忙しい、秋から冬への演目の準備

三澤洋史 

写真 三澤洋史のプロフィール写真

引き続きスキー・キャンプのご案内
 「マエストロ・私をスキーに連れてって 2026」キャンプのご案内を引き続き行います。昨年頃から、各スキー場において、ゲレンデ近辺のホテル、ペンションの値段が高騰し、スキー客が行きづらくなっていますので、今回は「マエストロ・キャンプ」の参加者に特別に宿泊所を提供しています。ただし1人だけの予約は無理なので、家族ないしはお友達を誘って複数で泊まってください。勿論、ご自分で好きな所に泊まってキャンプのみに参加する方も大歓迎です。

 こちらが提供出来るところは“リバーサイドやまや”です。ゲレンデ直結ではないけれど、勿論歩いてゲレンデまで行けます。2月、3月両方とも、プレキャンプのある6日金曜日及び7日土曜日の晩です。現在4部屋とってあります。プレキャンプのある金曜日の晩はひとりあたり9900円、土曜日の晩は10450円ということです。これは現在では破格の値段です。
 “リバーサイドやまや”の方も、10月1日から宿泊予約を一般受け付けしているので、宿泊を家族やグループで行いたい方は、なるべく早くキャンプの申し込みと共に、宿も一緒に申し込んで下さい。こちらで受け付けます。
 なお、3月のキャンプでは、ペンション“うるる”にも予備でお部屋がとってあります。

 キャンプでは、“リバーサイドやまや”の音楽ホールを使うことが出来るようになったので、そのホールで「スキーと音楽とをどうつなげるか?」の講演会を行うことができるし、実は、その音楽ホールにはピアノもあるので、音楽家の人たちに是非参加していただいて、一緒にミニ・コンサートができるといいな。

 最近では、午後のレッスンが終わると、もう翌朝まで「さようなら!」という感じで、なんか寂しかったでしたが、この際ですから、僕や角皆君などとも、普段できない密なコミュニケーションをとって、楽しいひとときを過ごしましょう。今まで参加した方で、やや遠のいている方も、今回はどうか再び参加してください!

 ということで、複数の参加者は、是非「宿泊付きでお願いします」と書いてください。4部屋先着順なのでお早めに!

申し込みは、募集要項を読んで、そのメールアドレスからお願いします!

マラ5ロス
 最近の僕にしては珍しく、先週いっぱい、マラ5ロスが続いていた。あんなに指揮している最中に「ああ、楽しい!」と思える体験はなかなかできるものではない。スコアはだいたい頭に入っているが、それでも、
「ええっ?このタイミングでこの楽器が入ってきちゃうんだ!」
と思うほど、各楽器のアインザッツが突発的で、行き当たりばったりで、それでいて、ギリギリ綱渡りでバランスを取っているので(あるいはバランスを取りながら演奏しなければいけないともいえる)、モーツァルトやベートーヴェンにおけるような「予定調和」とは真逆!ともいえる状態だから、こっちも遊び感覚でアプローチし、まるでジャズのアドリブ演奏をやっているような気分で指揮し、よりスリリングでエンジョイできたのである。

 ただ、マラ5ロスにいつまでも浸っているわけにもいられない。秋の様々なイベントが控えているのだ。早速、翌日の14日火曜日には東響コーラスの練習に行って第九の練習をしたし、次の15日水曜日には六本木男声合唱団の練習に行った。でも、それ以外の時には、微笑みながらボーッとしていたことが多かったな。
 ちょうど良いタイミングで、マーラー第6番交響曲のユニバーサル版のスコアが家に届いた。DOVER版は5番とセットになって家にあるのだが、やはり5番同様、細部で異なっている個所が多いので、スコアは小さいのだが、ユニヴァーサル版で勉強し、本番もそれに準拠して指揮しようと思っている。

六本木男声合唱団バルセロナ公演
 昔、2000年代に、作曲家三枝成彰氏が結成した六本木男声合唱団の練習に通っていて、2007年にはモナコ演奏旅行に行って、モンテカルロ=フィルハーモニー管弦楽団を指揮して、三枝成彰氏のカンタータ「天涯」やレクィエムなどを演奏したが、その後、新国立劇場にずっと通い詰めていたので、全然時間が取れず、縁遠くなっていた。


Monaco家族集合


Monaco街と港


 しかし、今年の4月から僕が新国立劇場桂冠合唱指揮者となって、時間ができたと思ったら、それを待ち構えていたかのように、六本木男声合唱団から指揮依頼が来た。どうやら、指導者の初谷敬史(はつがい たかし)君の口利きだったようだ。しかもまたまた海外公演。今回は11月の終わりにスペインのバルセロナで演奏会がある。

