Missa pro Paceフルオケ初演
9月15日日曜日に、とうとうモーツァルト200合唱団の演奏会が来る。Missa pro Paceのフル・オーケストラ版が世界に産声を上げる瞬間だ。この初演は、本当は2020年の9月のはずだったが、コロナであっけなく延期になってしまい、同時に僕のオーケストレーションも中断されてしまった。
でも、かえって良かったかも知れないと思うのは、2020年7月には「おにころ」公演も、新しい高崎芸術劇場で計画されていて、そのためのフル編成オーケストレーションも同時進行して行われていたのだ。勿論こちらの方も中止となったのだが、「おにころ」は翌年2021年に上演された。その為のオーケストレーションは、たっぷりの時間の中で落ち着いておこなわれた。
一方、モーツァルト200合唱団は、その後、コロナの様子を伺いながらモーツァルト「レクィエム」演奏会を間に入れて、そしてとうとう今年、Missa pro Paceを演奏会メイン・プログラムに置いていただいたのである。双方、オーケストレーションが雑になる心配だけはなくなったのだ。
とはいえ、5月後半から6月にかけて、僕は、すべての空き時間をMissa pro Paceのフルスコア及びパート譜の作成に捧げたので、大変ではあったが、頭の中に響き渡る大管弦楽のイメージに酔い痴れながらオーケストレーションに没頭する日々は、長い人生の中でも充実したかけがえのない時間であった。
セントラル愛知交響楽団との最初のオーケストラ練習は、本番2日前の13日金曜日。14日土曜日がオケ合わせで、15日日曜日にはもう本番というタイトなスケジュールなので、今の時点では、まだ実際のオーケストラの音は聴いていないんだよ。でも、楽しみで仕方ない。
この原稿を書いている昨日にあたる9月8日日曜日は、名古屋に行き、最後の合唱練習を行った。コンガ奏者の本間修治さんがまたまた参加してくれて、皆さんかなり盛り上がってきたよ。明日の午前中は、その本間さんと、ピアニストの水野彰子さん、アルト・サキソフォンの佐藤温(のどか)さんの3人と、スタジオで合わせ稽古をする。これも楽しみ!
本間修治さん (出典:本間修治 公式WEB)
水野彰子さん (出典:SHALONE 公式WEB)
佐藤温さん (出典:佐藤温 Official web site)
ベートーヴェンの凄さ
Missa pro Paceの前プロは、ベートーヴェン作曲ヴァイオリン協奏曲だ。この曲は学生時代に勉強したので、しっかり頭に入っているが、今回あらためてスコアを開いて勉強し直してみると、昔、分からなかったことにいろいろ気が付く。
まず、オーケストレーションの素晴らしさにあらためて舌を巻いた。とはいえ、別に目新しい楽器編成ではないし、ごく当たり前に見える。でも、よく見ると、たとえば冒頭はティンパニだけでレレレレと入るんだ。次の小節になると木管楽器だけのアンサンブル。ところが、ここでフルートが入っていない。というか、随所でフルートが抜かれていることに気が付く。
10小節目で初めて第一ヴァイオリンが入る。冒頭のティンパニーのレレレレに対して、半音高い不安定なレ#レ#レ#レ#という音と相まって、
「あ、弦楽器だ!」
という新鮮さを感じる。次の小節のfで残りの弦楽器。その充実感。
18小節目から入ってくる木管楽器のメロディーはクラリネットとファゴット。フルートは28小節目のffのトゥッティで初めて登場する。43小節目で現れる第二主題もオーボエ、クラリネット、ファゴットのみ。
そこで数えてみたら、535小節ある第1楽章の内、フルートが演奏するのは、わずか123小節しかない。オーボエなんか220小節も吹いているのに。
では、ベートーヴェンはフルートが嫌いだったのだろうか?いや、そうではない。理由はいくつかある。まず、フルートは上に倍音が広がっていて、特にトゥッティにおいては、オーボエの1オクターヴ上などの最高音を受け持ち、管弦楽全体に圧倒的な輝かしさを与えるので、トゥッティのために取っておかれたに違いない。
もうひとつとして、トゥッティ以外では、クラリネット同様、その独特な音色を生かす個所に限定して使われているということが挙げられる。また、フルートの音色が輝くのは、少なくとも2点ハ以上の音域なので、トゥッティ以外でヴァイオリン独奏と同時に使われると、高い音域がぶつかるというのもある。
第1楽章のトゥッティ以外では、唯一435小節目から10小節に渡って、オーボエと三度で重なりながら、独奏ヴァイオリンを和声的に支えているが、フルートとしては比較的低い音域で、ヴァイオリン独奏の1オクターヴ下を吹き、その後はラの音をpで伸ばしながら独奏を支えている。
ファゴットは、このヴァイオリン協奏曲において、特に重要な役目を負わされている。それは、ヴァイオリンという高音楽器の独奏とのコントラストで、ファゴットの音域と音色がベートーヴェンには必要だったのだろう。18小節目から出るドーレミファソラシドレミドドのメロディーのように、ファゴットをクラリネットと組み合わせて、1オクターヴ下で平行して使用するのも効果的だ。
このようにベートーヴェンのオーケストレーションは、ちょっと地味だけど、まぎれもなく玄人の技であって、学生時代に気が付かなかった沢山の事がスコアに詰まっていて、ひとりで興奮してしまった。
第二楽章では、管楽器はクラリネット、ファゴット、ホルンだけに限定して使用されている。このどちらかというと低音系の管楽器に対して、ヴァイオリン独奏の音域は総じてかなり高い。否が応でもヴァイオリン独奏が引き立つわけだ。
第二楽章の冒頭の(ト長調で)ドードレーミーというメロディーは、初めて聴いた時、スコアが手元になかったので、第1拍目から始まると思っていたのだが、スコアを買ってみて驚いた。なんと4拍目からこのメロディーは始まっているんだね。するとレに強拍が来るんだ。で、そういう風に感じ直してみたら、なるほどそれが理に適っていると思えてきた。
第三楽章のロンドは舞曲風で楽しいね。ここではロンドで何度もメロディーが戻ってくるので、フルートもトゥッティーでは使われているが、やはりオーボエほど頻繁ではない。こういうと意地悪に聞こえるが、ベートーヴェンはオーボエが大好きなので頻繁に使っているというよりは、オーボエを「使いっパシり」のように軽く扱っている印象だ。むしろホルン、ティンパニーは大好きで、積極的に使っている。
独奏ヴァイオリンは、ピアノ・ソナタを作っているように、自分で全部弾いてみたに違いない。難しいけれど、全て理に適っている。いやあ、やっぱりベートーヴェンって、今更ながら言うけれど「大天才」だ!上手な落合真子さんとのオケ合わせが楽しみだ。勿論本番も!
青山繁晴さんの政策
僕は、新型コロナ・ウィルスが蔓延し、仕事がなくなった時以来、Youtubeをよく見るようになったし、自分でもYoutubeを立ち上げる方法を学んで、すくなからぬ数のYoutubeを配信するようになった。
また、パソコンに向かってメールをチェックしたり、「今日この頃」のような記事を書いたり、様々な仕事を行って疲れた時は、気分転換にYoutubeを観ることも増えた。観る記事は多岐に渡っているけれど、政治の話に関して言うと、青山繁晴氏のホームページ「青山繁晴チャンネル~ぼくらの国会」を観ることがとても多いと思う。