卑劣なアカウント乗っ取り
僕自身は、InstagramやFacebookはやっていないが、妻が最近「アカウント乗っ取り」の被害を受けて大変な目に遭った。それが彼女の意に反してどんどん拡散され、このページを読んでくれている皆さんにもご迷惑をおかけしている可能性があり、もし該当する方がいらっしゃったとしたら、妻に代わって深くお詫び申し上げます。
数日前、彼女がInstagramでフォローしてくれている人からメッセージが届いた。その方は、以前僕が真生会館で定期的に講演をしていた時のお客様のひとりであったが、そこにはこんな事が書かれてあった。
「アンバサダーに立候補しました。10人の投票が必要で、あと2人残っています。投票をお願いします。投票サイトをショートメールに送りますので、電話番号を教えてください」
そこで彼女は、自分の助けで役に立つならと思って、電話番号を教えてしまった。
その後、全然別のある方から、Messengerに、妻に届いたメッセージと同じものが表示され、さらにその方から、
「そのやり方が分かりません」
というメッセージが付け加えられていた。
その時点で、彼女はハッとした。
「あたしが何もしないのに拡散している・・・ということは、あたしのアカウントを誰かが乗っ取って、そのアドレス帳から勝手に沢山の人達に同じメッセージが送られているのかも知れない!」
それからたちまち20人くらいから同じようなメッセージが雪崩のように来たという。彼女は、それぞれのメッセージに、
「これは乗っ取られたので無視して下さい」
と返信し、それから彼女自身、パスワードを変えることをはじめとして、怒濤のような時間が始まった。
妻は結果的に、携帯の電話番号を新しく変え、メールアドレスも変えることを余儀なくされた。電話番号を変えるのは特に面倒で、simを書き換えるためDocomo Shopに行かなければならない。
それが済むと、今度はただちに親しい人たちに知らせなければならず、ほとんど丸一日を、携帯電話関係に費やすことになった。
僕は、このホームページで、皆さんが同じような目に遭ってしまわないように警告する意味でこの記事を書いています。似たようなメッセージが届いたら注意し、決して触れないでただちに削除して下さい。さもないと、自分には何の悪意もないのに、結果として、自分が原因で大勢の人に迷惑を掛けてしまうことになります。
それにしても、その事に直面して、僕は怒りを通り越してとても悲しい気持ちでいる。
「どうして・・・?何が楽しくてこんな事をしているのだろう?これをするためにはパソコンの知識も必要だし、頭の悪い人にはできないけれど、その知能をこんな事に使って優越感でも味わっているというのだろうか?」
悪事を行って大金をせしめる、というのも悪いけれど、まだ分かり易い。分からないのは、他人が迷惑するためだけのために、わざわざこれだけの労力を払うことの無意味さだ。普通の人が普通の日常生活を送っていることが妬ましいのだろうか?自分が仕掛けておいて、
「今頃自分の知らない所でどんどん拡散しているんだろうなあ・・・みんな困っているだろうなあ・・・」
と想像することが“喜び”だと思っているのだろうか?
僕が一番悲しく思っている事は、本当の“歓喜”というものを知らない人が世の中にいることです。
理屈抜きで楽しい「こうもり」
昨年の3月までをひと区切りとして、約24年間に渡る専属の新国立劇場合唱団指揮者の立場を退き、桂冠合唱指揮者という称号をいただいたが、それから久し振りにヨハン・シュトラウス作曲、喜歌劇「こうもり」の合唱指揮者として新国立劇場に戻り、リハーサル室での音楽稽古及び立ち稽古を経て、オペラ劇場にて舞台稽古を行っている。
昨日までピアノ付き稽古だったが、今日からオーケストラが入り、明日はもう実質ゲネプロ(通し稽古の後、返す可能性があるため、あえてゲネプロとは呼ばず、オケ付き舞台稽古)となる。
キャラクター・テノールとして一世を風靡したハインツ・ツェドニク演出による「こうもり」は、かつてトーマス・ノヴォラツスキーが芸術監督だった時代に制作された新国立劇場の人気演目である。初演はなんと2006年6月にさかのぼるので、もう20年にもなり、その間に数え切れないほど上演されている。
変な「読み替え」や、いたずらに奇をてらったところはなく、作品そのものに内在するおかしさや楽しさに満ちあふれていて、ドッと爆笑を取る個所があるかと思うと、クスクスと湧き起こる忍び笑いを誘う個所も頻繁にあって、このプロダクションを知り尽くしている僕でさえ、
「あはははは!」
と初めてのお客のように笑ってしまう。
合唱団の中には今回新人が多いし、通常のシリアスなオペラとは違って、こなさなければならない演技や振り付けが沢山あるので、立ち稽古になる時には、
「どうかな?新人達、付いていけるかな?」
とも思ったが、その心配は全くご無用であった。若い人たちは体が軽く、経験者に対して『見よう見真似』で瞬く間に溶け込んでいくし、経験者もごくごく自然に導いてくれて、良い感じに仕上がってきた。
今回の公演では、オルロフスキー公爵を藤木大地君が演じている。彼は、僕が東京芸術大学の「1年生から3年生までの声楽科合唱の授業」を担当していた時に、3年生のインスペクターとして毎回授業後に生徒の出席簿を教官室に持ってきてくれたので、その頃から、他の生徒達より特に親しかった。
当時は勿論普通のテノールだったが、その後カウンター・テナーに変わり、今回あらためて聴いてみたら、男性の裏声などというレベルではなく、本当に素晴らしい声と表現を披露している。