楽しい「ホフマン物語」初日間近

 

三澤洋史 

写真 三澤洋史のプロフィール写真

楽しい「ホフマン物語」初日間近
 2020年3月27日金曜日の合唱音楽稽古を最後に、新型コロナ・ウィルス感染拡大によって公演が中止となった「ホフマン物語」が、3年ぶりに復活するので感無量だ。あの時の練習で、
「どうせ、中止になるんだ。後は時間の問題だ」
と思って、なんとなくドヨーンとしていた合唱団員達に向かって、
「みんな・・・マスクして歌ってもいい。声は多少セーブしてもいい。でも、音楽家としてやるべきことはちゃんとやろうぜ!どうせ一生懸命やっても・・・と思うことは絶対許さない!たとえ、キャンセルに追い込まれたとしても、最後の最後まで全力を尽くす。それが僕たちのとるべき態度だ」
と僕は叱責したが、今回は万全の体勢で臨む。あの時のみんなには済まないという気持ちは残っているが、今回のリベンジが成就したら、全てが報われる。

 今日は、午後から最後のオケ付き舞台稽古BO(Bühnen Orchester Probe)。実質的にはゲネプロ(総練習)だが、再演演目は、オケ付き舞台稽古が2日しか無いため、2日目の今日は、場合によっては音楽を止めることも可能なBOと名乗っている。
 とはいえ、舞台機構がオペラ進行に合わせて動いているし、キャスト達も、自分の出番の後、次の出番までどのくらい楽屋に居られるかとか確認しておきたい・・・などで、出来れば止めずに全曲を通したい。特に、フィリップ・アルロー演出のこの舞台では、回り舞台が大活躍するため、一度止めてしまうと戻すのが大変だ。

 昨日のBO一日目では、マエストロのマルコ・レトーニャが、音楽稽古をやってはその幕を通して、という具合に進めていったので、全幕終わった時には午後9時1分前だった。みんなでハラハラしたし、東京交響楽団のマネージャーは、
「9時過ぎたらオケのメンバーは帰しますからね」
と言っていたけれど、僕は進行を見ながら、
「う~~ん・・・ギリギリで入るかもな」
と思っていた。でも、丁寧に稽古してくれたので、合唱団にとっては有り難かった。

 稽古終了した直後、僕はマエストロに向かって、
「マルコ、君は素晴らしい指揮者だね。9時1分前に終わったよ。これなら誰も文句は言えないし、やることはやってくれたね。有り難う!」
と言ったら、喜んでいた。

写真 「ホフマン物語」のチラシ裏面のスタッフ・キャスト
「ホフマン物語」のフライヤー(裏面)

 このプロダクションの初演は、なんと2003年だ。ニクラウス&ミューズには、今をときめくエリナ・ガランチャが名を連ねているが、これは当時の芸術監督であったトーマス・ノヴォラツスキーが、まだほとんど無名でフィーバー直前の彼女を新国立劇場に呼んだのだ。ジュリエッタは佐藤しのぶさんが演じていた。
 2005年の再演時は、クラウス・フロリアン・フォークトが、彼もまだワーグナー歌手としてフィーバーする直前をノヴォラツスキー芸術監督が引き抜いて日本デビューさせている。今から考えると、ノヴォラツスキーの先見の明は凄かったな。
 指揮者のダン・エッティンガーも、イスラエルでたまたま遭って、まだほとんど無名の若いダンに話しかけて、
「お前は自分のことを良い指揮者と思うか?」
と聞いたら、迷わずにまっすぐ彼を見返しながら、
「良い指揮者です」
と答えたので日本に呼んだと言っていた。
 当てずっぽうではないんだよね。僕もなんとなく分かるけれど、そんな瞬間、目が泳いだりしたら絶対分かるからね。オーラを感じる場合もあるし、まあ、勘ですよね。

 演出家のフィリップ・アルローは、初演当時、演出アイデアを突き詰めて考えてこない状態で稽古場に来て、行き当たりばったりに演技を付けて、で、行き詰まると、高笑いで誤魔化していた。なんてテキトーな奴だと思っていたけれど、しかし、今回あらためて舞台で衣装や照明をつけて観ると・・・・いやあ、結果的には実に良く出来ていて面白い。やっぱり才能あるんだな。
 照明家あがりの彼は、色彩感に特別なセンスを持っていて、ポップで飽きの来ない舞台が見られる。その動きのある舞台を助けているのが、上田遙(はるか)さんの振り付けとダンサー達だ。彼らのキリリとした動きが舞台にエネルギーを与えている。一緒に踊らされている我々合唱団も頑張っていますよ。

 プリマドンナが3人もいて別々の物語が進行するこのオペラは、上手くやらないと求心力の維持が難しいが、本当に良く仕上がっている。このバージョンは、芸術監督ノヴォラツスキーが編集した特別バージョンで、当時、合唱指揮者と音楽ヘッドコーチを兼ねていた僕も編集に関わったから、特別な思い入れがある。お陰でめちゃめちゃ忙しかった毎日だったけれど、今でもあの時代が懐かしい。

