミュージカル「おにころ」などでは、チューバなども入ったもっと大編成のオーケストレーションも手がけているので、“こう書いたらこう鳴る”という点ではだいたい分かっていて、当てずっぽうということはあり得ないし、「いちかばちか」などという気持ちでは決して書いてはいないのだが、それでもねえ・・・ホントのところ、どんなサウンドとなってあたりに響き渡るんだろうか・・・と、心配というより・・・・楽しみで仕方ない。
フル編成のオーケストラの他に、ソリストとしてピアノ(水野彰子)、コンガ(本間修治)、アルト・サキソフォン(佐藤温)というソロ楽器が入る。指揮をする僕の後ろ(客席から見ると前面)に、ピアノがピアノ協奏曲のように並び、さらに、その前にアルトサックスとコンガが並ぶ予定。
ラテン音楽タッチで楽しいミサ曲。でも僕は、この曲の中に“地球という星の究極的な平和”を希求する。戦争なんてしている場合ではないのだ。人類は、もっともっと進化していかなければならない。
この大宇宙の中には、我々から見て救世主レベルの人たちが、普通の住民として暮らしている星がワンサカある。僕たちは、まだ未開人なのだ。所有欲、独占欲、出世欲、支配欲を手放し、真の友愛と共生へと向かう道を、理想ではなく現実として追求していかないといけない。その願いを、僕はMissa pro Paceにこめた。
Missa pro Paceが現実に響き渡る度に、世界が一歩ずつ平和に近づいていくと、僕は本気で信じている!信仰の力よ、世界に満ち満ちよ!
先週後半からのスケジュール
今、この原稿を書いているのは、8月11日日曜日。愛知県刈谷市のあるホテルの一室。先週後半をざっと振り返ってみる。
8月9日金曜日10時。目黒のスタジオで、志木第九の会9月1日の演奏会の演目であるフォーレ作曲「レクィエム」の合わせを行った。矢内直子さんのオルガンと、長谷川幹人さんのエレクトーン。
オルガン以外のすべてのオーケストラを長谷川さんにお願いした。その際に、フォーレが初演の時に使った、一番編成の小さいスコアを僕たちは使用した。オケの定期演奏会などでは、使えないバージョンだ。しかしながら僕は、そのオーケストレーションこそが、フォーレが本当に意図したものであり、かつ、最も独創性に溢れたものだと信じている。
旅先で、手元にスコアがないので、はっきりとした場所は特定できないが、1曲目のRequiem aeternamの弦楽器なんて、2声に分かれたビオラと、同じく2声に分かれたチェロ、それにコントラバスしかいないし、管楽器もファゴット、ホルン、トランペットだけで、フルート、オーボエ、クラリネットが出てくるのはずっと後。さらにLibera meになってから、突然ティンパニが入ってくる。このように、奏者の無駄遣いもいいとこなんだけど、フォーレが望んだ音色の変化は際立っているのだ。
で、その合わせ練習が11時半に終わると、先ほど書いたように、僕は東久留米に向かってオイリュトミーの練習に出た。
8月10日土曜日13時。武蔵小杉のスタジオで、“にも”の東京組エキストラ弦楽合奏の練習。オイリュトミーの伴奏者でもあるピアニスト篠原桃子さんが、管楽器などのパートを弾いてくれるので助かる。この東京組は武蔵小杉在住の井上喜晴さんが、アマチュアながらレベルの高い奏者達を集めてくれたお陰で、今日は二回目であるが、練習はとてもはかどった。次の合わせはもう、パルテノン多摩オーケストラピットでの本番前日練習。名古屋から来る弦楽器奏者との合流が楽しみ!
8月11日日曜日13時。浜松バッハ研究会の「メサイア」練習。今日は第2部後半から始め、ハレルヤ・コーラスまで行ったところで、第2部初めの受難の場面に戻った。みんな頑張っている。
東京から出てくる時に、お盆で、通常の席は満席だったので、EXで思い切ってグリーン車を取っちゃった。その代わり、練習の最寄りの駅が弁天島だったので、浜松には戻らずに在来線で豊橋を過ぎて刈谷まで来て、こうしてホテルの一室で書いているというわけ。 何故なら、明日12日月曜日は、午後からモーツァルト200合唱団のMissa
pro Paceの練習が金山音楽プラザで行われるから。たまたま名古屋方面に来ているというコンガ奏者の本間修治氏が、練習に合流してくれるという。
本間修治氏