「マエストロ、私をスキーに連れてって2023」キャンプ募集要項


白馬五竜フリースタイル・アカデミーF-style School主催の特別講座「マエストロ、私をスキーに連れてって2023」キャンプを以下のように行います。

このキャンプは、指揮者である三澤洋史(みさわ ひろふみ)と、その親友でプロ・スキーヤーの角皆優人(つのかい まさひと)による、音楽家、音楽愛好家を対象とする特別なキャンプです。


角皆優人(左) 三澤洋史(右)

スキー・レッスンの他にミーティングや二人による講演会があるのが特徴です。
申し込みは、このCafé MDRを通して行います。

1 場所:エイブル白馬五竜スキー場
〒399-9211
長野県北安曇郡白馬村神城22184-10

受付:とおみゲレンデ・スキーセンター「エスカルプラザ」2F 
階段を上がって右に行き、突き当たり手前の左側のFスタイル・カウンター
主催:白馬五竜フリースタイル・アカデミー F-style School

2 日程:
Aキャンプ「休日をフルに使ってガッツリいこうぜキャンプ!」

2023年1月7日土曜日、8日日曜日、9日月曜日(祝日)
内容:
1月7日土曜日

受付:13:30-13:50
第1レッスン:14:00-15-30 「基礎を徹底して確認」(初心者はプレキャンプ)
1月8日日曜日
第2レッスン:10:00-11:30
昼食
第3レッスン:13:00-14:30
ビデオ・ミーティング:14:45-15:30
講演会(参加者必須):19:30  場所:エスカルプラザ内
懇親会?
1月9日月曜日(祝日)
第4レッスン:10:00-11:30
昼食
第5レッスン:13:00-14:30 「五竜を知ろう」(レッスンで習ったことを最終確認しながらの五竜スキー場ツアー)
解散

Bキャンプ「良質の雪の中でじっくりとレベルアップ・キャンプ!」
2023年2月25日土曜日、26日日曜日
内容:
2月25日土曜日

受付:9:30-9:50
第1レッスン:10:00-11:30
昼食
第2レッスン:13:00-14:30
ビデオ・ミーティング14:45-15:30
講演会(参加者必須)19:30 場所:ペンション・カーサビアンカB1
懇親会?
2月26日日曜日
第3レッスン:10:00-11:30
昼食
第4レッスン:13:00-14:30
解散

注:プレ・キャンプ
Bキャンプに限り、プレ・キャンプあり。
Bキャンプに備えて、前日に基礎練習でウォーミング・アップしたい方。全くの初心者や初級者、あるいはしばらくスキーから離れていた方には特にお薦めです。
全てのレベルで参加可。
受付:2月24日金曜日13:30-13:50
プレ・キャンプ・レッスン:14:00-15:30

3 レベルとクラス分けについて:
このキャンプは、全てのレベルの方に対応します。
初心者及び初級に関しては、申込時に自己申告して、そのまま御希望のクラスに入っていただきます。
長年スキーから離れていた方には、あえて初級クラスに入ることをお薦めします。慣れてきたら、本人の希望及び講師の判断と合わせて、途中から本来のレベルに戻ることもできます。

中級者以上も申込時に自己申告していただきますが、第1レッスンのはじめに、各自の滑りを見て講師が判断し、相応しいクラスに入っていただきます。こちらも上達の度合いによって、レッスンの途中からクラスを移ることは大いにあります。

レベルの自己判断に関しては、後半の「キャンプの目的と参加条件」の「レベルの項」を参考にしてください。

4 キャンプ申し込みと料金
申し込みは、基本的にこのCafe MDRを通して行わせていただきます。
料金は、キャンプ参加のためのもので、白馬までの交通費、宿泊代、スキー用品のレンタル代、昼食やキャンプ途中のミーティング時の飲食代などは、各自でご負担願います。

料金:
Aキャンプ
\35.000

1月7日、8日、9日の3日分。全ての行程に参加した場合の料金。これがAキャンプでの基本となります。
ただし最初の第1レッスンと最後の第5レッスンのみ、都合で参加出来ない方は、特別に\30.000といたします。

