「マエストロ・私をスキーに連れてって2025」キャンプのプレ情報

三澤洋史 

写真 三澤洋史のプロフィール写真

やっと秋!
 夜中に起きたら冷房のせいで体がちょっとだけ冷えている。微風で付けてたのに・・・と思ってベッドから起きて、トイレに行こうと思ってドアを開けたら、寝室と同じくらい涼しい。それでトイレから帰って来てクーラーを消して窓を開けた。明け方のそよ風が入ってきた。
「おおっ!快適な涼しさだ!もう冷房なんか要らないんだ!」

 今年ほど残暑が残った9月はなかった。いつもなら、もうとっくに咲き誇っている近所の草むらの曼珠沙華も、ずっと茎だけは出して頭に赤いもんをチラつかせながら、
「果たして咲いたもんかどうか・・・」
と悩んでいた。
「咲いちまったら、もう後にはもどれんからな・・・」

 今日は、午前中に原稿を書ききれなくて、一度新国立劇場の「夢遊病の娘」の舞台稽古に行って帰って来て、現在午後8時。驚いたことに、劇場を出た瞬間に、モワッとしたまとわりつくような暑さが僕を襲わなかったんだぜ!

 バンザーイ!やっと秋だ!
 

「マエストロ・私をスキーに連れてって2025」キャンプのプレ情報
 原稿が遅れたのにはワケがあるんだ。いつもは10月からスキー・キャンプの申し込み募集を行っているけれど、それだと受講者が宿を取るのに苦労することに気が付いた僕は、今回は特別にちょっとだけ早くしようと思い立って、まず募集要項を書き換え始めたんだけど、そう簡単にいかないことに気が付いた。
 だってキャンプ代金の振込先とかも、あらためて角皆君の了解を取らないといけないし、美穂さんがお薦めしてくれるペンションなどの情報もアップデートした方がいいだろうし、なんといっても僕の文章の「キャンプの目的」を大幅に変えようと思って書き始めたのが、どんどん泥沼にハマっていって・・・・これはこれで、あと一週間じっくり考えながら作ろうと諦めてみたら、もうお昼になっていたのだ。

 ということで、正式申し込みは来週からにしますが、すでにキャンプ参加経験者でいろいろ勝手が分かっている方のために、新しいメルアドだけは事前に発表しておきます。
 新型コロナ・ウィルスの感染も、各地で変異株が突然広がったりするとはいえ、そのために重症化するという懸念は少なくなったので、むしろ先シーズンなどは反動で、ペンション予約が結構早くから混み合っていて、スキー場近くの宿が取れなくて不便をした人が少なくなかった、というのが理由だ。

 なので、人によっては極端に言えば、キャンプの詳細よりも、まず日程を知って、宿の確保だけは行っておきたいという人がいるだろうから、日程と、今年の申し込みメルアドだけ教えておきます。実は、来シーズンは、いろいろな事情があって週末がずっとふさがっており、マエストロ・キャンプは残念ながら1回だけしか行えません。ですから、どうかみなさん、その日にご都合を付けて沢山参加してください。

ということで、「マエストロ・私をスキーに連れてって2025」キャンプは以下の通り行います。

2025年2月8日土曜日及び9日日曜日
受付: 2月8日土曜日9時30分から
準備体操: 9:50 
レッスン: 10:00-11:30
13:00-14:30
その後に講演あり(時間場所未定)

2月9日日曜日
レッスン: 10:00-11:30
13:00-14:30
解散
プレキャンプ:2025年2月7日金曜日14:00-15:30
申し込みアドレス。
2025maestro.takemeskiing@gmail.com
もうすでに申し込めます。

 なお、初心者の方は、来週出す募集要項を落ち着いて読んでから参加申し込みをすることをお薦めしますが、僕のことを良く知っている方は、取りあえず申し込んで、宿も取ってから募集要項をお読みになっても、まあ、全然差し支えないでしょう。
 

「夢遊病の女」舞台稽古
 エルヴィーノを演じるテノールのアントニーノ・シラグーザがやっぱり素晴らしい。新国立劇場には、2013年「愛の妙薬」以来の登場なので久しぶりだし、もうそれなりの年になっているはずなので、あの比類なき輝かしい声がどうなっているか心配であったが、それが杞憂に過ぎなかったのが嬉しい。

