僕にとって2025年とは

 

三澤洋史 

写真 三澤洋史のプロフィール写真

マエストロ・キャンプ早割終了間近
 常連客を中心に、すでにキャンプの参加者がそれなりに集まっていますが、3月のキャンプ参加の方が多くて、2月が少ないため、2月のキャンプの申し込み者は、特に大歓迎です!
 あのねえ、ぶっちゃけて言うと、3月になると、これまでにも何度かあったけれど、雨の日に当たる可能性があります。2月は、そんな時は必ず雪になるので、2月の方がいいですよ!まあ、2月でも3月でも晴天に越したことはないけれど。

 それよりも、年末をもって早割引が終了するので、どうか申し込みはお早めに!また、せっかく宿泊施設「リバーサイドやまや」を斡旋していますが、みなさん1人参加で、現在のところ、やまやは三澤家のみの参加です。年末までに、やまやに返さなければ、向こうも営業にならないので、グループ参加の方がいましたら、お早めにお願いします。
 今回は、せっかくピアノのあるホールがあるのだから、講演会もそこでやるのですが、その他に、仲良し組で音楽家ないしは音楽愛好家がキャンプに参加し、僕がピアノ弾いてもいいから、そのホールで、夕飯前とかにミニ・コンサートなんかができればいいのに・・・などと、こちらは勝手に思ってしまいます。

どうか、みなさん楽しいスキー・キャンプに参加して下さいね!
申し込み、待ってま~す!

僕にとって2025年とは
母の死と家の解体

 今年もだんだん残り少なくなってきた。いろいろ振り返ると感慨深いものがある。まず僕の個人的なことを言えば、4月7日の早朝、母親が亡くなった。朝、母が入居している藤岡市の介護付き老人施設から電話が来て、職員が6時過ぎに、いつものように母親の部屋を訪ねたら、すでに亡くなっていたとのこと。だから詳しい死亡時刻は分からない。満97歳であった。
 母が88歳の誕生日を迎えた時(誕生日が10月29日だからその頃)、親族が集まって米寿(88歳)のお祝いをした。その時、誰かが、うっかり、
「こういうのお祝いすると、よく、具合悪くなったりするんだよね・・・」
と、ポロッと言った。
 その時は誰も気にもとめていなかったが、まさにその年の12月に、母は脳出血を起こして緊急手術及び入院し、それから現在の介護付き老人施設に移り、亡くなるまでそこに入っていた。
 最初は、気持ちだけはしゃきっとしていて、
「こんな所早く出て家に帰りたい!」
と言っていたが、だんだん心身ともに衰えてきて、最後の方は意識も混濁していた。

 僕の上には2人の姉がいて、僕は末っ子の長男。母親にとても可愛がられたし、母のことが大好きだった。母はやや大柄で、大工の父より大きく頼りがいがあった。今となっては、すでに悲しいとか淋しいとかの感情はないが、自分にとってひとつの時代が終わったな、というしみじみした気持ちはある。

 それに関連して、母親がいなくなった今、僕が子どもの頃から長年住み慣れた家には、これから将来に渡って誰も住むことはないということが明らかなので、家は解体し、土地は更地にすることにした。ちなみに、このあたり一帯の土地は、近くのお医者様が大地主で、みんな借地なので、この土地も更地にした後地主に返す手続きをしないといけない。
 解体料金に関しては、いろいろ調べた結果、このまま業者に引き渡した場合と、家の中のものを片付けてからとでは、見積もりがかなり違うので、春から、整理も兼ねて毎週くらい、妻の車で群馬まで通っていた。
「うわあっ、こんなものがあるぞ!」
などと、忘れていた珍しいものをどんどん発見するため、最初の頃は道草ばかり食っていて、なかなかはかどらなかったのだが、秋も深まってくるにつれて、家も庭もかなり空っぽになり、とうとう解体業者が入って、先日ほぼ仕事が終わる直前に群馬に行って、役所で借地を地主に返す手続きなどをした。

 建設業者であった父の作業場や物置もあった大きい家だと思っていたが、建物も何もかも壊して更地になってしまうと、
「あれっ、こんなもん?」
と思うほど、ただの空き地だね。もっと、悲しくなると思ったのに・・・なんにも感じない・・・って、ゆーか、何にも感じない自分が悲しい。


かつて三澤家だった空き地

新国立劇場を離れて
 もうひとつの大きな変化としては、二十数年間、専属合唱指揮者として関わってきた新国立劇場を、3月いっぱいで基本的に離れてフリーとなったこと。僕も3月で70歳になったからね。
 とはいえ、同年代の友人達を見ていると、サラリーマンをしていた人たちは、充分な退職金や年金をもらって悠々自適に暮らしている。趣味の世界にどっぷり漬かっている人が多いし、中には、世界一周旅行の船旅から帰って来てお土産をくれた人もいる。一方、こちらは、わずかひと月6万円の国民年金などではどうにもにもならないから、まだまだ働き続けなければならない。

 まあ、働くのはいいんだよ。だって「働く」といっても、大好きな音楽に携わるのだからね。それより、これまでは、新国立劇場の仕事が年間で何本と基本的に決まっていて、それで基本的な生活ができたため、他の仕事が来ても、スケジュールが合わなければ何の迷いもなく断ることができた。
 ところがその基本線がなくなって、自分でひとつひとつ仕事を取るって、予想していたよりも大変だった。何が大変かというと、仕事の依頼って、自分に都合の良いタイミングではやって来ないのだ。当たり前だよね。