年が明けてすぐのキャンプで、当日まであまり日数がないので、残念ながら「早割」はありません。

Bキャンプ
\30.000

2月25日、26日の2日分。全ての行程に参加することが基本。
早割:
2022年12月31日までに申し込まれた方は、1割引の\27.000で申し込みが出来ます。

プレ・キャンプ
2月24日金曜日
Bキャンプは、プレキャンプを行います。
受付:2月24日金曜日13:30-13:50
プレ・キャンプ・レッスン:14:00-15:30
初心者大歓迎。スキー板の履き方から教えます。
すべてのレベルで受講が可能。次の日から始まるBキャンプに備えて、それぞれのレベルで基礎に立ち還った丁寧なレッスンが受けられます。
料金:\5.000(キャンプ料金とは別です)

キャンプ料金の払い込み方法
1)それぞれのキャンプ初日の受付の時間に、白馬五竜フリースタイル・アカデミー・カウンターにおいて現金で払い込む。
2)事前に振り込む
以下のところに振り込んで下さい。申し込み後、キャンプ開始数日前まで、いつでもいいです。

振込先
<ゆうちょ銀行からのお振込の場合>
銀行名:ゆうちょ銀行
記号:11180
番号:19180831
口座名義人:エフスタイルクラブ


<他銀行からのお振込の場合>
銀行名:ゆうちょ銀行
店名:一一八(いちいちはち)
店番:118
普通預金
口座番号:1918083
口座名義人:エフスタイルクラブ


宿泊について:
Aキャンプの場合:

 Aキャンプに関しては、ペンション・カーサビアンカが使えないので、宿泊は各自でお願いします。講演会をエスカルプラザで行うため、なるべく「とおみゲレンデ」に近い方がいいと思います。いくつか推薦する宿を提示しておきます。なお、正月後の連休のため、早めのご予約をお奨めします。

<1部屋2人以上の方におススメ> 
1.ペンション・アルプス白馬
2.ペンション・あるむ
3.ペンション・クック

<1部屋1人をご希望の方におススメ> 
1.ホテル・ステラベラ
2.ペンション・森の風
3.ペンション・ウルル
4.ホテル・アベスト白馬リゾート

「安価でも食事が美味しい」民宿が2つあります。
1.太田旅館
2.北原館

Bキャンプの場合:
 Bキャンプは、講演会も行うペンション・カーサビアンカが、みなさんの基本的宿泊所となります。

ペンション「カーサビアンカ」
料金は前年度のものを参考にしているため、目安にしてください。なお、物価高の折、今回は、光熱費が昨年より500円上げさせていただきます。
1泊2食付き 光熱費税込み
   13,500円(ひとり使用)
   11,340円(2人使用のひとりあたり)


リフト券をサービス価格でお貸しできます(要相談)
講演会及び懇親会会場
   地下の呑み処“おおの”

「カーサビアンカ」に関しては、申し込み時にシングル使用も含めて希望を書いてくれれば、こちらから一括して申し込みます。
逆に、カーサビアンカ以外の宿泊施設を利用する方は、その旨を書いてください。宿の名前は特に知らせなくて結構です。

Bキャンプ開始は、2月26日午前9時半カウンター集合なので、2月25日の前泊をお奨めします。さらにキャンプ終了後、もう一日残りたいという方には後泊の希望も受け容れます。

申し込み:
 申し込み希望者は、下記のEメール・アドレスに、以下の項目について記入して送ってください。

記入する項目:
氏名
年齢及び性別

年齢は50代とかアバウトでもいいです。
職業
住所
電話番号

キャンプ直前やキャンプ中に緊急連絡として使う場合があるので、固定電話だけではなく、携帯電話の番号は必ずお願いします。
連絡に使うEメール・アドレス(申し込んだアドレスと異なった場合)
所属団体

たとえば東京バロック・スコラーズとか愛知祝祭管弦楽団などのような音楽関係の所属団体。
団体に属していない場合は特に記入しなくて結構です。
AキャンプかBキャンプか?
宿泊について

Aキャンプの方は特に記入しなくていいです。
Bキャンプでカーサビアンカ宿泊の場合、同室希望の方がいれば、その旨記入をお願いします。
一人使用希望の場合も、あえて書いてください。
宿泊は2月25日だけをご希望か、前泊の24日及び25日なのか、あるいは後泊の26日もご希望なのか、ご要望に応じた記述をお願いします。
またBキャンプで、カーサビアンカ以外に宿泊希望の方は「宿泊カーサビアンカ以外」とお書きください。

申し込み動機の記述
文章でお願いします。
「ひとりでCafé MDRを読んで」とか「同じ団体に参加者がいて」とか、キャンプに申し込むに至るいきさつなど書いていただけると嬉しいです。
なんでも、ご自分のことをアピールしてください。
文章制限なし。短くても長くてもいいです。