 ということで、久し振りにロクダンの練習に出掛けて行った。もう二十数年以来なので、実は団員の中には、すでに亡くなっている方も何人も(親しかった人だけでも2人)いるし、随分メンバーは入れ替わっているので、最初の2回は練習ではなく、初谷敬史君の練習を見学に行き、その後僕の指導が始まった。先週水曜日で、僕による2回目の練習を終えたところ。
 通常練習時から何人ものプロのエキストラが入っていて、音取りから音楽作りまで一緒に歌うことで団員を導いているので、表向き出来ているように聞こえるが、三枝成彰さんの音楽って、変拍子の曲が多かったり、音が難しかったして、突っつき始めるとみんなの音の妖しさが目立ってきて、なかなか練習がはかどらない。
 でも、こんなにシニアのおじさま(おじーさま?)達が、わざわざ練習に通ってきて真摯に音楽に集中しているのを見ると、毎回感動してしまう。合唱って健康に良いのは明らかだよね。

 僕は、かつて男子校である高崎高校の合唱部に在籍していて、2年生からは学生指揮者でもあったので、男声合唱は自分の原点なのだ。だから、みんなが声を出すだけでも楽しいのは知っているけれど、そもそも男声合唱のバランス感覚や、発声の仕方から(日本語といえども)発音の仕方まで、男声合唱の基礎を徹底的に彼らに教え込んで、もう一段階上での合唱の喜びを知ってもらおうと指導している。すると、彼らも喜んで付いて来てくれて、毎回練習に通うのが楽しみだ。

 先週の水曜日には、練習後、団員に誘われて初めて一緒に呑みに行った。広尾の商店街の餃子屋で大いに呑んでしゃべって、楽しく帰途についた。彼らは、毎週順番でいろんな店を予約するという。今週はフレンチだという。う~ん・・・あんまり毎週行くのも厚かましいなと思いつつ・・・う~ん・・・フレンチか・・・。

ヨハネ受難曲の練習
 週末は浜松に行って「ヨハネ受難曲」の練習。僕は3月30日に自分の率いている東京バロック・スコラーズで「マタイ受難曲」の演奏会をやり、さらに東響コーラスでも5月からジョナサン・ノット指揮、東京交響楽団定期演奏会の「マタイ受難曲」のための練習を始めて、先日9月27日28日に本番を終えたばかり。一方、浜松の「ヨハネ受難曲」の本番は来年の4月18日なので、まだまだバッハの受難曲の練習は続くが、大好きなので一年中やっても飽きない。

 毎回言うようで申し訳ないのであるが、バッハの精緻な対位法的楽曲のレベルの高さは凄い!という他ないけれど、本当に素晴らしいのは、それだけではなく同時に、ドラマの流れに本当に寄り添っていて、どんなオペラよりもドラマチック!救世主の受難が具体的にどのように進行していって、イエスの死に至るのかということが、具体的かつ微細に表現されていて、イエスを救世主として信じていない人にとっても、深く胸を打つであろう。

 特に「ヨハネ受難曲」は、「マタイ」よりも群衆合唱が長く、構成もきちんとしているので、練習しがいがある。昨日は、第1番から始めて、全曲を終わりまで軽く通してから、問題のあるところをピックアップしていこうと思ったけれど、始めて間もない内に、どうしても止めて直したくなり、まあ、なんとか終わりまでは行ったのだが、やり足りないところが出てきてしまって、次回は何カ所かの問題ある曲を集中してやることを約束して練習終了とした。

 だいたい、こだわるところが多すぎるのがいけない・・・というか、どこもかしこもこだわっているので、「ここも直したい、あそこも丁寧にやりたい」と思っている内に時間ばかり過ぎていくのだ。まあ、名曲だから仕方ないですよ。

「ファウストの劫罰」の独創性
 もうすぐ「ファウストの劫罰」の合唱稽古が始まるので、ただ今勉強の真っ最中。かなり昔に一度合唱指揮を担当したことがあるが、自慢ではないがきれいさっぱり忘れていた。だが、準備の勉強を始めたら、勿論初めての時とは違って、すぐに記憶が甦ってきた。印象は昔とは全然違っていて、あらためてベルリオーズという作曲家の特異性と独創性に驚いている。
 誤解を恐れずにはっきり言ってしまうと、音楽そのものも和声進行も、「新鮮!」というのと、「へんてこ!」という両方を感じる。でも、それでいて最後には感動するんだな。