 たとえば、新国立劇場から放り出された4月から夏くらいまでは、東響コーラスの「マタイ受難曲」の練習がポツポツ入り、いくつかの講演会をこなしていた他は、かなり暇だった。それから9月中旬の二期会「さまよえるオランダ人」公演のための合唱稽古が7月終わりから始まり、同時に、名古屋のMFオーケストラのマーラー第五番やモーツァルト200合唱団、東響コーラスの「マタイ受難曲」の練習や本番が入ってきて、それなりに急がしくなってきて、さらに10月後半になったら、シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団の「ダフニスとクロエ」の合唱指揮、東響コーラスの第九の練習、さらに、マキシム・パスカル指揮のベルリオーズ作曲「ファウストの劫罰」の合唱指揮とソリスト・アンサンブルの担当・・・そこに、六本木男声合唱団による練習と、11月終わりの一週間に渡るバルセロナ演奏旅行が割り込んできて、息つく暇もないくらいだった。でも文句は言えない。自分でどんどん空いてるところに入れまくったのだから。
 そこに重なるように、NHK・FMのバイロイト音楽祭のトーク収録のための原稿作りが重なり合い、今から振り返っても、風邪でも引いてしまったら「全部アウト!」といった切羽詰まった状況の中で、「よくぞご無事で」乗り切ったな!と自分で自分を褒めてやりたい。
 って、ゆーか、もうちょっとよく考えて仕事を取った方がいいよね。マネージャーを雇うという話もあるけれど・・・う~~ん・・・ま、だんだん考えます。

 年が明けてからは、再び新国立劇場に戻って、「こうもり」と「リゴレット」の合唱指揮をします。先日「こうもり」の合唱練習が一度だけあって、久し振りに劇場に行ったけれど、いやあ、合唱団は新人もいるけれど、二十数年に渡って指導してきた団体だし、演目も再演なので、僕が何をやりたいかもみんな知っているし、注意するとその真意も理解しているので、実にやりやすかった。
 ただね、こうも思った。
「この団体を使って最高レベルに仕上げるのも、これまでの僕の義務だったし、今回もそれが求められているので、居心地が良いからって甘えてはいけない。同時に、僕自身、もっとたくましくなるためには、いろんな所で、時にはもっと制約された条件の中でも、プロとして変わらぬレベルを求められ、それに答え続ける事も必要なのかも知れない」

 何かに甘んじることは、僕には許されていないのだ。新国立劇場の中にあっても外にあっても・・・。

バイロイト音楽祭2025の放送
 NHK・FMの「バイロイト音楽祭2025」放送スケジュールは以下の通り

12月22日(月)午後0:30~5:00 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
12月23日(火)午後0:30~5:00 舞台神聖祭典劇「パルシファル」(三澤)
12月24日(水)午後0:30~4:00 楽劇「ラインの黄金」
12月25日(木)午後0:30~5:00 楽劇「ワルキューレ」
12月26日(金)午後0:30~5:15 楽劇「ジークフリート」(三澤)
12月27日(土)午後0:30~5:45 楽劇「神々のたそがれ」(三澤)
12月28日(日)午後0:30~5:15 歌劇「ローエングリン」(座談会) 

 この内、僕がトークを担当するのは、上に太字で示したとおり、12月23日の「パルシファル」、12月26日の「ジークフリート」、そして12月27日の「神々のたそがれ」の3演目だが、その他に、最終日28日の「ローエングリン」の間に、他の演目でトークを担当した広瀬大介氏と室田尚子さんの3人での座談会が放送される。

 皆さん、だからといってね、この放送時間中に他の用事を放っておいて、ラジオの前に正座して聴く必要はないんだよ。毎回、放送終了後から1週間、「聴き逃し配信」というのがネット上で行われるため、むしろそれを自分の時間に合わせてお聴きすることをお薦めする。
 「聴き逃し配信」では、生放送と違って、すでに録音された全体のファイルから、自分が聴きたい所にだけカーソルを合わせて何度でも聴けるし、そこだけ録音もできるので、たとえば僕のトークを聴いてから、該当する演奏個所に飛んで、
「なるほど・・・」
と聴いて確かめることもできるんです。ね、便利でしょう!

 特に28日の「ローエングリン」の日の座談会は、興味深いし楽しいと思う。録音の日に3人で早めに集まって、
「さて、何話そうっか?」
って、打ち合わせし始めた。
 プロデューサー達の間では、バイロイト音楽祭の将来を案じる「バイロイトのたそがれ」のようなテーマをなんとなく決めていたようなのだけれど、我々3人が打ち合わせしている内に、
「まあ、そんなもの、特にこだわんなくてもいんじゃね?」
という雰囲気になって、自由に話していたら、どんどん楽しくなって、
「これ、もう、そのまんま録ってもいんじゃね?」
という雰囲気になった。

 で、録音し始めたんだが、実は何を話したんだか全く覚えていない。ぼんやりとした記憶の中では、3人がそれぞれ思ったことを勝手にしゃべっていたにしては、予想していたほど脱線もせずに、最後は、こういう事に一番慣れている室田尚子さんが、上手にまとめてくれたので、有意義なものになったんではないかな?っていう感想だ。

何より、僕自身、一番聴いてみたい!

良いお年を!
さて、来週の「今日この頃」はお休みします。今日の記事が、この一年を振り返るような内容になったことと、来週12月29日は、ジョナサン・ノット指揮、東京交響楽団及び東響コーラス第九交響曲の本番で、次の日からは、白馬にスキーに行ってそのまま年を越すので、次の更新は1月5日になります。

みなさんにとって来年が素晴らしい年でありますようにお祈りしています。
それでは、良いお年を!

2025. 12.22



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