キャンセル:
キャンプ自体のキャンセルは、キャンプ前日までOK
です。キャンセル料は取りませんが、事前に振り込まれた方については、返金手数料など発生するので、全額戻ってこない可能性があります。
宿泊のキャンセルは、キャンセル料が発生しますので、宿泊施設に直接ご相談ください。


「マエストロ、私をスキーに連れてって2023」キャンプ
申し込み用Eメール・アドレス

2023.maestro.takemeskiing@gmail.com

必ず、このメール・アドレスを通して申し込みを行って下さい。




5 「マエストロ、私をスキーに連れてって2022」キャンプの参加条件と目的
参加条件:
キャンプにはどんな人が参加出来るか?

「スキーと音楽との両方に興味がある人」。

向かうべき目的は?
「音楽における様々な運動性を、スキーにおいて具体的に体感し、最終的にそれをつなげて自分の関わっている音楽に生かす」。

条件はそれだけなので、実際にはどなたでも参加可能です。

レベルによるクラス分け自己判断の目安
初心者: 生まれて初めてスキー板を履く方。
目標:  プルーク・ボーゲン(ハの字)で、意のままに停止及び滑走できること。
左右に重心移動をして、ゆるやかなターンを覚えること。

初級: プルーク・ボーゲンでゆっくり滑れる方。
長年スキーから離れていた方は、あえて初級クラスに入り、そこから他のクラスに移ることをお薦めします。
目標:  プルーク・ボーゲンで、停止を含むスピード・コントロールが自由にできること。
左右、及び前後の重心移動をしながらターンができること。
しだいに谷足にしっかり乗ってハの字を小さくしていき、パラレルに近づいていくこと。

中級1: パラレルができる方。
方向転換や停止などが意のままにできる方。
目標:  つま先加重からかかと加重までのターンにおける一連の流れを意識化できること。
外向外傾を習得すること。
ストックワークを覚え、加重、抜重、縦方向の重心移動(クロスオーバー)を、ストックと共にしっかり意識できること。

中級2: パラレルでストックワークができる方。
精度の高いパラレルができる方。
外向外傾が理解できている方。
目標:  安定したロング・ターン、及びショート・ターンが習得できること。
外向傾の体勢で、カーヴィング滑走(キレ)とスライド滑走(ズレ)の意識化ができること。
不整地に入って行っても、外足加重と外向傾で、安定した滑りができること。

上級: 整地で、ロング・ターン、ミドル・ターン、ショート・ターンができること。
カーヴィング滑走及びスライド滑走をはっきり区別ができて滑れること。
不整地及びコブ斜面でのレッスンに対応できる方。
目標:  上級の目標はただ美しく音楽的に滑れることにあります。
どこかの大会に出て上位を目指すとかを目標にはしていませんし、キャンプ終了後、公に通用するような免許や資格を与えることはありません。
それぞれ大小のターンの精度を上げ、それらを混ぜながら美しいフォームで滑れること。
不整地での安定した滑り。
コブ斜面で、いくつかのライン取りができること。


このキャンプの目的:演奏における重力及び遠心力の力学の導入
そもそも、このキャンプを私(三澤洋史)が行おうと思った動機に、「バロック音楽はコブだ」という私のモットーがあります。私が率いている東京バロック・スコラーズで、バッハの音楽における「付点音符やタイで引き伸ばされた音型の音楽的処理」を説明する時、私はいつも、スキーにおける加重と抜重を例に取ります。

西洋音楽史の中でバロック期は、音符のリズム、躍動感、拍感などが最も際立った時代でした。たゆたうようなルネッサンスの静かな教会音楽に、世俗音楽のリズムと名人芸が突然暴力的に入り込んだのがバロック期であり、それ故、音楽史の中でも、もっともバイタリティに満ちた時代を形成しているのです。
バッハは、受難曲のアリアをメヌエットなどの世俗舞曲のリズムを使って書き、協奏曲では、ストリート・ミュージシャンの即興的名人芸が譜面に書かれて残るようになりました。

この「教会音楽から受け継がれた精神性と、世俗音楽のリズムとエネルギーとの合体」が、その後、古典派やロマン派に受け継がれていきました。後期ロマン派になると、音楽は、和声の変化や横の流れを重んじて、よりレガートに傾倒しますが、再び、バルトーク、ストラヴィンスキーなどの反動によって、リズムに内在するエレルギーの噴出が戻って来ます。

