加藤宏隆さんのFMリサイタル

三澤洋史 

写真 三澤洋史のプロフィール写真

加藤宏隆さんのFMリサイタル
 すでに一回目の放送が終わってしまったが、11月17日20時25分から21時まで、NHK FMでバスの加藤宏隆さんの演奏が流れた。放送はモーツァルト作曲「魔笛」のザラストロのアリア「この神聖な殿堂には」で始まった。
 加藤さんの稀有な声を堪能できる良い機会なので、是非皆さんに聴いていただきたい。放送自体は次の日曜日、すなわち11月24日朝5時から再放送があるが、それよりも、今は「らじる・らじる」という聴き逃し番組がネット上でいつでも聴けるので、それを紹介したい。

 加藤宏隆さんについては、僕が新国立劇場合唱団の合唱指揮を担当した、昨年の読売日本交響楽団の第九で、彼がバス独唱を歌った際、その日本人離れした深い響きに魅せられ、すぐに2025年3月30日の東京バロック・スコラーズ「マタイ受難曲」のイエスの役をお願いした。それから、やはり来年1月12日の浜松バッハ研究会の「メサイア」ソロをお願いしたら、浜松の近くの静岡県袋井市出身ということで、浜松で演奏会が出来ることをとても喜んでくれた。
 加藤さんが日本で活動を開始してからそんなに経っていないのに、まわりも放っておかないのだね。たちまちあっちこっちの演奏会に引っ張りだこになって、先日も、日生劇場「連隊の娘」で、公爵夫人の従者オルテンシウスで、きめの細かい歌と演技を披露した。

 個人的なことになるが、この放送で伴奏を弾いているのは長女の三澤志保である。親馬鹿で申し訳ないけれど、スタジオの楽器も良いのだろう。結構音がきれいなのでホッとした。歌に寄り添ってよく弾いている。

ということで、どうか聴いてみてください。

角皆君のコブ攻略本
 角皆君が新しいスキーの本を出した。とはいえ、コブに特化した本なので、初心者にはちょっと難しいかも知れない。この本は、角皆君の他に、Ski-est代表の佐藤紀隆氏、小保内祐一氏との共著で、特に小保内さんは、よく角皆君の事務所に来ているので、個人的にもよく知っている。


スキー・コブ攻略バイブル
(写真提供:角皆優人様)

 世の中には、いろんなスキー教本が出ているが、コブについては本の最後の方についでのように書かれていることがほとんどで、読んだだけでは全く実践につながらない。でも、この本はコブに特化し、様々な角度から書かれているため、じっくり読んでいけば、少なくとも、当面何を目指し、それがどこに自分を連れて行ってくれて、どういうプロセスで滑れるようになるのかを明快に示してくれる。

 ひとつだけ大事な事は、じっくりよく読むこと。共著なので、最初の対談では、コブに対するアプローチに、それぞれ個人差があるように感じられるが、実践のページに入ると、みんな根底ではつながっているので、各アプローチに矛盾がなく、それぞれ相まって上達が見込まれると思う。
 でも、くれぐれも言っておくけど、じっくり読んで頭の中に入れてから、実践に挑戦してみること!そうすれば、めちゃめちゃ上達が見込まれます。

NHKバイロイト音楽祭、録音初日まであと1週間
 先週後半まで、まだ資料を読んだり、録音を何度も聴いたりしていた。その中でklassik-begeistertというサイトのIris Röckrathイリス・レックラートという批評家の「さまよえるオランダ人」に対する記事は、ちょっとけなしすぎじゃないか。こういうのアリ?

しかし、(オランダ人)ミヒャエル・フォレによる最初の独白である「期日は来た」で、もう私を捕らえなくなってしまった。彼からは緊張感のあるささやき声は聴かれなかった。描き分けや、異なった感情の動きから来るニュアンスが冴えない。要するに、ほとんど強いばかりなのである。

しかしながらフォレは良き仲間を得ている。期待されて登場したゼンタのエリザベト・タイゲは不安を抱える役どころだ。彼女は有名なバラードを力任せに高音まで押していって、清らかでも清潔でもなく着地した。

 また女性指揮者オクサーナ・リーニフにたいしても冷ややかだ。

もしかして、とても褒められているオクサーナ・リーニフが、閉じたオーケストラ・ピットから、これまた大きすぎるボリュームで演奏しているので、舞台上の独唱者チームが、それに合わせないといけないんじゃないかと思ったというわけ?

