アイヌのウポポ
来週の火曜日、すなわち2月11日建国記念の日(カトリック教会的にはルルドの聖母の記念日)には、三鷹市公会堂 光のホールで、東京大学音楽部コールアカデミーの定期演奏会があって、そこの第2ステージで、OB合唱団のアカデミカコールが賛助出演をする。曲目は清水脩作曲の「アイヌのウポポ」。
そのステージを指揮するにあたって、いろいろアイヌのことを調べたりしながら曲と向かい合っていたが、結局近藤鏡二郎氏が採譜したものを清水氏が編曲し、和声や対位法的処理を施して、清水脩作曲として世に出した時点で、これは紛れもなく清水氏のファンタジーのたまものと化している。それに気付いた僕も、オリジナルにこだわりすぎないで、清水氏に悪ノリして、自分のファンタジーに従って曲作りをすると決めた。
「さまよえるオランダ人」千穐楽
新国立劇場では「さまよえるオランダ人」が2月1日土曜日に千穐楽を迎えた。12月にフェイスタイムで事前の打ち合わせをした指揮者マルク・アルブレヒトとは、その甲斐あって、彼が来日した後でも、互いにやりたい音楽を突きつけ合ったが、目指すところは一緒で、ぶつかることもなくずっと仲良しで、本当に素晴らしいコラボができてただただ感謝である。
東京交響楽団のオーケストラ練習では、彼がすぐ止めて細かい指示を出しているので、なかなか前に進まなかった。2日間あるオケ練習の1日目が終わった時、まだオペラ全体の半分も進んでいなかったので気を揉んだ。
オペラのような長い作品の場合、いろんな指揮者がよくやる方法としては、1日目の練習では、とにかくオケが合っても合わなくても、自分の振り方を見せながら、ざっくり終わりまで行って全体像を提示するにとどめ、2日目の練習で、特にこだわるところを掘り下げていく指揮者が多い。いちいち止めなくても、プロの団員だったら、うまく行かなかったところは自分たちでもチェック出来ているのだ。
几帳面なマルクはその方法を取らなかったが、オケが遅まきながら仕上がってくると、そのアンサンブルに乗って、彼がそこに振りかける味付けが素晴らしいことに気が付いた。
「指揮者は拍を刻むだけではない」
とはよく言われるが、自分たちでアンサンブルができるプロ・オケを前提として、彼の操るフレージングやサウンドが、彼の指揮棒や全身から感じられたのである。
合唱団もそうなると、もうノリノリで、僕が見ていても惚れ惚れするほどエネルギッシュな歌唱と演技を繰り広げてくれた。だからカーテンコールでも、合唱に毎回ブラボーが飛んでいたし、SNSでも合唱の評判がすこぶる良い。まあ、僕も頑張ったけれど、今回はマルクの業績がかなりあるね。
オランダ人カーテンコール
加藤さんからお呼ばれ
カルメン立ち稽古が始まる
「さまよえるオランダ人」の公演と同時進行して「カルメン」の音楽稽古が進んでいて、もう今週から立ち稽古に入る。ここでも僕は、フランス語とそのフランス語的表現にこだわって厳しく稽古をつけている。
「カルメン」は、最初、バリトン歌手の村田健司さんの言語指導でフランス語の薫陶を受けた。その後、自分もパリに行って、ソルボンヌ大学夏期講習などで、新しい情報なども取り込んだけれど、人に教える立場になると、あらためて村田さんの論理的な教え方の素晴らしさを再発見して、合唱団員達に対しても、村田流のやり方を踏襲している。
「カルメン」だけでも何度もやっているので、今では、譜面もフランス語も、ほぼ完全に頭に入っている。だから譜面もあまり見ないで、団員達の口元を見ながら、音楽稽古の大半を発音の修正に当てているが、面白いことに発音が修正されてくると、発声も良くなるし、自然に音楽的になってくる。すでに発声的にはある程度出来上がっている人達だから、足りないところを補うだけで、全体のバランスが取れてくるのだな。
指揮者は、コロナの時に、日本に来てから2度目の緊急事態宣言が出て、外国人指揮者が日本に入国することも、日本から出国することもできなくなって、逆に日本で稼ぎまくった指揮者ガエタノ・デスピノーザだ。つまり、一度入国してから、来日予定の指揮者のキャンセルを受けて、どうせ自分も帰れないし、いくつもの演奏会や公演の指揮を臨時で任せられたのだ。確実な指揮で、僕もとても仲良くなったので、再開するのが楽しみだ。
それから「トゥーランドット」の時に、無理難題を言ったり、舞台機構的に危ないことを要求してきたので、僕と激しく喧嘩しまくった演出家アレックス・オリエとも再会する。あんなに言い合いをしたのにアレックスったら、本番直前に、
「君と一緒に仕事して本当によかった。お陰で良いものができた。ありがとう!」
とハグしてきたんだぜ。こういうノリを日本人は理解できないから、言うべき時に言うべき事を言わないで、陰でコソコソしているんだ。
「カルメン」スタッフ・キャスト
週末は「マエストロ・キャンプ」
週末には、「マエストロ、私をスキーに連れてって」2025キャンプがある。あれから、案内を出したお陰で、新しい参加者も増えた。ええと・・・言っておきますが、これからの参加希望もアリです。ひとりでも多くの方に参加してほしいです。僕の講演も皆さんに新しい気付きを与えると信じていますが、それよりも、どのレベルでもインストラクターが一流なので、その辺のスキー・スクールでは決して得られない上達が約束されますよ!
さあ、迷っておられるあなた!
瞞されたと思って、今からでも募集要項をよく読んで申し込んで下さい!
2025. 2.3