クラシック音楽は、内面性ばかりを問うように思われますが、実は、バッハ、ヘンデルなどのバロック音楽だけでなく、モーツァルトやベートーヴェンのアレグロを理解するために、私たちは、曲の中に投映された“重力”や“遠心力”あるいは“放物運動”という物理的運動性を理解する必要があります。
いかに精神的で深遠な音楽であろうとも、精神だけで音楽が創られているわけではないからです。

一方、演奏する側から言えば、音楽は普通の人が考えているよりずっとスポーツに近いと思います。ピアニストやヴァイオリニストなどは、使っている筋肉こそ局部的ですが、その高度な運動性と、個々の動きを無意識の領域に落とし込んだ末の認識力と、精妙な肉体のコントロール能力は、トップ・アスリートのそれと変わりません。
その意味でも、あらゆるスポーツがそうであるように、音楽もそれぞれの領域で体幹と基本的フォームに向き合うことを余儀なくされます。
その体幹やフォームからどのように枝葉を広げて、細部の表現をするための体の状態を作っていくのか、その意識化と無意識化がスムースに行えるかどうかが、最高の音楽家となるための条件となるのです。

そうした観点から考えると、あまたのスポーツの中でも、スキーこそは、音楽とその運動性をつなぎ、音楽家がさまざまな認識に至るための最もふさわしいスポーツであることが分かります。
しかしながら、音楽だけやり、片やスキーだけやっていても、その両者をつなぐことは期待できません。そこで、このキャンプがあるわけです。

クラシック音楽に造詣が深いプロ・スキーヤーの角皆優人と、スキーに魅せられている指揮者、作曲家の三澤洋史のコラボは、両者を繋ぎ、スキー上達と共に、音楽への新しい認識に、みなさんを導きます。

フレージングとターン
たとえば音楽におけるフレージングについて語ってみましょう。フレーズは、作文で言う文章に相当します。全体とつながっているけれど、「ひとまとまり」として独立してもいます。
それが音楽で演奏される時、最も基本的なフレージングの在り方は次の通りです。
フレーズの導入はやや弱く入ります。それから発展して伸びやかに、最後は「フレーズを納める」あるいは「仕上げる」という感覚で、ディミヌエンドして終わりながら、次のフレーズに引き継いでいきます。文章で言うと、そこで「。(まる)」が書かれるわけです。

これに様々なバリエーションが加わります。そのフレーズが、大きなひとつのクライマックスを築いていく途中にある時には、クレッシェンドしたまま次のフレーズに渡します。その場合は、もっと大きな過程の途中ではありますが、それでもひとフレーズはひとフレーズなのです。
またフォルテでフレーズを完結し、次のフレーズでは突然ピアノというものもあります。この場合は、むしろ断絶を表現するものでありますが、互いのフレーズは、その「コントラストを通してつながっている」と言うこともできます。

音楽をミニマムなフレーズの単位で捕らえることと同時に、それが連結し集まってもっと大きな楽曲を形成していく、という両方の視点を持たないと、説得力のある成熟した演奏は望めません。
この音楽的なフレージングの感覚をスキーでも生かしてみたいと思います。フレーズはスキーでいうと、そのままターンに置き換えることができます。ターンを漫然と行っている人は少なくありませんが、ターンにも初動から仕上げまでの道のりがあります。その瞬間瞬間に自分の体に掛かってくる重力と遠心力とのせめぎ合いを感じながら、流れとしては、つま先加重からカカト加重までの一連の縦の流れがあります。そして仕上げまで来ると、谷足のカカトに掛かった加重を解き放ち切り替えをします。

それが意識化できたら、今度はターンの切り替えに注意を向けます。音楽でいうところの、フレーズからフレーズへの引き渡しです。それによって、自分の滑り全体を、ひとつの楽曲のように創り上げるのです。
このようにスキーにおいても、これを音楽のように感じて、様々なターンを仕掛けてみたらどうでしょうか?競技に出るならそんな遊びは無用かも知れませんが、いろいろな意味で「音楽的なスキー」を自分で構築することは可能なのです。

ロングターンで高速感を味わった直後にショートターンを入れるとか、板のサイドカーヴを使ってキュイーンと滑った後、極端な外向傾をしながら大きくズラすとか、可能性は無限にあるのです。
大切なことは、私たちが、スキーというものを通して“表現”というものを学ぶことです。