 何か、全体的に悪意のようなものを感じる。ミヒャエル・フォレの歌唱は決して悪くない。僕とすると、もう少しバスっぽい声で、彼が負っている宿命的な悲劇性が漂った方が良いとは思うが、歌唱そのものは強いばかりではない。彼の声はむしろバリトンなので、下の方の音域があまり出ないから、ささやき声にする余裕もないのである。でも表情はきちんと出ているよ。
 こういうのは読んでいて気持ちの良いものではないね。指揮者オクサーナ・リーニフについては、Tobias Hellという人の批評が良いね。

  自然からインスピレーションを得たこのドラマを、オーケストラピットでは放っておかなかった。オクサーナ・リーニフは暴風のような要素で猛威を巻き起こした。
というのは、リーニフは、大きな音楽劇の方向性をみつめるだけでなく、ワーグナー初期の作品の理想の姿を描きつつ、ドイツオペラのみならずイタリアオペラからの影響も描いているのだ。

 さて、いつまでも人の意見ばかり読んでいるわけにもいかない。ということで、「さまよえるオランダ人」から、実際のコメントの文章を書き始めた。あと「トリスタンとイゾルデ」もあるので、来週の「今日この頃」の頃には、目がショボショボになっているかも知れません。

トランプがやろうとしていること
 トランプ次期大統領の評判は、真っ二つに分かれていて中間がない。特に中国に対する厳しい態度に恐れをなし、さらに石破総理大臣が無視されているのを見て、日本はどうなるのだ?という不安のコメントが後を絶たない。
 僕は、政治のことに特に詳しい方ではないので、細かい事を語って揚げ足を取られるのは本意ではないので、ざっくりと言うだけに留めるが、彼は、ただ歪んだ社会を健全なものに戻す見本を示すことで、他の国にも気付いてもらおうとしているだけだ。

 たとえば、我が国が、経済的に発展していないはずがないのに、何故豊かにならないのかというと、外国資本がどんどん入り込んできて、あるいは日本企業が外国資本に買収されているので、仮に利益が出ても、日本の国に、税金を含めて実際のお金がもたらされないという現象が起きているのだ。
 ニセコのスキー場などは、沢山の土地を中国に買い占められているし、円安で外国人が沢山来るために、その外国人に合わせた物価となっていて、レストランひとつ取っても日本人にはとうてい手が届かない値段になっている、と嘆いている人が多い。これがグローバリズムの結果なのだ。

 米国でもそうだ。一部の大富豪のみがどんどん儲かり、中間層以下は物価高で苦しい生活を強いられている。それなのに、グローバリスト達やDSは、大富豪達の動き易いようにばかり世の中を変えている。
 それに対して、トランプ次期大統領がやろうとしていることは、アメリカの会社がアメリカにおいてアメリカ人に働かせて利益を得、税金をアメリカに納め、アメリカ人労働者も安い物価の中で消費して、アメリカ社会が健全に機能する、という当たり前のことなのだ。トランプ氏は難しいことは言わない。それがアメリカ・ファーストなのだ。
 トランプ氏もイーロン・マスク氏も富豪であり実業家なのに、グローバリストやDS側に付かないところが凄いのだ。

 トランプ氏が、反対に、何故中国にあれだけ厳しいかというと、中国はグローバリズムの牙城だからである。このホームページでも書いたことがあるけれど、僕自身、中国に行って本当に驚いた。中国にはふたつに分断された社会がある。

「危ないですから、指定されたお店以外では食事しないでください」
と言われたけれど、僕は無視してホテルの近くの裏道の食堂に入ってお昼を食べた。英語も通じなかったので困ったけれど、お店の人達は親切で優しかった。で、お昼の値段は、日本円に直して約100円のみだった。この物価で働き、消費する下層市民がいるわけである。
 
 一方、それを支配する階級の人達は日本と同じように1000円でお昼を食べるのだ。分かりますか?支配階級の人達は、下層市民に100円払って働かせたものを、そのまま1000円で外国に売ることができるわけだ。当然ボロ儲けなので、外国人が中国に群がるわけだ。 その儲けをたとえば米国のグローバリスト達がアメリカ国民に還元してくれればよいのだろうが、そんなことするはずがないだろう。トランプ氏が中国に大幅な関税を掛けると言っているのは、それを止めるためなのである。

 グローバリズムといえば、カマラ・ハリスの応援のためにビヨンセが駆けつけただろう。その際、ビヨンセに払ったギャラがなんと1000万ドルだという。3分話しただけなのに、日本円になおしたら15億円だぜ。ラッパーのメーガン・ジー・スタリオンには500万ドル。リゾ(メリッサ・ヴィヴィアン・ジェファーソン)には300万ドル。エミネムには180万ドル払ったのに、ハリス氏が選挙で負けたため、その分赤字でどうしようと言っているという。
 でも、変だよね。ハリス氏が大統領になったら、それが還元できたのかな。還元するって、誰がどうやってするのかな?まあ、とにかく、民主党側は、どこまでも金、金、金で、グローバリストとしっかり繋がっていて、一部の富裕層だけ潤い、市民はその犠牲になっていたのだ。

 それをひっくり返そうとしているのがトランプ次期大統領だとしたら、我々は今後のアメリカの変わっていく状況をしっかり見つめていこうではないか。

2024. 11.18



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