 特にチェンジ区域から高音域にかけての音量のコントロールは、完璧のひとことに尽きる。地声とファルセットの混ぜ具合が絶妙で、ppからfまで全く自由自在に操れるのだ。ただ今回気が付いたのは、high B から上を最強音ffで出す時だけは、はっきりとしたギヤー・チェンジが見られるようになったこと。
 勿論それは、強音の輝かしさを充分に引き出すためのものであるし、かつてもチェンジ自体があったのは音域から考えると明白であるが、昔はあまりにスムーズだったため、pからmfまでではなく、pからffまでもギャップを感じさせることはなかった。
 まあ、しかし、それがかつては、テノールに“きっぱりとした男らしさ”を期待するファンに、リリック過ぎて、ある種の“物足りなさ”を感じさせていたことも事実なので、歳を取ったせい、というより、むしろ意図的にモードを変えたのかも知れない。

 立ち稽古の間は、指揮者の横にいて、唾が飛んでくるくらいの超近距離から主役達の歌を聴くことができる。こういうのは、副指揮者や合唱指揮者の特権であろう。僕の興味は、歌手達が歌い出す直前や、フレーズとフレーズとのわずかの瞬間に、彼等の腹部がどう動いているのかを観察すること。
 人によっては、短いブレスの時には、横隔膜を下げて腹圧を維持したまま、肺の中の足りなくなった空気の分だけ静かに補う歌手も少なくないが、シラグーザの場合は、わずかなブレスの間でも、一度おへそのあたりと下腹部とを素早く引っ込ませて脱力しながらリセットし、あらためて横隔膜を下に降ろして腹圧を上げている。その方がメリハリがついて決まるのだろう。 
 一方、輝くようなコロラトゥーラ・ソプラノのクラウディア・ムスキオは、容姿も愛らしく、アミーナにぴったりだ。自由自在なシラグーザとの二重唱では音色もよく溶け合って、とても美しい。
 ソプラノとテノールの二重唱の場合、記譜的には同じ音でも実音的にはオクターヴの差がある。ソプラノがドレミと歌う時、テノールはその三度上、つまりミファソと歌うことが多く、あたかもテノールがメロディーのように聞こえて居心地が悪いことが多い。しかしシラグーザの声が柔らかいことと、ムスキオとの声の相性が良いため、二人の二重唱は、どちらがメロディーとか関係なく、6度の平行進行のユニットとして、そのまま受け入れられるから不思議だ。

 「夢遊病の女」La Sonnambulaは、“夢遊病” という、当時話題となった目新しい病気をテーマとしたオペラだ。ストーリーは荒唐無稽で、アミーナは、村の裕福な地主のエルヴィーノと婚約しているが、そこに亡くなったその地の先代領主の息子で、行方が知れなかったロドルフォがこっそり帰郷し、城までの道のりがまだ遠いことから、村に泊まることにする。
 その晩、夢遊病に憑かれたアミーナがさまよって来て、あろうことか、ロドルフォのベッドで寝てしまう。それを村人達に発見され、アミーナがロドルフォと関係したと勘違いしたエルヴィーノは、婚約破棄しようとする。
 結局は、ロドルフォが、村人の知らない“夢遊病”という病気のことを知っていて、それをみんなに説明することで、一同納得してハッピーエンドとなる。

 今回の公演は、テアトロ・レアル・マドリッドで初演されたバルバラ・リュック演出のもので、ダンサー達が活躍し、常にアミーナにまとわりついている。それをみながら僕は思った。
「夢遊病というのも、その人に作用する霊的な現象なのかも知れないなあ。そうでなければ、意識がないままぶつからないで歩いたりできないものなあ」

 劇場内では、舞台稽古が進んでいる。明日がピアノ付き舞台通し稽古。それからオーケストラ付き舞台稽古へと進み、初日は10月3日。マエストロのマウリツィオ・ベニーニが緊張感に満ちた演奏で、みんなをまとめ上げている。彼は、舞台上で演技しながら歌っている合唱団に対しては、
「遅れるな!」
「スタッカートで歌え!」
と大声で怒ったように指摘するが、実際には僕が作ったサウンドや、言葉の立て方をとっても気に入ってくれて、僕を呼んで小さい声で、
「この合唱団、本当に凄いよ!ヒロに任せておけばいつも間違いない!」
と言ってくれる。
僕とマウリツィオとの作り上げたものを、みなさん是非聴きにきてください!

2024/2025シーズン開幕公演 オペラ『夢遊病の女』
新国立劇場合唱団&合唱指揮者 三澤洋史
(出典 新国立劇場

2024. 9.23



Cafe MDR HOME

© HIROFUMI MISAWA