抜重と外向傾
最近では、カービング・スキーにおいて、「あまり抜重を意識しないように」などと言っている人がいますが、私たちの行うキャンプでは、逆に極端に加重及び抜重を意識してもらいますし、それと連動した精度の高いストック・ワークも習得してもらいます。
つまりターン(フレージング)においての「メリハリ」を意識することです。スキーに乗せられているのではなく、スキーに自分から積極的に乗り、これを操るのです。

それと、これも最近のカービング・ターンの内傾志向とは真逆になりますが、徹底した外向傾を習得することにより、不整地やコブを含むあらゆる条件のゲレンデにおけるスピード・コントロールを習得します。

書道家が大きく太い筆でダイナミックに字を書くと思えば、細い筆でデリケートに描く、その両方を徹底的に学ぶのです。コブでも新雪でも荒れ地でも、それに尽きますから。
スピード・コントロールという言葉は、ブレーキだけの意味ではありません。むしろ、いつでもブレーキをかけられるという安心感のもとに、意のままに加速のテクニックを養えるということも意味します。そうして、結果的にターンを美しく仕上げ、シュプールも美しく「音楽的に」描くのです!

ヴァイオリニストの弓と加重抜重
 バロック音楽においては、20世紀後半に、オリジナル楽器を使用した、いわゆるピリオド奏法がブームとなり、同時に奏法への研究が進んで、それまでのロマン派的演奏が一掃された感があります。
 私もオリジナル楽器のオーケストラを指揮し、ピリオド奏法を研究したことがありますが、勉強すればするほど、その奏法をモダン楽器(スチール弦を貼った現代の楽器)で演奏したら、もっと多彩で楽しい表現の世界が開拓されることに気が付き、今では、東京バロック・スコラーズを中心に、モダン楽器によるバロック音楽の究極的演奏をめざしています。
 たとえば、ヴァイオリンにおいては、ブラームスやマーラーなどでは、弓に一定の圧力がかかり、重厚な演奏を行うことができますが、むしろバロック音楽では、弓に一度圧力をかけて弾き始めた直後、少し圧力を弱めると、奏者は逆に、弦から帰ってくる圧の反動を感じることができます。これを操りながら、ロマン派音楽よりもより弓を走らせると、様々な音楽的運動性を感じ、かつ演奏に行かすことができます。
 そうしたモダン楽器を使ったバロック演奏の感覚は、スキーの世界においては、カーヴィングスキーを履きながらカーヴィングのみに頼るのではなく、以前から伝わる様々なテクニックとミックスしていく感覚と似ています。バロック音楽同様、思いがけない多様な滑走感覚を手にすることができるのです。

美しい音楽を行うためのスキー
「スキーが出来ないと美しい音楽は出来ない」などと極論を言うつもりはありませんが、その反対はあり得ます。すなわち「美しいスキーが出来る人の奏でる音楽は美しい」ということです。
もっと突っ込んで言うならば、「美しいスキーを通して意識化された音楽家の奏でる音楽は、精妙で、確固たる運動性に支えられた説得力のあるものとなる」と言えます。

私は、指揮をしていて、音楽的フレーズの受け渡しの時、心の中でストックを突いています。そして自分の心の中で重心移動をして、次のフレーズに入った瞬間をはっきり意識します。
フレーズが始まって音楽的エネルギーを増大させていく時は、ただ直線的に増大させていくのではなく、むしろラインを弧として捉え、谷回りで自分に掛かってくる重力と遠心力を感じながら、それをスライドで制御する腰や膝や足首をイメージしながら指揮をすると、その微妙なニュアンスが指揮棒の先に現れます。
あるいは思い切って板のエッジを立てて、谷回りをカーヴィングで滑走するイメージで指揮をしたならば、実に爽快なクレッシェンドのラインが指揮棒に現れ、オーケストラや合唱団の増大する音量もエネルギーもきれいに揃います。また、私の右腕の上腕二頭筋に掛かる圧は、そのまま弦楽器の弓にかかる圧に連動しています。

こうしたイメージが昔のように漠然としたものではなく、今の自分には、指揮棒の具体的な扱い方として完全に意識化できているので、奏者は私が今何をやりたいのか、何を自分たちに望んでいるのか、完全に理解できているはずです。もしそれが、単に私の思い込みでなく事実だとすれば、それは、断言しますが、100パーセントスキーのお陰です。

反対に私の側からすると、こんな微少で、ほんのちょっとの力の入れ加減で、オーケストラはここまで反応するのだという因果関係に気付かされました。こうした棒の先や腕でのインターラクティブ(相互関与)なやり取りは、スキーをやる毎に精密化されていきます。それは恐らく私が、無意識の中で常に「スキーの音楽とをつなげよう」と思っていたからに違いありません。

それを私は、このキャンプを通してみなさんに伝えたいのです!