 たとえば代表作である若い頃の幻想交響曲(1830年初演、1803年12月に生まれたベルリオーズ26歳の時)が大成功に終わったのとは対照的に、1845年10月(ベルリオーズ42歳)に完成された「ファウストの劫罰」の初演は、実は失敗に終わって、彼は多額の借金を負ってしまったといわれる。しかしながら、彼を取り巻く友人達の援助によってなんとか立ち直ったとも伝えられている。彼を評価し金銭的にも助けてくれる友人達がいたんだね。
 その後、1847年には、ベルリンでの演奏が成功裏に終わり、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世から赤鷲勲章を授与され、その晩のサンスーシ宮殿の晩餐会にも招待されたというが、この作品が実際に一般的な評価を得るのは、作曲家の死後であるといわれている。

 曲を勉強していてあらためて思ったけれど、このゲーテによる原作「ファウスト」の物語の中には、シューベルトの歌曲で有名な「糸を紡ぐグレートヒェン」やムソルグスキーも作曲した「蚤の歌」なんかが入っているんだね。ベルリオーズの曲で聴くと全く違った印象だね。
 善と悪、崇高なる世界観と欲望の世界の対比、そうかと思うと、兵士や学生達の楽しい男声合唱によって表現される「当時の日常の表現」など、聖濁織り交ぜて描かれる壮大なゲーテの精神的世界にあらためて感銘を覚える。特に終り近くの悪魔達の合唱の楽しさと、それと全く対照的な終幕の天上的世界に感動しない者はいないだろう。

 二期会の演奏会形式の公演は、12月13日土曜日及び14日日曜日、池袋の東京芸術劇場コンサートホールで両日とも14時開演。
 今回、僕は、合唱のみならず、ソリストのアンサンブル稽古も担当する。長女の志保もピアニストとして関わっていて、すでにソリスト達のコレペティ稽古が始まっているようだ。フランス語なので、パリで7年間も勉強していた志保の方がはるかにフランス語に堪能だが、合唱団に対する稽古のノウハウは、また別の要素なので、発音やリエゾンなどの確認と共に、どうやって指導しようかといった戦略も一緒に練っている最中。

NHK「バイロイト音楽祭」コメントの準備
 僕は、指揮者や合唱指揮者としての仕事の他に、講演会などの講師を頼まれることも多い。その中でも、ここのところ毎年頼まれているのが、NHK FM「バイロイト音楽祭」の放送の解説だ。今年は「ジークフリート」「神々の黄昏」「パルジファル」の解説を依頼された。

 リング2本の解説の録音は11月20日木曜日であり、「パルジファル」が23日日曜日だから、まだまだ一ヶ月もあるので、準備は全然あわてなくていいのであるが、その間に「ダフニスとクロエ」合唱練習や「ファウストの劫罰」をはじめとするいろんな仕事も詰まっているので、できる時にできることから始めていかないといけない。

 とりあえず、ネットからドイツ語の批評を集めてプリントアウトし、ファイルにまとめてみた。まだ読んでない。録音を聴かない内に読んで先入観を持ってもいけないから。
 そうこうする内に、NHKから音源が送られてきたので、まだ本気で聴くわけではないが、先日、何気なく「ジークフリート」の冒頭の部分だけちょっと聴きかじってみたが、それだけで、あらためて衝撃を受けた。歌手達のドイツ語の発音が実に明瞭で、ドイツ的表現力に満ちていたのだ。

 僕は実際に1999年から2003年までの5年間、実際にバイロイト音楽祭で働いていて、内部のことをよく知っているけれど、バイロイト音楽祭というのは、通常各都市のオペラ劇場で日常的にオペラに従事している人たちにとっても、特別の場所であった。そこに関しては、現在でも変わっていないようで、嬉しく思っている。
 その一方で、最近では、様々な実験的な演出が幅を利かせていて、知り合い達にも「ガッカリした!」と言いながら帰ってくる人が少なくない。読み替え演出や奇をてらった演出も、もうそろそろ落ち着いてきてもいいんじゃないか?というのが僕の本音でもある。 それぞれの作品の核心に迫った、本道を行く演出を、今こそ現代的なテクノロジーを駆使して鮮やかに描ききって欲しいと望むのは、果たして僕だけであろうか?

 まあ、僕の場合はFMなので、コメントにおいては、特に演出に対しての言及はしなくていいので気が楽ではある。
 ただし、昨年もそうだったのだが、対談の録音も12月中頃に予定されている。ここにおいては、おそらく演出に関しても話題となるだろうから、映像も見ないといけないんだよな。困ったなあ・・・。

2025. 10.20



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