 初日は3月15日水曜日18:30。それから17日金曜日14:00、19日日曜日14:00、21日月曜日(祝日)14:00と合計4回しかない。楽しいから是非来てください。

報道に圧力か、報道が圧力か?
 恐ろしい世の中になっている。高市早苗経済安全保障担当大臣が総務相時代(2015年3月)に、安倍晋三首相と電話会談で行ったものを記録した行政文書をめぐり、高市さんが「捏造だ」と否定。それを受けて、
「捏造でなかった場合、議員辞職するか?」
と国会審議で問われた時、
「結構ですよ」
と言った、ということで、大騒ぎになっていた。高市氏は、売り言葉に買い言葉でハメらレた感がある。
 しかし、それからの、立憲民主党の小西洋之参院議員とのやり取りは、見ていて本当に馬鹿らしくて、これが大事な国会審議の時間を使って延々とやるに値するものなのかと、実に情けない気持ちになった。

 2015年当時の安倍首相は、放送法の政治的公平性について、従来「放送事業者の番組全体で政治的公平を判断する」としていたものを、「ひとつの番組のみでも極端な場合においては、政治的公平に抵触する」という「解釈の補充」に意欲を示していたといわれる。2015年3月5日、首相官邸の会議では、礒崎陽輔首相補佐官によって、TBS「サンデーモーニング」が政権に批判的だとして「解釈の補充」を主張し、安倍首相も補充に意欲を示したということだ。

 それに対して野党はそもそも、
「国家権力がマスコミの報道の自由を奪う事が可能になったら、プーチン体制のロシアのように、どんなプロパガンダも可能になってしまう」
という論調で責め立てているし、それに加担したということで高市大臣を辞職に追い込もうとしている。
 マスコミも、たとえば朝日新聞は、社説で、
「高市元総務相、国の基盤揺るがす暴言」「放送法の解釈不当な変更、見直しを」
などと述べているという。僕は、その朝日新聞の記事は読んでいない・・・というか、そんなだから朝日新聞を取るのをやめたのだ。

 ちょっとネットで高市早苗の名前で検索してみるだけでも、こんなタイトルが並ぶ。

高市早苗氏に「更迭」浮上!
「私は間違ってない」高市早苗氏、安倍氏の後ろ盾失って進む
高市早苗はカチンときて売られたケンカを買った構図?
高市早苗氏は往生際最悪 放送法解釈の行政文書めぐり“辞めなくて済む理由探し”
さらには、
高市早苗氏「ブチ切れ答弁」の原点“不良伝説”バイクで「ドドドッ」近隣住民があきれたヤンチャ自慢
なんていう写真入りの記事もあり、
「大学に入るまでは不良してたんです。ギンギンのロックバンドもやってたし、バイクにディスコも大好きだった」
という本人のコメントまで丁寧に載せている。

 こうした“印象操作”で、
「ああ、高市さんはダメだねえ」
という風に巧みに追い込む卑怯な手を使うのがマスコミのやり方だ。

 そうでなくとも、2020年暮れのアメリカ大統領選における大規模な選挙不正と、それを“全く報道しなかった”アメリカ王手メディアと、それに従順に従った日本の全てのマスコミの報道姿勢をまざまざと見せられて、それは、ロシアのプロパガンダと(方向は違うが)一体何処が違うのかと思っている。
 さらに言えば、ロシアのような独裁国家は、権力と暴力でメディアに圧力をかけるが、ディープステートの陰謀に加担する資本主義国のメディアは、お金欲しさに自主的に喜んで報道の正義から外れる確信犯だ。彼らは躊躇なく事実をねじ曲げ、隠蔽し、部分的切り取りによる偏向報道をいかに効果的に行うかに頭を使う。
 大衆の鬱憤や、妬みや、欲望をちょっと刺激しつつ彼らの気を引き、自分たちの意図した方向に導いていくことに暗い楽しみを感じているのではないだろうか?

 三浦瑠璃さんへのバッシングなどもそうじゃないか。ちょっと美人で頭が良くて、歯に衣着せずズケズケものを言う彼女を、なんとなく、
「あの女、どうもいけ好かない」
と思っている人にとっては、ご主人の逮捕に、
「ヤッター!ざまあみろ!」
という陰湿な喜びのはけ口となったのではないか。そういう処を刺激することに対してマスコミは天才的な力を発揮するね。
 だから、女性なのにチャラチャラと安倍晋三氏に擦り寄っているような高市さんに対しても、
「ほらほら、ボロが出てきたよ」
的な大衆の感情を刺激しようとした。

 小西議員は、
「捏造と言いますが行政文書ですよ。行政文書の信憑性を疑うのですか?」
と言って、行政文書の絶対性を主張しながら、いろいろ調べさせたが、かえってそれで墓穴を掘ることになってしまった。
 それについては、菅義偉内閣時代に内閣官房参与を務めた高橋洋一さんが、胸がスカッとするようなyoutube動画をふたつ出しているので、どうぞそれをご覧ください。



https://www.youtube.com/watch?v=EWa3ZwoJaEg

小西さん、これからどうするのだろうね?



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