私の気付きを理解できるならば、あなたの音楽は、その瞬間から革命的に変わるでしょう。
さあ、世界的にも類を見ない、音楽とスキーとをつなぐこのキャンプに、ひとりでも多く参加しましょう!

主催者の経歴:
角皆優人(つのかい まさひと)

1955年群馬県高崎市生まれ。県立高崎高校卒業、青山学院大学中退。

高校までは水泳選手として活動し、1972年200m個人メドレー群馬県優勝他。
大学からフリースタイルスキーに取り組み、青山学院大学にフリースタイルスキークラブを創設し、初代部長を務める。

1970年代後半から80年代半ばにかけて、全日本フリースタイルスキー選手権・総合優勝7回、種目別優勝35回(全日本FS協会主催&SAJ主催大会)。国際大会優勝・入賞多数。引退後、全日本スキー連盟フリースタイルスキー部ヘッドコーチを経て、現在は株式会社クロスプロジェクトグループ相談役 & エフ-スタイルスクール代表。
2000年に現役復帰を決意し、2001年アクロ種目全日本選手権第2位。50才より水泳競技でも現役復帰し、 ジャパンマスターズ 50m自由形、50mバタフライ優勝多数。

ノンフィクション「流れ星たちの長野オリンピック」で潮賞受賞。クラシック音楽や文学を愛好し、著書・雑誌執筆原稿・スキービデオ多数。
代表作はフィクション「星と、輝いて」、ノンフィクション「ゴールドメダルへの道」。最新刊は「ポストコロナのベートーヴェン~ベートーヴェンの弦楽四重奏曲から考えるポストコロナ」。
生涯現役を願い、スポーツ指導と作家活動に意欲を燃やしている。
長野県白馬村在住。

三澤洋史(みさわ ひろふみ) 指揮者 合唱指揮者 作曲家
 国立音楽大学声楽科卒業後、指揮に転向。ベルリン芸術大学指揮科を首席で卒業。
1999年から2003年までの5年間、ワーグナー音楽祭として世界的に知られる「バイロイト音楽祭」で、祝祭合唱団指導スタッフの一員として従事。2011年には、文化庁在外研修員として、ミラノ・スカラ座において、合唱指揮者ブルーノ・カゾーニ氏のもとでスカラ座合唱団の音楽作りを研修。
 こうしたバイロイトやミラノでの経験を生かして、2001年より現在まで合唱指揮者を務めている新国立劇場合唱団を世界のトップレベルにまで鍛え上げた。
2017年11月、その業績が評価され、JASRAC音楽文化賞を受賞。合唱団は、2018年度第31回ミュージック・ペンクラブ音楽賞クラシック部門、室内楽・合唱部門受賞。

 2013年8月、名古屋で、ワーグナー作曲「パルジファル」全曲をアマチュア・オーケストラである(現)愛知祝祭管弦楽団によって演奏。その功績によって「名古屋音楽ペンクラブ賞」を受賞。
 愛知祝祭管弦楽団では、2016年から1年ごとに、ワーグナー作曲、楽劇「ニーベルングの指環」全4部作を上演。2019年に完結。その業績は、日本ワーグナー協会をはじめ、各メディアで大きく評価された。
2022年8月、コロナ禍での「トリスタンとイゾルデ」も大成功を収めた。
2023年「ローエングリン」を上演予定。

 総合的舞台芸術をめざして、ミュージカル「おにころ」「愛はてしなく」「ナディーヌ」を作曲。自ら、台本、演出も手がける。その本拠地として、郷里である群馬県高崎市新町において新町歌劇団を30年以上率いている。
 バッハに深く傾倒している。2006年、東京バロック・スコラーズを立ち上げ、「21世紀のバッハ」をめざして多角的な活動を行っている。CDモテット集は、雑誌「レコード芸術」で準特選に選ばれ、話題を呼んだ。

 2019年8月には自作ミサ曲Missa pro Pace(平和のためのミサ)を世界初演。
著書に「オペラ座のお仕事」(早川書房)、「ちょっと お話ししていいですか」(ドン・ボスコ社)がある。その他、講演会を多数のこなす。
現在、新国立劇場合唱団首席指揮者、愛知祝祭管弦楽団音楽監督、東京バロック・スコラーズ音楽監督、京都ヴェルディ協会理事



Cafe MDR HOME

© HIROFUMI MISAWA